祖母を旅行に連れていくお手伝い要員として、箱根の温泉宿に行ってきました。車いす利用でも安心して行ける宿でした。
私の祖母は高齢により車いすを利用していたのですが、数十年前に、祖父母と私たち家族でロマンスカーに乗って箱根に行ったときの景色を、祖母にもう一度見せてあげたいから、荷物持ちや祖母の介助を手伝ってくれないか、と母から相談を受けていました。
旅行の介助サービスを頼むと、介助員の宿泊料金などに加え、サービス料金がだいたい4~5万円以上と決して安くはない金額がかかってしまうため、そうであれば私を連れて行ったほうが、ということだったようです。
なかなかこういう機会もないですから、私は急きょ1日だけ仕事を休むことにし、家族で箱根ハイランドホテルへ。これは、その際の宿泊記です。
ロマンスカーは車いすスペースを予約できる
ロマンスカーは新宿から箱根まで約1時間半で行けてしまうという優れもの。まずは車を周辺の駐車場に停め、そこからは歩きで、新宿駅の小田急線西口地上改札(1F)にあるチケット窓口へと向かいました。
車椅子のスペースがある車両は限られているので、行きは事前にネットか電話で予約しておいたほうがいいらしく、今回は母が電話で予約をしておいたそうです。
ネットで予約する場合は、小田急電鉄の公式サイトから、ロマンスカーの車いすスペースがある車両と座席を選択して予約します。
ネット予約の場合、e-ロマンスカーというオンライン空席照会で、「座席種別選択」という項目があるので、そこを例えば4号車などにし、「座席をシートマップで選択」というものにチェックを入れることで、この座席選択画面へ行けます。
シートマップの1Aや2Dのように片側にしか席がない場所が車いすスペースです。 車いすスペースのある車両や座席の配置はロマンスカーの種類によって異なるので、小田急電鉄の公式サイトから確認してみてください。
また、ロマンスカーとホテルの宿泊などがセットになったプランもあるので、お得にロマンスカーで箱根を旅したい方は、小田急トラベルの公式サイトをチェックしてみてください。
箱根ハイランドホテルのセットプランはこちら
→【小田急トラベル】ロマンスカーで行く箱根ハイランドホテル宿泊プラン
ちなみに、車いすスペースのある座席はこのようになっていて、車いすは折りたたんで座席の後ろや横に置いておくことができます(画像はEXE30000形)。
さて、行きはGSE(70000形)というロマンスカーで箱根へ向かうことになり、私は列車のホームにある売店でお弁当を買おうと見ていたのですが、まもなく発車のアナウンスが聞こえたために断念。
列車で食べるお弁当という旅の重要な要素は、ロマンスカー内での販売に託されました。
しかし、車内で販売されているお弁当は4種類。
ビールは1本350円からです。
お弁当はホームの売店のほうが品揃えも豊富ですし、ビールなどの飲み物も通常価格なので、時間に余裕を持って、列車ホームの売店で購入したほうがよさそうです。
私は、売店にあった柿の葉寿司を食べられなかったことがいまでも心残りです。
そうこうしてるうちに箱根湯本へ到着。
箱根はレトロな街並みと、透き通った空気がとても心地良いです。
駅を降りてすぐのところにバス乗り場があるので、私たちは「桃源台」行きのバスに乗って「品の木・箱根ハイランドホテル」という停留所を目指しました。
箱根湯本から箱根ハイランドホテルまではバスで大体20~25分ほど。
箱根は山道なので連続するカーブが多いのですが、祖母の車いすはガッチリと固定されていて微動だにしていませんでした。車いすでバスを利用する際は、バスの運転手さんにお願いすれば手伝ってもらえますよ。
小田急箱根ハイランドホテルに到着
バス停を降りると目の前にあるのが箱根ハイランドホテルです。
バス停からは徒歩0分と、山道特有の狭くて歩きづらい道路を歩く必要もありません。車いすの方にとっても、アクセスはとてもしやすい場所にあります。
豊かな自然に囲まれた15,000坪の敷地を持つ箱根ハイランドホテルは、ホテル全体が段差の少ない館内バリアフリー化を推進していて、客室からエントランス、レストラン、大浴場まですべて車いすで移動することができます。
ホテルの敷地内には、芝生のある広大な雑木林の庭園が広がっていて、ゆったりとした時間を過ごすことができるのもグッド。
それではさっそく、館内に入っていきます。
【小田急箱根ハイランドホテル】
箱根ハイランドホテルの館内施設
まずはホテルの案内板から。
エントランスを抜けたところ(ホテルの入り口)が3階となっていて、フロントやレストランがあります。
2階や1階の温泉浴場へ行くには下におりていくのですが、通路はスロープになっているので、エレベーターを使えば階段を上り下りする必要はありません。
エントランスを抜けるとフロント、その反対側にロビー、ラウンジがあります。
ラウンジに置いてあるピアノは不定期で開催されるコンサートで使われるそう。
こちらはラウンジのメニュー。
ノンアルコールカクテルやコーヒーは831円~、生ビールは1188円、グラスワインは1663円(消費税・サービス料込)。
また、スロープになっている通路はこのようになっていて、ここを先に進むとレストランがあります。段差が少ないので膝への負担も少なく、歩きやすいです。
それでは、1つ下におりて2階を見ていきます。
本館2階
2階は宴会場や客室、ライブラリーなどがあります。
こちらにある本はすべてホテルのお客さんから寄付されたものだそうで、そのままライブラリーの中で椅子に座って本を読むこともできますし、庭のベンチやお部屋の中で読むこともできます。読みかけの場合はレンタルすることもできるそうですよ。
そして最後に、大浴場がある1階へ。
本館1階
1階は温泉浴場とアクアラウンジがあります。
入り口はもちろんスロープになっていて、お風呂上がりにソファーに座ってゆっくりしたり、リラックスチェアの上で足を伸ばして横になったりと、ゆったりとした時間を過ごすことができます。
私は気持ちよくてリラックスチェアで少し寝てしまいました。
中央には箱根の水を楽しめるコーナーもあります。
それと自販機は、アクアラウンジの反対側に2台。ビールはアサヒとサッポロの2種類で、1本350円、ロング缶は400円です。
温泉浴場とアメニティ、利用時間など
アクアラウンジを先に進むと温泉浴場となっていて、お風呂は内湯、露天風呂、ジャグジー、サウナの4種類。
ひろびろとした幅のある内湯と解放感のある露天風呂は、大涌谷から引いた良質な天然温泉で、神経痛や関節痛、慢性皮膚病、動脈硬化症に効能がある、肌に良い白濁の温泉です。
気泡が疲れた体をマッサージ、リラックス効果を与えてくれるジャグジーは、ミネラルが豊富に溶け込んだ地下水が使用されていて、しみ込むような肌触り。
サウナは男性用はドライサウナ、女性用は代謝を良くし、肌のキメを整えるミストサウナです。
アメニティはシャンプー、リンス、ボディソープ、綿棒やスキンローションなど、ひととおりそろっています。脱衣所にタオルがたくさん置かれているので、お部屋からタオルを持ち運ぶ必要がないのも嬉しいところ。
露天風呂も眺めが良く、とても気持ちがいいお風呂です。
(利用時間)AM6:00~AM12:00、PM15:00~PM24:00
森のレジデンス・温泉露天風呂付きツイン
これで館内はひととおり見終わりましたので、いよいよ次は客室です。今回は「森のレジデンス・温泉露天風呂付きツイン」という、広さ50㎡とひろびろとした間取りのツインルームに、森に囲まれながら天然温泉を満喫できる、露天風呂がテラスに設けられたお部屋に泊まることになりました。
通常のツインルームはバスとトイレが一緒になっているのに対し、「温泉露天風呂付きツイン」はシャワールームとトイレが別になっているため、それぞれ広く使うことができるのも特徴の1つとなっています。
母が祖母のことを考え、トイレが広いことと、お部屋の中でもお風呂に入れることを重要視し、この客室を選んだそうです。
森のレジデンスは、庭園をはさんで本館の反対側にある別館で、通路もゆとりのある幅がとられています。
そして、お部屋に入るとまず目に飛び込んでくるのは、抜群の解放感!
室内の広さもさることながら、天井も高く、最高部は3.5mにもなるそうです。今回は3人で泊まるので、エキストラベッドが1つ追加されています。
ゆっくりと食事をすることもできる、エレガントな円形テーブルとソファはすべて特注品。フカフカのじゅうたんの上でくつろぎのひと時を過ごすことができます。
トイレも広くスペースがとられていて、両サイドには体を支えられるよう、手すりがついています。
洗面台もスタイリッシュで広い!
蛇口をひねると箱根のおいしいお水が出てきます。
洗面所を奥に進むとシャワールーム。
シャワールームには柔らかなお湯が癒やしの効果をもたらす、レインシャワーが備え付けられています。
シャワールームにも前後に手すりが設置してありますよ。
そして、さらに奥に進むと姿を現すのが、温泉露天風呂です。
もちろん露天風呂にもご覧のとおり手すりがついています。つかまれるところが要所にあるのは安心できますね。
温泉露天風呂から望む、身近に迫るような周囲の木々は、まるでプライベートガーデンのよう。森に囲まれて浸かる温泉は、仙石原の自然を独り占めしたようなぜいたくな気分を味わわせてくれます。
露天風呂の反対側にはテラス席があり、温泉から出たあとに夜風を感じながら、ここで涼むことも可能。
夜になると目の前の木々もライトアップされるので、昼とはまったく違う表情を見せてくれます。
また、客室のメインスペースからトイレ、洗面室への移動や、
シャワールーム、露天風呂のあるテラスまでの通路も、段差のないバリアフリーデザインになっているので、スムーズに移動することができます。
アメニティ、客室備品など
続いて充実のアメニティや備品についてですが、温泉露天風呂付きツインでは、全客室にロクシタンのアメニティ(シャンプー、コンディショナー、シャワージェル)が用意されています。
洗面室には歯ブラシやシャワーキャップ、レディスセット(綿棒、コットン、ヘアーゴム)などがひととおり。バスローブも洗面室に用意されていますよ。
クレンジング洗顔や乳液、化粧水は、POLAのカラハリというシリーズ。
こちらは館内着とルームウェアです。
上段の青いほうは館内着でロビーや大浴場、庭園の散策に利用することができます。白と茶のストライプのほうはルームウェアでお部屋のみでの利用となっています。
どちらも着心地はとてもいいので、わざわざお家から寝間着などを持ってくる必要はありません。館内着で大浴場へ繰り出し、ルームウェアを着て就寝しよう!
また、備え付けの冷蔵庫の飲み物は別料金となっていて、チューハイ、お水、ビール、フランス産のスパークリングワインが入っています。
飲み物の料金表は棚の中に。
そして、自由に使用することができるグラスはワイングラスの名門、オーストリアのRIEDEL製! グラスの形状による味や香りの変化を楽しめます。
こちらはワークスペースです。
手元を照らすテーブルライトが備え付けられているので、同行されている方が寝静まったあとに、ひとり物思いや読書にふけるのも、またいいですね。
箱根ハイランドホテルの夕食と朝食
それでは最後に、一日を締めくくる夕食と、翌日の始まりとなる朝食についてです。
箱根ハイランドホテルの夕食は、フランス料理の伝統技法をベースに、和の食材や調理方法を取り入れた「フレンチジャポネ」という料理のコースとなっています。
口当たりは軽く、やさしい味わいは日本人の味覚と合い、国内でもなかなかお目にかかれないという薪火のかまど「ガーデンブロッシュ」でメインディッシュを焼き上げます。
もちろんレストランも車いすのまま入ることができますよ。
夕食は本館3階のレストラン「ラ・フォーレ」でいただきます。
夕食のメニューはテーブルに置いてあり、食後はコーヒーかエスプレッソ、紅茶のなかから選ぶことができます。
ドリンクは別料金で、ソフトドリンクは831円から。
お酒はたしか、小瓶のビールが900円前後、グラスワインは1400円前後だったと思います。ボトルワインは豊富な種類が取りそろえられていました。(かっこ内の金額が総額)。
前菜の「さっと火を通したかんぱちとそのグリエ ロングペッパーの香り」。
途中でサーブされるパンは3種類あり、おかわりは無料です。焼きたてのパンでおいしいので、何個でもいけてしまいそうです。
メインディッシュは「本日の魚介料理」か「牛ハラミの薪火焼き マスタードソース」から選ぶことができます。
私は後者を選びましたが、薪火のかまどで焼き上げられたお肉はふっくらと、そしてジューシーな味わいでした。
「パティシエより本日のスイーツ」はカボチャのムースケーキ。
夕食をいただいたあとでも温泉に入ったり、館内を動きまわれるようなちょうどいい分量で、大満足の夕食でした。
朝食
朝食はフレンチジャポネ、アメリカンブレックファースト、和朝食から選ぶことができます。「温泉露天風呂付きツイン」の客室に限り、朝食をお部屋でもいただくことができるのですが、ルームサービスを利用する場合はアメリカンブレックファーストのみとなります。
私たちは、アメリカンブレックファーストをレストランでいただきました。
メニューはオリジナルフルーツジュース、スクランブルエッグ、味噌漬けベーコンまたはポークソーセージ、パン・クロワッサン、フルーツコンポート、食後のコーヒーまたは紅茶です。
箱根の冷えたお水で体が目覚めます。和朝食も美味しそうでした。
ホテルに泊まった感想
行きは時間がギリギリになってしまったせいで、祖母も移動で疲れてしまったのか、やや不機嫌なときもあったのですが、ホテルについてからは周辺の景色の美しさに感動していたり、レストランでウェイターの料理の説明を熱心に聞いていたり、ホテルの快適さに終始ご満悦の様子で、帰りのバスや列車でも上機嫌でした。
私も東京の喧噪や、ふだんから日々のことに追われてしまい、時間があるのであればなにかしなければ、と心が休まる時間をあまり取ることができていなかったのですが、そういったことを忘れ、ゆったりとした落ち着いた時間を過ごすことができました。
祖母は、ロマンスカーで箱根に行ったときの記憶を取り戻せたのかはわかりませんが、帰りの車内で外を見ながら微笑みを浮かべていたのは、もしかすると、自分の娘や、まだ小さい孫たちと箱根へ来た数十年前の景色と、今回の旅が重なっていたからなのかもしれません。
祖母を笑顔にしてくれた箱根ハイランドホテルに感謝です。
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