バーテンダーのお仕事(その2)

逃げ場のないカウンターの中で、容赦なく浴びせられる罵声。
私のメンタルは悲痛な叫びをあげていました。

こんにちは、現役バーテンダーの湊です。
復帰を果たし再びバーで働くことになった私は今度こそはと意気込みます。
しかし待ち受けていたものは、今後バーテンダーとして生きていくためにはおそらく避けては通ることのできない数々の厳しい試練。
早くも私はその洗礼を受けることになります。

裏切りのバー

働き始めて間もない私に待ち受けていたものは、まずは新人いびりでした。
先輩バーテンダーがお客さんに、新人が入ったので軽く揉んでやってくださいと頼んでいたようで、お客さんから敢えて知らないことや、難しいことを突っ込まれたり、できないもの(例えばまだ許可がでていないシェーカーなどの調理器具を使用するもの)を作れとわざと言われたりと、意地悪な質問や注文をされます。
そのようなことがある度に私は、勉強不足で申し訳ありませんと謝る事しかできません。
従業員を成長させるための教育の一環ならいいのですが、どちらかというと先輩やお客さんは面白がってやっているようでした(笑)

そんな事が続き、私と同じく未経験で入った同期が2人いたのですが、2人とも辞めてしまいます。
先輩バーテンダーは元々1人が辞めるということは決まっていたので、残されたのは私ともう一人の先輩の2人だけになってしまいました。

酒を作れないバーテンダー

お店は定休日が1日あり、週6日オープンしていました。
先輩バーテンダーが1人辞めた後、人手不足から週1日は私が1人でカウンターに立つことになります。この時はまだ半人前どころか素人に毛が生えた程度でしたので、私は不安でしかありませんでした。何せ出来ないことが多すぎるのです。
シェーカー(調理器具)の使用は許可されていませんでしたし、作っていいと許可されていたものも限定されていました。
カクテルを飲みに、美味しいお酒を飲みに。人それぞれの目的や、期待があってバーという場所の扉を開くわけですが、そこにいるバーテンダーは何もできない、何も知らない。
そんな状態で店を開ければどうなるか、それは想像に難くないことでした。

逃げ場のないカウンター

失意、失望、落胆、幻滅──。
期待を裏切られたお客さんの怒りはどこに向かうのか、それはもちろんカウンターの中にいるバーテンダー、私へ向けられます。

「あんたさ、何で何も知らないくせにそこに立ってるわけ?」
「君さ、お客さんに対して申し訳ないと思わないの?」
「お前もうバーテンダーやめろよ、今すぐに!」

容赦なく浴びせられる罵声に、私は謝る事しかできません。
もちろん日々の練習は店の開店前や、閉店後、家の中でも毎日毎日、行っていましたが、そう簡単に技術は修得できるものではなく、先輩や、オーナーの許可を得るにはまだまだ時間がかかりそうでした。
そんな状況の中、さらに私を追い詰める悲報が。

「ミナトくん、悪いんだけどオレ今月で辞めることにしたから。あと頑張って」

先輩バーテンダーの突然の退職。
私はまた一人になってしまうのでした。

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