バーテンダーのお仕事(その3)

いっその事ここから飛び降りれば楽になるのだろうか。
虚ろな瞳で高架下を見下ろしながら、毎日のように同じ道を通り過ぎる。
それが通勤中の私の日課となっていました。

こんにちは、現役バーテンダーの湊です。
またしても再発してしまった精神疾患。再び窮地に立たされることになった私に突き付けられた現実は甘いものではありませんでした。
しかし、思いがけないことから転機が訪れます。

精神疾患の再発

先輩バーテンダーの突然の退職により、従業員は私だけになってしまいました。
お店は週6日営業でしたが、当面の間その内の5~6日間は私が、残りはオーナーが入るということになります。オーナーは他にも事業があるため、基本的には私が一人で日々の営業を行うことになりました。
条件付きでシェーカーなどの調理器具の使用は認められたものの、経験、知識不足から日々お客さんに怒られるのは変わらずでした。
また、バーの売り上げはバーテンダーの腕に直結するといっても過言ではありません。経験不足の私では思ったように売り上げを伸ばすことができず、オーナーにも売り上げが悪いと怒られるようになってしまいます。
毎日のようにお客さんにも、オーナーにも怒られる日々。それまで回復しつつあった私の精神状態はまたしても悪化してしまうのでした。

対人恐怖症の悪化

私は明らかに憂鬱な状態になっていました。
出勤すれば元気がない、やる気はあるのかとオーナーに怒られ、営業中はお客さんに経験不足であることを怒られ、業務が終了すればオーナーに売り上げが悪いと怒られます。そしてさらに気分は憂鬱に。
そんな悪循環が続き、対人恐怖症までもが悪化することになってしまいます。
お客さんを目の前にすると突然吐き気を催したり、吐きそうになってしまう症状が現れる時が出てきてしまいました。

もうバーテンダーを続けるのは無理なのではないか。しかし今辞めれば店が営業できなくなってしまう・・・
私はどうすればいいのか、自分ではわからなくなってしまいました。

訪れた転機

お店までは自転車で通勤していたのですが、途中に高架橋(線路をまたいで地上高くに架けられた橋)がありました。私はそこを通過する度にいつも思うのでした。
ここから自転車ごと飛び降りれば全て解決するのではないだろうか、やはりトラックか何かが突っ込んできてそのまま高架下に落としてくれないだろうか……と(笑)

そんな中、以前行きつけだったバーのマスターから連絡がありました。

「ミナト君元気かい?たまには顔見せにおいでよ」

以前お世話になっていたバーのマスターには大変な迷惑をかけてしまった後、きちんとした謝罪をできずにいました。信用を裏切るような事をしてしまったため謝りに行くのが、会いに行くのが怖かったのです。
それでも、そんな私のことですら心配してくれ、連絡をくれたのでした。

気持ちに余裕などはありません。それでも謝りに行かないと。しっかりと会って謝罪しないと──
ただ純粋に謝りたいという気持ちに突き動かされ、私は暫く振りに以前行きつけだったバーへ向かうのでした。

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