暴力と恐怖で支配された戦場

自分が進む道はこれしかない。私は希望なき生活から脱却するために大学を中退し、家を飛び出しました。

こんにちは、現役バーテンダーの湊です。
バーで知り合った飲食店経営者に誘われ、私は彼の下でアルバイトとして働き始めます。
暫くすると正社員にならないかといった話が出てきます。
当時私はまだ大学生でしたので、正社員になるのであれば大学を辞めなければなりませんでした。

恐怖による支配体制

アルバイトで働き始めた私は意欲的に働きました。目的のない毎日を過ごしていた私に、社長に認められたい、仕事を早く覚えたいという目標ができたからです。
そんな姿を見てか、働き始めて数か月後に社長から話がありました。

「ミナトくん、社員でやらないか?」

社長は言いました。大学に通いながら社員として働き大学を卒業した人もいるし、大学生だから社員になってはいけないなんてルールはないと。
確かにその通りではありましたが、取得していた単位の状況から考えて卒業することは不可能に近い状態でした。しかし私はこのまま大学生活を続けていても自分に未来はないと思い、大学を中退して社員として働くことを決めます。

私は大学で中退の手続きを済ませました。話せば反対される事はわかりきっていたため、両親には言わずに。
もう実家にいることはできない。私は実家を出ることを決めます。引っ越しの資金約40万円は消費者金融から借りました。
引っ越しの当日、大学を中退したこと、就職すること、家を出ていくこと。それだけを両親に伝え、私は実家を去りました。怒る母に背を向けて。

社会人としての生活

「ミナト、今月からタイムカード切らなくていいから」

社員としての勤務が始まりました。この時は社員は勤務時間を記録する必要はないのかくらいにしか思っていなかったのですが、思えばこの時点からおかしいと気付くべきだったのかもしれません。
ちなみに勤務時間ですが、仕込みが15時から、営業時間が17~3時、閉店作業が1時間ほどの4時までで基本的に計13時間。休みは週1日。日によっては仕込みの時間が早くなったり、営業終了後に別の仕事があったりと長引くことも。もちろん残業代などはでません。そもそもタイムカードを切っていないわけですから(笑)残業という概念はこの店にはありませんでした。今でいうところのブラック企業というやつです。

そしてそれまで優しかった社長も人が変わったように厳しくなります。
私は主に厨房での調理をしていたのですが、不手際や、何かミスをすれば容赦のない蹴りが飛んでくるようになりました。それは店内にお客さんがいようが関係なくです。一切のミスは許されない。そんな恐怖による張り詰めた緊張感が、店内には常に漂っていました。

よく飲食店は「戦場」と例えられることがあります。武器の整備や弾を込めることが食材などの「仕込み」で、それを用いて攻めてきた敵と戦うことがお客さんを迎え入れる「営業」です。私の場合はその激戦の最中、味方であるはずの隊長から常に背中に銃口を向けられているようなものでした。

恐怖の教育方針

私が入社した飲食店は、社長、店長、副店長、そして私が正社員でした。店長が近いうちに独立する話がでていたらしく、店長を心の底から慕っている副店長もおそらく店長の独立と同時にいなくなるのでは、といった懸念が社長にはあったようです。そのため、次期店長候補として私には敢えて厳しい教育が施されていたようです。
社長の教育もエスカレートしていきます。
営業終了後に説教のため飲みに連れていかれ、それが朝まで、長ければ昼前まで続くことも頻繁にありました。もちろん次の日も仕込みからの仕事があります。暴力ももはや手加減無しで、容赦なく蹴られ、顔を殴られることもありました。

私は身も心もズタズタに引き裂かれたボロ切れのような状態になっていました。
長時間に及ぶ労働時間で体は疲弊しきっていて、睡眠時間もまともに取れないことが多く、ふらふらの状態で出勤し、何か仕出かせば飛んでくる暴力に常に怯えながら働く。こんな状態でまともに仕事ができるはずがありませんでした。

精神状態の悪化

入社後の私には目標がありました。店内隠し扉奥にあるバーに立ちたい。思えばこの頃からバーで働いてみたいといった願望があったのだと思います。
しかしそんな希望や目標なんてものを考えられる余裕は私にはありませんでした。仕事はもう辞めたいと思っていましたが、社長が怖くて辞めるという一言が言えません。日々考える事といえばトラックか何かが突っ込んできて店を破壊してくれないかとか、自分が事故にあって骨折でもして出勤できなくならないかなどです。

この世から自分を消してくれと、そのような独り言も増えました。
一人でいるときに気が付けば勝手に口が呟きます。1日に何回も何回も。

私の精神状態は限界に近い所まできていました。
しかし、さらに追い込みをかける出来事が続きます。

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