【腸の痛みは脳へ】脳と腸が相互に作用する関係「脳腸相関」に迫る

脳と腸は互いに影響を及ぼし合うという関係から、精神疾患の治療法には新たな可能性が見いだされようとしています。

前回は、腸内フローラを構成している腸内細菌が身体や精神状態にも関係しているということを見ていきましたが、元々わかっていた「脳」が自律神経を介して腸に影響を与えるのと同様に、「腸」も脳に影響を与えるということが近年の研究でわかってきています。

そして、この脳と腸との相互作用には、なんと腸内細菌も関わることが明らかになってきているのです。

今回は、この「脳腸相関」と呼ばれるものについて見ていきながら、腸内環境がそこにどう関わるのかも見ていきたいと思います。

前回はこちら
【精神面との関係】腸内細菌が咲かせる花畑「腸内フローラ」と腸内細菌

腸は第2の脳

太古の昔、地球上に誕生した生物は消化器官、つまり「腸」を備えてはいましたが、そのときはまだ脳は持ち合わせていませんでした。生物が進化の過程で脳を獲得したのは、それからずっとずっとあとの話なのだそうです。

当時の生命体がその状態で生を存続し、進化を続けてこれたのは、消化器官に「生きる意思」があったからなのかもしれません。

そして、それゆえなのか、私たちが持つ「腸」は、脳からの指令がなくてもみずからの意思で判断し、24時間絶えることなく私たちの生命を維持するために働く機能を有しています。

たとえば、食べたものが腐っていたり、有害な菌を持っていたときに、私たちが吐いたり、下痢をしたりするのは、腸がみずからの意思で危険と判断し、私たちの体に害を及ぼさないように動いた結果にほかなりません。

腸が「第2の脳」と呼ばれるゆえんは、腸が人の意思とは関係なく活動し、私たちの生命活動を維持する役割を担っているところにこそあるのです。

脳腸相関とは

脳は不安やストレスを感じたときやリラックスしているときには、自律神経を介して腸に働きかけ、消化の抑制や消化を促進させたりと、腸の活動に影響を与えます。

たとえば、極度の緊張や不安、ストレスなどが原因となって起こる「過敏性腸症候群」は、腸には異常がないにも関わらず、腹痛や下痢、便秘を引き起こします。

脳が感じた情報は腸に伝えられ、腸の機能に影響が出るからです。

また、それとは反対に、前回でも見てきたように、腸内環境の悪化は脳の機能にも影響を及ぼします。腸内環境の悪化によって、正常な量の脳内物質がつくられなくなってしまうことがあるからです。

脳がストレスを感じることで腸内環境が悪化し、腸内環境が悪化することでさらに脳がストレスを感じる……

このように、「脳」と「腸」が密接な関係にあること、つまり「脳」から「腸」へ、「腸」から「脳」へと情報伝達が行われ、脳と腸が相互に作用を及ぼし合う関係にあることを「脳腸相関」といいます。

そしてこの「脳腸相関」にも、腸内環境(腸内フローラ)が深く関わっていると考えられているのです。

腸内細菌と脳腸相関の研究データ

マウスを使った実験では、腸内細菌が「脳腸相関」に影響を与える研究結果が報告されています。参考までにいくつか見ていきましょう。

拘束されたマウス

まず、腸内細菌(ビフィズス菌ではないもの)を持つマウスと、腸内が無菌のマウスを動けないようにするストレスをかけた実験では、両者共にストレスへの反応が見られましたが、ビフィズス菌を持つマウスは無菌のマウスと比べると明らかなストレス反応の減少が見られました。(※1)

閉じ込められたマウス

また、腸内細菌を持つ通常のマウスと、腸内が無菌のマウスを狭い空間に閉じ込めた実験では、無菌マウスのほうに不安行動が多く見られました。

そこで、この無菌マウスにビフィズス菌を持たせたところ、ストレス反応が落ち着き、不安行動が通常マウスと同じ程度になったのです。(※2)

性格が変わるマウス

さらに、腸内が無菌のマウスに、通常のマウスの腸内細菌を移植したところ、無菌マウスが通常マウスの性質を引き継いだケースがあったといいます。

臆病な性格だったマウスが冒険的になり、逆に大胆な性格だったマウスは内気になったというのです!(※3)

(※1~3)参照:須藤信之 脳の機能に関与する腸内フローラと「脳腸相関」(pdf)

これらの結果から、マウスを使った実験では、腸内細菌が精神状態に影響を及ぼしていることがわかり、善玉菌である乳酸菌(ビフィズス菌)が精神状態を改善しているといった結果が出ています。

さらに、このような研究は人が対象となるものも世界で行われていて、類似した実験でもやはり同じような結果がでていることからも、腸内細菌と脳腸相関の関係を見て取ることができるといえるのです。

腸内環境と精神疾患

腸内環境の悪化は脳に影響を及ぼし、精神状態への影響や、さまざまな身体症状を引き起こすことが明らかにされていますが、上記のような研究例から、腸内環境の悪化が精神疾患の原因になるとも考えられています。

腸内細菌が生物の行動を変化させるように、腸内細菌が私たちの意思をもコントロールする可能性すらあるといいます。たとえば、野菜やフルーツなどが足りていなければ、突然それらを欲したりすることがあるようにです。

腸内細菌は精神疾患の治療を変える、大きな可能性を秘めているのかもしれません。

今回のまとめ

・腸は脳の指令がなくてもみずからの意思で活動する働きがある
・脳と腸が互いに影響を及ぼし合う関係のことを「脳腸相関」という
・腸内フローラは精神状態に影響を及ぼすとも考えられている

これまで腸内環境の悪化が神経伝達物質の不足につながること、脳が自律神経を介して腸に影響を及ぼすことを見てきましたが、今回で脳と腸が密接に関わり、お互いが影響を及ぼし合っていることがわかりました。

そこで、これらの関係をひもといていくと、精神的な病を根本的に治療する可能性が見えてくるわけですが、それはひとまず置いておき、次回はこれまでみてきた総まとめと、精神的な病の原因について見ていこうと思います。

次回→ 【総まとめ】神経伝達物質、自律神経、腸の関係から見る精神疾患の原因

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