神経伝達物質、自律神経、腸の関係から見る「精神疾患の原因」とは

神経伝達物質、自律神経、腸内環境はそれぞれが影響を及ぼし合う関係にあり、どれか1つの異常が精神疾患の原因にもなるのです。

今回からはこれまで見てきた神経伝達物質、自律神経、腸の機能に異常が起きることで引き起こされる症状や、影響を及ぼし合う関係性についてを一度振り返って確認し、どうすれば精神疾患(こころの病)を克服することができるのかを考えていきます。

三大神経伝達物質(まとめ)

神経伝達物質とは脳内で情報を伝達するために使われる物質のことをいいます。
現在では50種類を超える神経伝達物質が発見されていますが、その内の3つ、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンのことを三大神経伝達物質といいます。

(これまでのまとめを飛ばす)

ノルアドレナリン

ノルアドレナリンはストレスを感じた時などに分泌され、主に心身の覚醒、精神・肉体を強化する作用があります。
しかし分泌されることで怒りや不安、恐怖などの感情を引き起こすことから、ノルアドレナリンの過剰分泌は「対人恐怖症」や「パニック障害」といった「不安障害」を、不足すれば消極的な感情を生み出しやすくなり「うつ病」を発症する原因になるとされています。

ドーパミン

ドーパミンは快感、快楽など「快」の感情に関わり、意欲を向上させる作用があり、ドーパミンの分泌によって快楽の感情を引き起こす機能は「報酬系」と呼ばれています。
ドーパミンの過剰分泌は「ニコチン依存症」「アルコール依存症」「ギャンブル依存症」などの各種依存症を引き起こすとされ、幻覚や妄想などを引き起こす「統合失調症」や「過食症」もドーパミンの過剰分泌が原因と考えられています。
一方でドーパミンが不足すると、運動機能の低下から「パーキンソン病」や、意欲の低下から「うつ病」を発症する原因にもなるとされています。

セロトニン

セロトニンはノルアドレナリン、ドーパミンの暴走を抑制し、心身を安定させる作用があります。その他にも食欲の抑制や、体内時計、運動機能の調節、睡眠の導入を促すなどの働きもあります。
セロトニンが不足すると、ノルアドレナリン、ドーパミンの過不足を制御できなくなるため、それらが過剰・不足した場合の症状が出てきます。つまり不安や恐怖の感情を生み、意欲、関心を失わせ、「うつ病」「不安障害」「依存症」やその他の精神、身体疾患を引き起こすと考えられています。
精神薬の投薬などによりセロトニンの脳内濃度が過剰に高くなってしまうと、「セロトニン症候群(セロトニン中毒)」と呼ばれる症状が出ることがあります。

自律神経(まとめ)

自律神経は消化や代謝、呼吸や血液の循環など、私たちが生きていくための機能の維持や調節を無意識の内に行う作用を持った神経のことをいいます。
自律神経は交感神経と副交感神経に分けられます。

交感神経と副交感神経

交感神経は覚醒時や運動中、緊張や不安、恐怖、怒りなどのストレスを感じた時に働き、身体機能を活性化させて戦闘状態にする(闘争・逃走反応)働きがあります。
副交感神経は食事中や睡眠中などの体がリラックスしている休息時に働き、疲れた体や脳をゆっくりと休め、修復やメンテナンスを行う働きがあります。

交感神経と副交感神経のバランス

交感神経と副交感神経はバランスを取り合いながら働くことで正常に機能しますが、そのバランスが乱れ、交感神経が過剰に優位になってしまうと「対人恐怖症」「パニック障害」といった「不安障害」や「不眠症」を、副交感神経が過剰に優位になってしまうと「うつ病」や「過食」を引き起こす原因になると考えられています。

また、交感神経と副交感神経のバランスが乱れることで生じる身体症状や精神症状のことを「自律神経失調症」といいます。

自律神経失調症

自律神経失調症とは、自律神経の異常によって起きる体の不調に自覚症状があるものの、内臓や器官などの身体検査を受けても体に異常が見つからない状態のことを言います。
自律神経失調症の症状は人によって様々で、いくつか重なって症状が現れたり、症状が出たり消えたりと、非常に不安定な現れ方をする場合もあります。

腸(まとめ)

体内に取り込んだ食物から栄養や水分を吸収し、私たちの生命活動の根本的な役割を担う器官が「腸」です。
腸には「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれる無数の「腸内細菌」が棲みついていて、主に「善玉菌、悪玉菌、日和見菌」の3つで構成されています。腸内フローラはこれら腸内細菌が共生のバランスを取り合うことで保たれ、そのバランスのことを「腸内環境」といいます。
腸内環境の乱れは便秘や下痢から始まり、肥満、肌トラブル、体臭・口臭の悪化や神経伝達物質の不足、自律神経の乱れの原因となります。

第二の脳

腸は脳の指令がなくても自らの意思で判断し活動する力を持っています。
また、脳が感じた不安や恐怖などのストレスは腸に伝えられ、腸に影響を及ぼしますが、反対に腸が感じたストレスも脳に伝えられ、脳から心身に影響を及ぼすことがわかっています。この脳と腸の相互作用の事を「脳腸相関」といいます。

そしてそこには腸内フローラも加わり、腸内細菌が不安行動の抑制など精神状態へ影響を及ぼすことや、うつ病、自閉症の症状を改善させる可能性も明らかになってきています。

ここまでがこれまでみてきたことの簡単なまとめです。(これまでのまとめに戻る)
神経伝達物質、自律神経、腸には密接な関係があり、どれかに異常が起きればその他のどれかに影響が出ます。ここからはそれぞれの関係性について見ていきましょう。

神経伝達物質と自律神経の関係

神経伝達物質の過不足は自律神経に影響を与え、心身に悪影響を及ぼします。それによって感じるストレスも自律神経のバランスを乱す原因となります。

ノルアドレナリンとアセチルコリン

ノルアドレナリンは不安や恐怖などのストレスを感じた時に交感神経を刺激し、心身を活性化させる働きがあります。
交感神経が優位になると心拍の増加や血圧の上昇など、身体機能が上がる作用がありますが、ノルアドレナリンの過剰分泌によって交感神経が過剰に優位になってしまうと交感神経が体に及ぼす影響が過剰に高くなってしまうため、異常な心拍数の上昇や発汗などの影響が出てきてしまいます。その結果として「対人恐怖症」「パニック障害」といった「不安障害」が引き起こされるのです。

また、アセチルコリンという神経伝達物質は副交感神経を刺激し、心身を休息させる働きがありますが、アセチルコリンの不足によって副交感神経の働きが弱ってしまうと疲れた体を休息させることができなくなってしまい、常に疲れた状態を作り出します。疲れが取れず、毎日疲労が蓄積していくストレスは自律神経のバランスを乱す原因となります。

ドーパミン

ドーパミンが過剰に分泌されると快楽の感情を引き起こす「報酬系」という機能が暴走し、快楽を感じる対象を求め続ける状態になってしまう事があります。この状態が依存症です。
依存症になってしまった場合、依存対象から快感を得ることを阻止されると尋常ではない怒りやストレスを感じるようになります。人によっては物を破壊したり、暴力を振るうこともあります。このような怒りなどのストレスは交感神経を刺激し、交感神経が過剰に優位になる状態を招きます。
また、ギャンブル依存症になってしまった場合の自律神経との関係も見てみましょう。

【パチンコ店にて】
「頼むから出てくれ・・・家賃に払うお金や生活費もつぎ込んでるし、このまま出なかったら今月生活していくお金がないんだ。家賃だって不動産会社は待ってくれないし、借りるにしても既に限度額がいっぱいだからこれ以上借りられないんだ・・・頼むから出てくださいお願いします・・・」 
 

実際この状況になってみるとわかるのですが(わからなくていい状況です・・・)心拍数が異常に上昇し、呼吸が乱れ、額には脂汗が滲みだし、口はカラカラに乾きます。気持ち悪くなり、吐き気を催すこともあります。
このようにお金を失うことへの恐怖や不安は交感神経を過剰に優位にしますし、お金を失った後で感じる後悔や、無気力感、自責の感情といったストレスも自律神経のバランスを乱す原因となるのです。

また、ドーパミンと副交感神経を刺激するアセチルコリンは、どちらか一方が増えればどちらか一方が減るといった関係にあります。
ドーパミンが不足することでアセチルコリンが増え、それも一つの原因となることで副交感神経が過剰に優位になってしまうと、無気力・無関心の状態になってしまい、その状態は「うつ病」を引き起こす原因になると考えられています。
さらに、ドーパミンはノルアドレナリンの前駆体(変化する前の物)でもあるため、ドーパミンの不足はノルアドレナリンの不足を招き、交感神経の働きを低下させるため、これもまた「うつ病」の原因になると考えられるのです。

セロトニン

セロトニンはノルアドレナリン、ドーパミンの過剰分泌を抑制する働きがあります。
また、ノルアドレナリン、ドーパミンは過剰な分泌が続くと一転して枯渇、不足する状態になってしまうのですが、
セロトニンの抑制作用によりノルアドレナリン、ドーパミンの過剰分泌は未然に防ぐことができるので、それらが不足する事態も回避することができ、結果として自律神経のバランスを保つことができるのです。

また、セロトニンには私たちを眠りに誘う作用もあります。
睡眠中は副交感神経の働きが活発になるため、副交感神経を優位にさせて心身を修復し、自律神経のバランスの乱れを防ぐことができます。

セロトニンが不足すればノルアドレナリン、ドーパミンが過不足した症状が、つまり「不安障害」や、「ギャンブル依存症」などの各種依存症、そして「うつ病」などが引き起こされる原因になると考えられ、自律神経のバランスもまた乱れる原因となってしまうのです。

自律神経と腸の関係

神経伝達物質の過不足が自律神経のバランスを乱し、乱れた自律神経のバランスは腸に影響を及ぼします。

交感神経、副交感神経と腸の働き

交感神経が活発に働く時、消化の機能は抑制され、消化管は消化液の減少や蠕動運動(ぜんどううんどう)が抑制されるなどの影響を受けます。
反対に、副交感神経が活発に働く時は消化の機能は促進され、消化管は消化液の増加や蠕動運動が促進されるなどの影響を受けます。
このような働きから、自律神経の乱れによって起きる交感神経の異常は「便秘」を、副交感神経の異常は「下痢」を引き起こす原因となります。

便秘の場合であればお腹の張り(腹部膨満感)や、便が固く排便時になかなか出なかったり、強くいきむことで肛門が切れてしまったり、排便したのにまだ残っているような感じ(残便感)があったりといった不快感や痛みなどのストレスを。
下痢の場合であれば何度もトイレに駆け込まないといけなくなったり、トイレが近くにないと不安を感じたり、外出中であれば何度も押し寄せる便意に怯えたり、お腹の痛みや、肛門が荒れるといった不快感などのストレスを感じます。

このような腸のストレスやそれに付随するストレスは脳に伝えられ、不安やストレスを感じた脳は自律神経を介して腸にまた影響を及ぼします。脳から腸に伝えられたストレスは腸内の善玉菌を減らして悪玉菌を増やし、腸内環境を悪化させます。
そして悪化した腸内環境は便秘や下痢などの症状を引き起こし、そのストレスは再び脳へ・・・

このように自律神経の乱れは負のスパイラルを生み出しますが、この悪循環は腸内環境の悪化が起点となることも当然あります。腸内環境の悪化によって腸に異常が起き、そのストレスが脳に伝わって自律神経のバランスを乱し、再び腸に戻ってくるといったようにです。

これらのことからも自律神経と腸には密接な関わりがあり、自律神経の乱れや腸内環境の悪化は精神状態にも影響を及ぼすことがわかります。

腸と神経伝達物質の関係

神経伝達物質は原料となる栄養素を腸から取り込むことで初めて作る事ができます。また腸内に棲息する腸内細菌は食物の分解や神経伝達物質の合成に必要なものを生成する働きを持っています。しかしそれらの働きは腸内環境が悪化することで機能の低下を招き、神経伝達物質の不足は精神・肉体に影響を及ぼします。
例えば腸内環境の悪化が一つの原因となってセロトニンが不足すれば、交感神経が優位すぎる状態になってしまい便秘を引き起こしますし、アセチルコリンが不足すれば副交感神経の活動に異常をきたし下痢を引き起こす要因にもなります。もちろんその影響は腸以外の肉体面や精神面にも及びます。

つまり腸内環境の悪化は神経伝達物質の異常を引き起こす大本の原因にもなり、さらには自律神経の異常を引き起こし、それらが再び腸内環境を悪化させる悪循環の始まりになると考えられるのです。

神経伝達物質、自律神経、腸の関係

このように神経伝達物質、自律神経、腸はそれぞれが密接な関わりを持っていて、どれかのバランスが1つでも乱れればその他のバランスを乱す原因となり、精神疾患や身体症状の原因になると考えられます。
これらの関係を簡単にまとめると以下のようになります。

腸内環境悪化(便秘、下痢、腹痛など)→神経伝達物質の異常(不安障害、依存症、うつ病など)→自律神経の異常(精神症状、身体症状、自律神経失調症)→腸内環境悪化
 

異常が起きる起点は、人それぞれ環境や習慣によって変わってくると思いますが、
神経伝達物質の不足によって疾患が起きているのであれば腸内環境を改善して神経伝達物質を作りやすくする。
自律神経の異常によって疾患が起きているのであれば神経伝達物質の不足を解消、つまり腸内環境を改善する。
このように神経伝達物質も自律神経の異常も、問題を解決しようとすると最初の腸内環境にたどり着きます。

これらの関係からも精神疾患の原因には腸内環境、つまり腸内フローラのバランスの乱れが大きく関わっていると考えられるのです。

今回のまとめ

・神経伝達物質、自律神経、腸はそれぞれが密接に関わり合い、どれか1つに異常が起きればその他の異常を招く要因となる
・神経伝達物質の異常、自律神経のバランスの乱れは大本を辿ると腸内環境に辿り着く
・精神疾患の根本的な原因には腸内環境に大きな関わりがあると考えられる
 

次回はこれらの関係を踏まえ、精神疾患を根本的に治す、克服する方法について考えていきます。

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