儚く散った夢

バーという憧れの世界の門を叩いた私でしたが、その夢はうつ病という精神疾患の前にもろくも打ち砕かれてしまいました。

こんにちは、現役バーテンダーの湊です。
飲食店を辞めた私は特に目的もなく、フラフラとした生活を送っていました。
そんな時、バーでの仕事が突然舞い込んできます。
元々バーで働きたいと思っていた事もあり、私は紹介されたバーで働くことになるのですが……

無気力の病

飲食店を退職した私はそれまでのつらい仕事の反動から毎日のようにパチンコ屋へ通っていました。学生の頃と違い生活するための資金は全て自分で賄わなければならないのですが、ギャンブル依存症の人間にとって使ってはいけないお金という概念はありません。気付けば借金は借り入れ限度額ギリギリまで膨れ上がり、翌月の家賃や光熱費の支払いすら危うい状況になっていました。

働かなければ生きていけない。
焦りを感じ始めていた頃、行きつけのバーのマスターから連絡がありました。

「知り合いのいるお店が人を探してるみたいで、よかったら紹介するよ」

早速下見に行ってみると、そのお店はダイニングバー(料理のメニューも多く食事ができるバー)に近い形態で、自分の理想とは少し違った印象でした。
しかし理想だなんだと贅沢を言ってられるほどの余裕などありませんでしたし、何よりバーで働きたいといった希望が自分の中にまだ残っていた私は、紹介者に手伝ってほしいと懇願されていたこともあり、このお店で働くことにします。
うつ病の傷痕が癒えぬまま。

働きたくない、働けない

この紹介者はマネージャーのような立ち位置で、現場に立つ側の人ではありませんでした。その後マネージャーを通して店舗経営者との顔合わせなどがあり実際に勤務が開始する日が決まるのですが、私はどこか上の空でした。頭にもやがかかっているようにぼーっとしていて、働こうとか頑張ろうといった意思や気力がまるで起きない、無気力のような状態です。

勤務が開始する日が近づくにつれて働きたくない、行きたくないといった感情が押し寄せてきます。なんとか自分を納得させようとするも一度支配された感情を覆すのは難しく、働く前から辞退することばかり考えていました。
しかし辞退、早期の退職はもちろん勤務地にもですが、マネージャーや紹介してくれた行きつけのバーのマスターにも迷惑をかけることになります。
そんなことを考えている間に初出勤の日を迎えてしまいました。

全てを失った日

当時の私はうつ病に対する知識がなく、自分は病気であるといった認識ができていませんでした。この時はまだ精神的に働ける状態ではなかったのです。
私はバーで働き始めたものの、やはり続けていくのは無理だと思いマネージャーに相談しました。もちろんですがいきなり辞めるなど許されるはずもなかったのですが、私もどうしても働き続けることができなかったため、無理をいって辞めさせてもらうことになりました。
その話はもちろん行きつけのバーのマスターの耳にも入ります。私の人柄を買ってくれて紹介してくれたマスターの顔に泥を塗るような真似を私はしてしまったのです。

やっと見つけた、自分が自分でいられる居場所。辛いときはいつも私はそこにいました。そして今まで築いてきた信用、前職からあったバーで働きたいといった自分の夢。

その全てを、私は失いました。

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