コブタの半生(その2)社会に出たコブタに待ち受ける過酷な現実

社会人となったトンちゃんはめまいなどの症状とは一生付き合っていくしかないと半ば諦めていましたが、残念ながら自律神経失調症はそれだけで終わることはありませんでした。

幼い頃から自律神経失調症を患い、精神的な影響を受け続けていたトンちゃんでしたが、学校を卒業し社会人として働き始めます。しかし仕事による社会的なストレスや生活習慣の乱れからそれまで多少は落ち着いていためまいなどの症状が再び悪化し、新たに現れた症状によっても精神状態は追い込まれていくことになるのでした。

トンちゃんの社会人生活

専門学校を卒業したトンちゃんは一般企業に就職するのですが、社会人としての生活による変化は心と身体に影響を及ぼし様々な症状を引き起こしていきます。

コブタの家庭訪問

専門学校を卒業後、トンちゃんは一般家庭向けのルート営業を行う会社に就職します。
勤務時間は朝8時~夕方18時頃までで、週5日勤務です。
担当する訪問先が多く多忙な毎日でしたが、体調が悪い時は駐車場に車を止めて休憩したりとなんとか業務にあたっていました。
ギリギリながらもなんとか仕事をこなしていたのですが、半年ほどが過ぎた頃から会社に保管しておく売り上げの金額が合わなくなり始めます。最初は自分の計算ミスかと思い(本来は自分で負担するものではないのですが)合わない金額分を自分で補填していましたが、次第に他の従業員からも金額が合わないという声が聞こえ始めます。

初めのうちは他の従業員もトンちゃんと同じように足りない分は自分のポケットマネーから出していたのでしょう。しかし金額が合わないことがあまりに多く、流石におかしいのではと感じた従業員の報告により社内で調査が行われた結果、社内での横領が発覚しました。
犯人は……トンちゃんの上司でした。

思えば金額が合わなくなり始めてから、上司は自家用車を新車に買い替えたり、急にご飯をご馳走してくれるようになったり、女性との遊びを自慢してきたりと、妙に羽振りが良くなっていたそうです。
問題は内々に処理されることとなり、上司が退職することで横領事件は終わりを告げるのですが、トンちゃんにとっては新たな問題が降りかかってくることになります。
上司がいなくなったことにより、上司の担当業務をトンちゃんが負担しなくてはならなくなってしまったのです。もちろん自分の担当業務に加えて。

それまで1日のノルマをこなすので精一杯だった業務に、新人の教育や、新規獲得、上司が担当していたルートの一部が加えられ、それらはトンちゃんにとって支えきれないほどの重荷となりました。
この頃からストレスを感じるとお腹が痛くなったり、下痢をしたりするようになり、最終的に出勤すると吐き気を催し、出勤する度にトイレで吐いてしまうようになってしまいます。身体症状と共に精神状態も悪化していき、限界を感じたトンちゃんは仕事を辞める旨を上に伝えるのでした。

コブタの美容室

ルート営業の仕事を退職後、短い療養期間を経てトンちゃんは美容室の受付として働き始めます。勤務時間は朝から始まり深夜24時〜25時頃まで続くことが多いものの残業代などは出ず、固定給で12〜13万円ほどでした。
美容師とアシスタントの間に派閥などもあり人間関係も悪かったといいますが、一番の問題だったのが勤務は深夜まで続くものの仕事が終わらず、家に持ち帰らなければならないことでした。帰宅してから残った仕事を自宅で終わらせると、次の日も朝が早いため睡眠を取れる時間は何時間もありません。

明日も早いから、早く寝ないと──しかし寝ないといけないと思えば思うほど眠れなくなってしまうようになり、次第に不眠症状が現れるようになっていきます。
毎日体はヘトヘトに疲れているというのに眠れない。眠りにつくために強いアルコールを摂取することもしばしばありました。(アルコール依存症の入り口にもなります。何かを酒に頼るという行為は控えることを強くお勧めします
その後しばらく耐えたものの、不眠による体調不良で退職。

コブタのホテル

トンちゃんは社会人になっても家に自分の居場所がないと感じていました。家族との関係(特に両親、妹)もあまりよくなかったため、家から出たいと強く思うようになり、両親の反対を押し切って住み込みで働けるホテルに就職します。
ホテルは24時間営業のため、変則的なシフトが組まれます。勤務先のホテルのシフトは早朝5~13時(8時間)、朝番8~18時(10時間)、遅番10~20時(10時間)、夜勤13~8時(19時間)の4交代制だったのですが、トンちゃんは住み込みだからという理由で早朝から夜勤までを無理に組み合わせた厳しいシフトを組まれてしまいます。その結果体内時計が狂い、今は朝なのか昼なのか夜なのか分からなくなってしまう事態に陥ってしまうのでした。

生活リズムは不規則を極め、元々あっためまいなどの症状も酷くなり、女性特有の生理不順などもこの頃から起こり始めます。しかしここで仕事を辞めれば実家に戻らなくてはいけなくなってしまう。それだけはなんとか避けたいトンちゃんは必死に過酷なシフトを耐えていたのですが、休日のある日、部屋で休んでいるとドアをノックする音が。

「トントン……

「こんにちは警察ですが、トンちゃんさんですか?少しお話を伺いたいのですが……

早くも出荷される時がきたのか……(そんなことを考えられるほど当時のトンちゃんに余裕はないのですが)
なんとトンちゃんが住み込みで借りている部屋の隣に数日間、指名手配されていた犯罪者グループが潜伏していたというのです。犯罪者グループがいくつか借りていた部屋の内の一つがトンちゃんの住んでいた隣の部屋で、数日間潜伏したあと夜の間にベランダから逃走したらしく、何か物音を聞いたり犯人を見たりしなかったかと警察が聞き込みにきたのでした。
トンちゃんは運よく犯人が逃走したとされる日は外出していて、犯人に遭遇することはなかったのですが、一歩間違えれば自分も襲われていたかもしれないと考えると恐ろしさで身の毛がよだち、事件が落ち着いた後も部屋にいると常に不安を感じるようになってしまいました。

時を同じくして過労によりホテルの料理長が体調不良で倒れてしまいます。
元々トンちゃんはホテルのフロントでの勤務だったのですが、料理長不在によるレストランの人手不足により、フロント業務に加えてレストランの手伝いもしなければならなくなってしまいました。
生活リズムの乱れ、不安で常に休まらない身体とこころ、許容量を超えた仕事量にトンちゃんも料理長の後を追うように体調不良で倒れ、退職することになります。

そして、住む場所を失ったトンちゃんは再び実家へ帰ることになるのでした。

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