コブタの半生(その4)コブタの精神を崩壊させる、隣家の破壊者

日々隣家に訪れる暴漢により、トンちゃんの精神状態は極限にまで追い込まれていくことになります。

ネイリストになる夢は絶たれトンちゃんに残された希望は親元を離れて一人で生活することだけとなってしまいますが、以前から隣家に起きていた異常がこの頃顕著になり、それは日に日に激しさを増し、ついに事件へと発展してしまいます。

崩壊する精神状態

ネイルサロンでの仕事を退職後も、トンちゃんはハローワークの職業カウンセラーの元を定期的に訪れていました。カウンセラーの先生は精神科の院長先生を務められている方で、仕事以外にも精神面での相談にも乗ってくれていて、トンちゃんにとっては唯一の心の拠り所になっていたのかもしれません。院長先生はいつでもうちの病院においでと言ってくれていました。(後にお世話になる病院の一つになります)

コブタの隣人

ハローワークには仕事を探すためにも通っていたのですが、トンちゃんには以前から気になっていたことがありました。それは、隣家に起きている異常です。
トンちゃんが住んでいるアパートと隣家の距離は1メートル程しか離れていなく、通路を歩いて自分の部屋に入ろうとすると隣家の側面を歩いていくような形になります。元々引っ越してきたときは隣家からはテレビの音や料理の匂い、笑い声が漏れ、幸せそうな家庭に見えたのですが、時々玄関先にゴミのような物がぶら下げられていたりすることがありました。

初めのうちはあまり気にはなりませんでしたが、次第に深夜帯に何者かが隣家の周辺や自宅の通路をうろついている足音が聞こえるようになり(隣家の側面と自宅の通路がほぼ接していたため)、玄関先に置かれるゴミや嫌がらせの文書などの量が増えていったり、ゴミの内容が悪質な物に変わっていったりしました。

この嫌がらせ行為が続くにつれて、トンちゃんはノイローゼ気味になっていきました。深夜に正体不明の人物が自室の前をうろつき、その際に周囲に響き渡る、ヒタッヒタッ……という足音が聞こえる度に不安で心が落ち着きません。
いつも笑い声が漏れていた隣家からは、テレビの音は消え、人が会話する声も聞こえなくなり、夜も部屋の電気が消えているようになっていきました。

コブタとポリス

異常者のせいで夜もまともに眠れなくなってきたトンちゃんは最寄りの交番に駆け込みます。聞けば周辺の住民からも同様の通報がこのところ相次いでいて、パトロールの強化を行っているそうなのですが、嫌がらせ行為をしている人物は何者かわからず、事件には発展していないため特にそれ以上のことは何もしていないようでした。
その人物も現れてから姿をくらますまでが早いため、通報したところで警察が到着する頃には既にその場から消え去ってしまっているのです。
自分は何も関係ないのにどうして毎日のように不審者に怯えながら生活しなくてはいけないのか、町の住民を守るはずの警察はどうして何もしてくれないのか、もうこうなったら自分がアイツをやるしか……。トンちゃんは錯乱状態に陥っていました。

コブタの保育園

隣家に対する不審者の嫌がらせがエスカレートする少し前の頃から、トンちゃんは保育士補助の仕事をしていました。元々子供は好きだったため始めた仕事でしたが、勤務先の保育園は保育士同士の関係が悪く、保育士からの八つ当たりを受けることが多々ありました。
保育士からは1秒たりとも子供から目をそらすなときつく言われていて、毎日トイレに行くことを我慢させられていた結果、腎盂腎炎(腎臓内の尿のたまるところに細菌が繁殖し、腎臓にまで炎症が及んだもの)という病気にかかり、免疫力が低下していたためかマイコプラズマ肺炎に三度もかかってしまいます。

三度目のマイコプラズマ肺炎で仕事を休み、自宅で療養していた時のことです。
この頃隣家に嫌がらせに来ていた人物は1日2回深夜と早朝頃に来るようになり、罵声を浴びせながら玄関の扉を叩いていくようになっていましたが、ついに事件が起こります。
いつものように深夜ヒタッヒタッ……という音を立て舐めるように隣家の周辺を歩き回ったあと、突然大声で、もはや聞き取る事も出来ない暴言らしきものを叫びながら、その暴漢は隣家の玄関や窓のガラスを全て破壊して回り、そのまま逃走したのです!

ものの数分の出来事でした。しかし、破壊行動の最中に耳に入ってくるガラスが砕け散る音や、異常者が発する叫び声、危険な人物がすぐ隣にいて凶器のようなもので家を破壊しているというおぞましい恐怖は、これまで首の皮一枚でなんとか保っていた精神状態を崩壊させる決め手となり、トンちゃんの精神状態はついに限界を迎えます。
仕事は体調も悪化していたためこれ以上続けることが困難になり退職。自宅もこんな場所には一秒たりとも長くいられないと思い、引っ越すための資金を借りて自宅を引き払うことになりました。

隣家に嫌がらせに来ていた人物は一体何者だったのか、トンちゃんは借金の取り立てだと思っていたようですが、真相は明らかになることはありませんでした。そして精神的に限界を迎えたトンちゃんは引っ越した先で初めて精神科の病院を受診することになるのでした。

スポンサーリンク

コメントを残す