パチンコやスロットは、そう簡単には勝てないですよね。
だからこそ、「もっと当てたい、出したい」とハマっていってしまうのですが、じつはこれ、心理学でいう「部分強化」と深い関係があります。

部分強化……?
あまり聞き慣れない言葉ですが、これを知っておくと、つぎのことがわかるようになります。
- パチンコをする人の心理
- パチンコにハマる人の心理
- ギャンブルに依存してしまう理由
パチンコなどのギャンブルにハマる心理を知れれば、依存を断ち切る可能性も見いだせることでしょう。
そんなわけで本記事では、人がパチンコに行く心理を、心理学で有名なハトの実験+この部分強化から解き明かしていきます。
最後まで読んでもらえれば、きっと、今後の行動を変える力になってくれると思いますよ。
人がパチンコにハマる心理(ギャンブルと心理学)
私たち人間をふくむ動物は、行動したあとで報酬や罰といった刺激(自発した反応)を受けるとそれを学習し、行動を起こす頻度に変化を生じさせます。
わかりやすくたとえましょう。
自宅の扉にはレバーとボタンの2つがついていて、レバーをひねると体に電流が流れ、ボタンを押すと扉がひらく。
となると、だれも電流が流れるレバーなんてさわらなくなりますよね?



そりゃそうだ
これを、実験によって証明しようとしたものがあります。



ギャンブル問題にも関係するので見ていきましょう
1898年には、アメリカの心理学者、エドワード・ソーンダイクが先駆的な実験をはじめました。
そんななかでも有名なのが、1930年代に入ってからおこなわれた、バラス・フレデリック・スキナー(B.F.Skinner)による実験です。
スキナーは、つぎのことを実験するために、「オペラント条件づけ箱」というボックスを発明。
- 報酬や罰によって動物は学習し、
- それで自発反応(行動)が変化する(これをオペラント条件付けという)
これが、現在でいうところの「スキナー箱」です。
スキナー箱のハト実験を簡単に解説
スキナー箱とは、以下のものをいいます。
- 上下左右が壁によって仕切られた脱出不可能な箱
- そのなかにレバーやボタンなどの装置が取りつけられている
- その装置を押すとエサが出てくる仕掛けになっている
ようするに「給餌装置付きの箱」のことです。
では、この箱を使ってスキナーはなにをしたのか?
なんと彼は、スキナー箱の中に、おなかがすいたハト(やネズミ)を入れたのです!



箱の中に動物を閉じ込めたわけか
この、禁断のハト実験の流れと結果は、以下のようなものでした。


- おなかがすいたハトをスキナー箱の中に入れる
- スキナー箱の中にはつついたり、押したりすると給餌装置が作動するボタンがついている
- 箱の中に入れられたハトは、最初はでたらめに動いてボタンを押さない
- しかし偶然ボタンを押すことがあり、そうするとエサが出てくる
- ハトが偶然ボタンを押す → エサが出てくる、がくりかえされる
- ハトはボタンを押せばエサが出てくることを知り、ボタンを押してエサを出すようになる
この実験のポイントは、つぎのとおりです。
はじめのうちは、ハトはボタンを押すとエサが出てくることを知らない。ところが何度か偶然が重なると、ハトはボタンを押せばエサが出てくることを学習し、みずからボタンを押すようになる。
なお、この自発的な反応(行動)をオペラント反応、またはオペラント行動とよびます。
行動の直後にあたえられる報酬(エサ)などの刺激は「強化子」。
強化子をあたえる操作(エサをあげる)は「強化」というので、ちょっとだけ覚えておいてください。
連続強化と部分強化&実験で判明した消去抵抗
ハトがボタンを押し(オペラント反応)、エサ(強化子)が出てくる操作を「強化」とよぶ。
さて、この強化には、以下のように2種類のものがあります。
- 連続強化
- 部分強化
それぞれ簡単にチェックしておきましょう。
- 連続強化とは
オペラント反応1回につき強化する操作、つまり、ハトがボタンを押すたびにエサが出てくる操作のこと。
- 部分強化とは
オペラント反応の回数や時間によって強化する操作、つまり、ハトがボタンを押しても毎回エサが出てくるわけではなく、ランダムでエサが出てくる操作のこと。
またスキナー箱実験の結果では、つぎのこともわかりました。
条件づけ(ボタンを押すとエサが出てくる)のあとで強化(エサを出す)をやめると、ハトの反応はしだいに生じなくなって「消去(ボタンを押さなくなる)」する。



エサが出なくなれば、ハトもボタンを押さなくなるわけですね
ところが、ここであるイレギュラーが起こりました。
なんと、ハトにあらかじめ部分強化で条件づけをしておくと、強化(エサを出す)をやめても反応は消えず、反応(エサを出そうとする)が持続することがわかったのです!



どういうことだ?
ようするに、
「ボタンを押すとランダムでエサが出てくる」
これを知ったハトは、エサが出なくなってからも、エサがほしくてボタンを押しつづけたということ。
この、エサが出なくなってからも出そうとする持続性は、「消去抵抗」とよばれています。
オペラント条件付けとギャンブルの関係
情報が出そろったところで、ここまでの話をいったんまとめましょう。
- 実験で「スキナー箱」に入れられたハトは、ボタンを押せばエサがもらえると知り、みずからボタンを押すようになった
- その後、ボタンを押してもエサを出さないようにすると、ボタンを押すたびにエサをもらえていたハトはボタンを押さなくなった
- 一方、ランダムでエサをもらえていたハトは、それでもまだエサが出てくるかもしれないと信じ、ボタンを押しつづけた
私がなにをいっているかは、もうお気づきですよね?
- ボタンを押す
- レバーを叩く
- ハンドルをひねる
そうすると、ランダムで出てくる報酬(ボーナス)という名のエサ。
渋い調整によって、報酬(出玉)なんてほとんど出ないにもかかわらず、台に座ってギャンブルをつづける私たち人間……。
そう、パチンコは現代版スキナー箱、いや人間版スキナー箱なのです!



……!!!
なぜ、人はパチンコなどのギャンブルにハマってしまうのか?
- 当たればお金が増える
- 増えたお金でぜいたくができる
- 好き放題遊べる
それは、ギャンブルによって、こういった「条件づけ」がすんでいるから。
そしてその条件づけが、
- たまにしかこない当たり
- まれにしかおとずれない特化ゾーン
- めったに出ない大量出玉
と、このとおり反応が持続しやすい「部分強化」のほうで条件づけられてしまっているからなのです!



箱の中に入れられたハトがかわいそうだよ
そう感じるかもしれません。
でも、考えてもみてください。
- 両サイドにじゅうぶんな間隔もなくならべられたパチンコ台
- そこに、それぞれが窮屈そうに座っている
- 目の前にある台のボタンなりを、1日に何千回とひたすら押しつづける
そんな、私たち人間のすがたを。
私たちも、空を飛ぶ自由を奪われ、せまい空間に閉じ込められたハトと、じつはたいして変わらないのはないでしょうか?
パチンコをする人の依存の心理(部分強化の例)
このとおり、パチンコによって「条件付け」がすんだ私たちは、いってしまえばスキナー箱の中に入れられたハトとおなじようなことになっています。
ただ、まだしっくりこないかもしれません。
そこでここでは、部分強化を「現代のパチンコ」にたとえて、パチンコをする人の心理を考えてみましょう。
- 新台価格の高騰
- 遊技人口の激減や設備投資の増加
- 景品をいくつかの業者間でまわす「三点方式」の手数料
など、パチンコ業界を取り巻く環境は、年々きびしさを増しています。
かつてはパチンコで勝てた時代もたしかにありました。
だからこそ、いわば勝てる「連続強化」で条件づけられた人たちは、もう以前のようには勝てないことをさとると、つぎつぎとパチンコ店からは去っていきます。



ところがどうでしょう
そういった時代のあとからやりはじめた人などは、ごくまれに勝てる「部分強化」で条件づけられてしまい、パチンコから抜け出せません。
プレーヤー側がうるおっているわけではけっしてないでしょう。
それでも、
- いつかまた勝てる
- いつかまたごほうびが出てくる
そう信じ、私たちはパチンコ店に行く。
新たなオアシスの可能性は見ず、飢えても、渇いても、ただひたすらにボタンを押しつづける。
なぜなら、いつかふたたびお金(エサ)が出てくる、と信じているから……!



これがパチンコにハマる心理です
パチンコはそれ以外にも、当たりの確率が絶妙に設定されているなど、人がハマる「心理的な仕掛け」がほどこされています。
最初からハマるようにできていて、なおかつそれは「時代とともに凶悪化してきている」と、いってもいいのではないでしょうか?
部分強化を逆手に取る方法はあるか?
パチンコは人がハマる心理を突いてくるので、やりつづけていれば、パチンコ店に閉じ込められるのは時間の問題ともいえます。
とはいえ、「いちどハマってしまえばもう二度と抜け出せないのか」というと、けっしてそんなことはありません。
パチンコが使ってくる「部分強化」を知り、それを逆手に取ることで、ギャンブルへの依存を断ち切れたりもするからです。



で、その方法はなんだ?
これは「達成がむずかしいことに挑戦してみる」ことだと、じっさいにパチンコから抜け出せた私は考えています。
たとえば、語学学習といった勉強の場合で見てみましょう。
- 勉強を始めたてのころは、まったくわからない、まるで聞き取れない
- ところが、勉強をつづけているうちに「このフレーズはなんかわかった」が起こる
- ためしに海外に行ってみたら「意外と言葉が通じた」なんてこともある
このように、無理だと思っていたものが、ほんのちょっとだけ進展する。
そういったまれの報酬が部分強化となり、モチベーションをアップさせてくれるなど、パチンコで勝つよりも大きな感動を生んだりもするのです。
とはいえ、いきなり病的なパチンカーが語学を勉強するかというと「まずしない」と思うので、より実践的なものを最後にご紹介します。
1. パチンコに行かない努力をする


パチンコ店という箱の中から抜け出したいのなら、まずは「パチンコに行かない努力」をしましょう。



そんなのいつもやってるよ
と、思われるかもしれませんが、私が思うに、多くの人はやっているのではなく思っているだけ。
やめようと頭のなかで考えているだけで、じつはなにもしていないからこそ、だいたい3日もすればまたパチンコに行ってしまうのです。
パチンコ店に行かないようにする方法は、すぐにできるものから強力なものまで、いくらでもあります。



これは当ブログでもご紹介しています
1週間に1回はかならずパチンコに行っている。
そんなときは、最初の1週間を耐えられれば、ふだんならまず感じられない達成感を得ることもできると思います。
さらには、それが自身への報酬として部分強化となり、禁パチンコの持続を助けてくれもするでしょう。
なにから始めればいいかわからないときは、まずは危険な休日から行動を起こしてみてください。
休日は「昼寝」をして、パチンコ店に行く時間を「強制的に消去」してしまう方法が手軽でかなり有効ですよ。
休日は思考(時間)を「消去」せよ
一人でもできる禁パチンコ方法はこちら
2. 借金がある場合は返済生活を工夫する


借金があるのなら、この問題を片づけてしまいましょう。
借金があるとないとでは、パチンコをやめるための難易度が大きく変わってきます。
その存在が、私たちをパチンコ店へといざなう、強力な誘引剤となるからですよね。



カードがあると簡単にお金を借りてしまうんですよね
だからこそ、借金がある場合は、それをさっさと完済しなければなりません。
ただ、返済生活はほんとうにつらいので、それを継続させるには、なんらかのごほうびがなければむずかしいといえます。
そこで、こんなのはどうでしょうか?
- 毎月27~31日のあいだにトランプのカードを2枚引く
- ジョーカーは0、1~13はそのままの数字でカウントし、合計の数字を出す
- カードの合計である1~26日のどれかは、好きなことやしたいこと(もちろんギャンブルはなし)にお金を使う
がんばった自分へのごほうびをランダムにすることで、部分強化の要素を踏襲し、毎月おとずれるボーナスタイムを日々目指す。
これで、つらい返済生活をなんとか乗りきるのです。



なかなか面白そうだな
なにかを継続させるには、息抜きは絶対に必要です。
これがうまくできないと、たいていは借金の返済は失敗し、またパチンコに行くようになってしまうからです。
自分への報酬を用意するなどして失敗をふせぐ。
このようにして、借金がある場合は、ぜひとも完済を目指してください。
もっとも、借金の額によっては、そんな悠長なことはいっていられないと思います。



ほとんど利息だけしか返済できていない、とかですね
高額な利息が発生するなど、借金はあるだけでお金が減っていきます。
ですから、借金問題がどうにもならずに困っているときは、借金自体を減らす方法もあるので検討してみてください。
過払い金がある場合はそれを返還してもらうことで借金を減らせます。ただし、こちらが「返してくれ」といわなければなかったことにされてしまうので、注意が必要です。
シミュレーターを利用すれば、そういったことを無料で(電話でくわしく)教えてもらえます。
自力での返済がきびしいときは、先延ばしにするだけお金がもったい+損をする可能性があるので、確認だけはしておくのがおすすめですよ。


自力で借金を返済するコツ
パチンコ以外の趣味をつくろう!
3. 自力でお金を稼ぐことに挑戦してみる





仕事よりも自分の時間を優先したい……
など、現代は大副業時代に突入していますが、その流れに乗って「ブログを副業として始める」のもおすすめできます。
ブログを運営してお金をかせぐのは、はっきりいって簡単なことではありません。
「1年間はほぼ無給を覚悟したほうがいい」とよくいわれるほど、最初は無理としか思えないものだからです。



正直、私もいばらの道を歩んできました
ただ、そんななかでも、ちょっとした進展があったりもします。
さらには、とんでもない「まぐれ噴き」があることも事実です。
そして、そういった日々の進展や偶然が部分強化となって、パチンコよりも副業のほうにのめり込ませてくれたりもするのです。
変な話、私はこの条件づけによって、
- またブログが噴くかもしれない
- これはとんでもない可能性があるぞ
と、おなかがすいたハトのように、パソコンのキーボードを日々叩きつづけています。
これぞまさに、部分強化のたまものといえるでしょう。
副業としてのブログは、やろうとする気さえあれば、すぐにでも立ち上げられます。
初期投資も1万円以内に余裕でおさえられるので、気軽にスタートできますよ。



いっしょに頑張りましょう!
今回のまとめ
- 部分強化はランダムで出てくる報酬のこと
- 部分強化によって条件づけられた反応は持続する
- 部分強化を逆手に取ってパチンコへの依存を克服しよう
スキナー箱のスキナーは、この有名な実験結果にもとづき、「行動分析学」という学問体系をも創始しました。
この行動分析学は、医療・ビジネス・家庭など、さまざまな現場で成果を上げている学問です。
なかでも「応用行動分析」という分野は、ギャンブル問題をふくむ精神的な病気にたいしても活用されています。
なぜ私たちはパチンコ店に行くのか。
本記事でも解説したような「ギャンブル問題を解決するカギ(根本の理由)」はここでも知れます。
入門書も出ているので、興味があったらぜひのぞいてみてください。
また先のとおり、パチンコ以外で達成感を得られれば、それが部分強化となって禁パチンコを助けてくれると私は思っています。
そして、このような部分強化を生むのは例外なく、なにかに挑戦して、なにかを達成できたときだけです。



挑戦なくして報酬を得ることはできません
それに、報酬はパチンコ店の中にだけあるわけではないですよね。
そう、パチンコ店の外のほうにこそ、たくさんのエサがあるんですよ。
負けたままやめられなくなる心理
パチンコへの依存は脳の変化もある
パチンコ依存問題の解決策まとめ
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