コブタの通院(その2)平衡感覚の検査再び、蘇るトラウマと漢方薬

ついに精神科での治療が始まったトンちゃんでしたが、処方された薬の効果のなさに不信感を抱き、次第に薬を飲まなくなってしまいます。

初めて受診した精神科の医師は非常に高圧的で、患者の意思を全く尊重しない人だと感じたトンちゃんは、やはり最初から相談にのってくれていた職業カウンセラーの先生が院長を務める精神科の病院に行くことにするのでした。

コブタのトラウマ再び

自宅からは少し遠かったのですが、やはり信用できる先生がいる病院に行こうと思い、トンちゃんはハローワークで職業カウンセラーもしている先生がいる病院を受診することにしました。院長先生に診察してもらうと通常の診察料に加えて1回8~9千円ほどの特別料金がかかるため、院長先生には病院の医師に話を通してもらい、他の先生に診察してもらうことになりました。

コブタのトラウマ

初回診察時、先生からはめまいなどの身体症状は精神的なものが原因なのか、それとも平衡感覚を司る器官に異常があって起きているのか判断できないため、もう一度大きな病院で検査してきてほしいとトンちゃんは言われました。もし精神的なものが原因で起きている場合はこちらの病院で引き受けますとのことだったため、トンちゃんはもう一度平衡感覚の検査をしなければならなくなってしまいました。

実はトンちゃんの中でトラウマとして記憶に焼き付けられた恐怖体験の一つにこの平衡感覚の検査があるのです。視界を遮断され何も見えない暗闇の中で平衡感覚を調べるために耳の中に水を入れられます。すると次第に頭がグルグルと回りだし、まるで奈落の底に突き落とされるような感覚と恐ろしさに幼い頃のトンちゃんは泣き叫びました。その光景はお母さんが検査に連れてきたことを後悔したほどのものだったそうです。

しかし検査を受けなければ精神疾患の治療を受ける事ができません。トンちゃんは気が進まないながらも仕方なく検査を受けに行くことにしますが、一人でトラウマとなった検査を受けに行くというのはあまりにも心細く不安だったため、ここでも私が呼び出され検査に同伴することになりました。

コブタの検査

検査してもらうのであれば今後同じ検査をしなくてもいいようにしっかりとやってくれそうな病院へ行きたいということで、トンちゃんと私は東京大学付属病院のめまい外来へ向かいました。トンちゃんはそこで赤外線カメラを目につけて頭を傾けたりする「頭位眼振検査」を最初に受けることになります。
検査の準備が行われる中、ちょうど同じフロアの奥で同様の検査をされている方が私の目に入りました。大の大人が奥さんと思われる方の手を強く握り、おそらく暗闇の中で頭が回る恐怖に耐えていたのです。

この検査はそれほど恐ろしいものなのか……
実際に私は受けたことがないのでわからなかったのですが、大の大人がそのようになってしまうのであれば、それほど恐ろしいものなのでしょう。そして準備が整いトンちゃんの検査が始まりました。
トンちゃんはカメラを付けた瞬間から呼吸が乱れ、検査が進むにつれて手足が痙攣したように震えだし、しまいには過呼吸のような状態になってしまいます。幼い頃トラウマとなった検査がトリガー(引き金)となり、フラッシュバックを引き起こしてしまったのです。

その時、私には見守ることしかできませんでした。

コブタの漢方

なんとか最初の検査を終え、他にも大丈夫そうな検査をいくつか受けた結果、やはりトンちゃんの体の器官に異常は認められませんでした。問題の耳に注水する「温度眼振検査」は、これまで行った検査の結果から見てもする必要がなく、精神的な傷を広げるだけになってしまうのでしなくて大丈夫と先生に言われ、昔から悩まされているめまいなどの身体症状は精神的なものが原因と考えられるという診断書を貰いました。

この診断書を精神科の病院へ持っていき、ついに投薬による治療が始まります。
二軒目となるメンタルクリニックでは「不安障害」と中でも「パニック障害」が強いとの診断が下されました。トンちゃんは一軒目の病院で大量の薬を無理矢理飲まされそうになった経験から薬に対する不安や不信感は以前よりも増していました。そこで先生に副作用も少ない漢方薬から始めてみてはどうかと勧められ、漢方薬であれば自然由来の物なので安心して飲むことができそうだと思い、トンちゃんは立ちくらみ・めまい・ふらつきなどに効果があるとされる「苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)」を処方されることになります。

漢方を飲み始めてから3カ月、特に効果は感じられませんでしたが、先生は長い時間をかけてゆっくりと効いてくるから飲み続けるのが大事だと言いました。
半年が経ちましたが、それでも特に体調の変化は感じられません。次第に飲んでも特に効果を感じられないため薬を飲み忘れることが多くなっていきました。
飲み忘れた分の薬は溜まっていくため、その都度診察の際に薬が溜まっていることを先生に伝えると、返ってくる答えは決まって「飲み忘れても大丈夫」というものでした。トンちゃんは思います。飲み続けても効果がなく、飲み忘れても大丈夫ということであれば、そもそも飲む必要すらないのでは……

それからさらに半年間、合計で約一年間先生の言う通りに漢方薬を飲み続けてきましたがやはりめまいなどの身体症状が改善することはなく、不安障害などの精神疾患にも変化はありませんでした。
トンちゃんは、病院へ行くのをやめてしまいました。

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