コブタの通院(その4)依存する向精神薬、希望から変わる「絶望の薬」

向精神薬での依存によりトンちゃんは自分でもどうすればいいのかわからず、家族の前で事件を起こしてしまいます。

ついに向精神薬での治療が始まります。初めの内は少ない量から始まりましたが、次第に薬の量は増えていき、トンちゃんは薬なしでは生活できない体になってしまうのでした。

コブタの精神疾患治療

副作用を受け入れトンちゃんは向精神薬での治療を始めることを決意します。
処方されることになった薬は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という種類の抗うつ薬、抗てんかん薬という種類の気分安定薬、2種類の抗不安薬(精神安定剤)、合計4種類の薬を用いて治療を進めていくことになりました。

コブタと向精神薬

薬を飲み始めてから顕著に表れた変化はやはりトンちゃんの名前の由来にもなっている体重の増加です。トンちゃんは向精神薬を飲み始めてからみるみる太っていきます。特に食生活が変わったり食べる量が増えたというわけではなかったのですが、トンちゃんは日々確実に肥えていきました。その他にも手足の震えや、眠気、倦怠感や脱力感といった副作用がありました。
精神的な浮き沈みやめまいなどの身体症状は薬が効いている間は多少は改善されている実感はありましたが、それらの症状は完全になくなるわけではありません。薬を服用していても体調が優れない、気分の浮き沈みが激しいといったことは多々あり、そのことを先生に相談すると薬を増やしてみましょうということで薬の量が増えていきます。

気付けば、トンちゃんが毎日飲む薬の量は最初に処方されていた量の2~3倍ほどになっていました。薬がなくなりそうになると不安で居ても立っても居られない、薬がないと不安で外に出られない、薬を飲み忘れて寝てしまったら目覚めないでそのまま永遠の眠りについてしまうんじゃないか。薬、薬、薬、薬……
トンちゃんは薬無しでは生活できない体になってしまいました。

コブタの入院

トンちゃんは次々と増やされていく薬を見て、自分はこのまま薬漬けになっていくんだ、一生薬を飲み続けないといけないんだと、ぼんやりと思っていました。薬が増やされていくことに疑問を抱くほどの力もなく、トンちゃんはただ先生に従うだけの操り人形のような状態になってしまっていたのです。
薬を沢山飲んでいるおかげでなんとか生活できているなどということはなく、むしろ薬が増えれば増えるほど向精神薬への依存は高まり、精神状態も不安定になることが増えてきていました。

そのような状態でもアルバイトは生活のためになんとか続けていましたが、やはり精神状態からして無理があったのでしょう。トンちゃんはある日、急激な吐き気を催し病院に運ばれ、急性胃腸炎で3日間入院することになってしまいます。
アルバイト先からは退院しても暫くゆっくり休んでいいと言われ、トンちゃんは療養のため数日間実家に帰ることにしました。

精神疾患と家族

トンちゃんが実家に帰ったのにはもう一つ理由がありました。それは、両親に精神疾患の事を話すため。
実はトンちゃんはお父さんだけには精神科の病院に通っていることを話していましたが、当初お父さんから返ってきた言葉は、
「家族には秘密にする。自分の娘が精神科にいっているなんて恥ずかしくて人様に言えないし、お母さんもそれを知ったら気がおかしくなるだろうからお母さんにも言わない」
というものだったのです。
しかし徐々にですがお父さんは病気のことを理解しようとしているように感じ、そろそろお母さんにも話したいと思い、トンちゃんは実家に帰ったのです。
自分一人で病気のことを抱えるのは、トンちゃんには辛すぎました。

コブタの会議

実家に戻り、両親と三人で話す場が設けられました。
現在病院に通っていて薬を飲んでいる事を話すとお母さんは信じられないといった様子で怒りをあらわにしました。

「なんで病院になんか行ってるの!?薬なんて飲む必要はないし、薬なんて飲まなくたって普通に生活できるでしょ!そもそも自分の考え方が甘いだけで、あなたは病気だなんだと言い訳をして甘えてるだけでしょう!絶対におじいちゃんおばあちゃんには言わないで、二人ともショックでしんでしまうから」

トンちゃんも負けじと言い返します。

「そもそも私が今こんな状態になっているのは、お母さんが子供の時病院で検査したあとちゃんと治療を受けさせてくれなかったせいでしょ!?病気の辛さも分からないくせに甘えだとか簡単に言わないで!」

その後もお互いが主張を繰り返し、話は堂々巡りで全く先に進みません。トンちゃんは泣きながら必死に食いついていましたが、間に挟まれていたお父さんについに我慢の限界が来てしまいます。

「悪いけどやっぱり甘えてるようにしか聞こえない。生き方が弱いから、精神的に弱いから薬に頼る。このままこの場にいたら甘ったれたことばかり言っているあなたを引っ叩いてしまいそうだからお父さんはもう何も話したくない」

しびれを切らしたお父さんはその場からいなくなってしまいました。そしてお父さんを追うようにお母さんも出て行ってしまいます。
トンちゃんはその場に一人、取り残されてしまいました。

失意のコブタ

両親は病気のことを理解してくれませんでした。一番理解して欲しかった人に自分の存在を否定され、その場に取り残されたトンちゃんはもうどうしたらいいのわかりませんでした。生きる理由も、もう見当たりませんでした。
トンちゃんは泣きながら持っていた薬を一粒ずつシートから取り出してテーブルに並べ始めます。あるだけの薬を全て並べ終えるとそれを一思いに口の中に放り込みました。

「ちょっとあんた、何してるの!?」

心配して戻ってきたお母さんがテーブルの上に散らばった錠剤のシートを見つけ、急いでトンちゃんの口から薬を吐き出させます。幸い飲み込む寸前だったので大事には至りませんでしたが、危険な状況であったことは言うまでもありません。

これ以上病気や薬のことを家族に秘密にしておくことはできない。
この事件をきっかけに、家族皆がトンちゃんの病気のことを知る事になるのでした。

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