開店前のパチンコ店に朝から並ぶ大人を見たときの衝撃は今でも忘れない

パチンコ店に朝から並んでいる人を初めて見たとき、この人たちはなにをしているんだ? と本気で思いました。

開店前のパチンコ店に長々と列をつくって並ぶ大人たち。

ダンボールなどを敷いて地べたに座り込んだり、飲み物や雑誌だけを置いてどこかに行ってしまったり、なかには平然と割り込む無法者もいたりするなど、その光景はまさにカオスとしかいいようがないものがありますが、結局のところ彼らはいったいなにをしているのでしょうか。

これは、知っている方からすればなにをいまさらですが、彼らはパチンコを打つために朝から(場合によっては深夜から)開店を待って並んでいるのです。

それでは、なぜそこまでしてパチンコを打つのか、開店前から並ぶことにはなんの意味があるのか、そして、こういった大人たちを見て、一度はいい意味ではない衝撃を受けた私が、のちにその列に加わることとなった話でも今回はしたいと思います。

なぜパチンコ店に人は朝から並ぶのか

そもそもなぜ朝から並んでいる人がいるのかというと、いい台、つまり勝てる可能性が高い高設定台(とくにスロット)を確保するためです。

ひと昔前では、台に設定を示唆するサカナの札(サメ=4、エビ=5、アンコウ=6など)が刺さっていたり、ゾロ目や1のつく日など、店舗独自のイベント告知がHPや店先でおこなわれていたり、当たっている状態からスタートできる「モーニングサービス」があったりと、さまざまな客寄せがおこなわれていました。

とくにイベント日は、「お客さんが勝ちやすい設定などが投入されている日」ということですから、パチンコで勝つためには、かぎられたいい台を人よりも先に取らなければならない、逆にいうと、朝から並ばなければ話にならなかったため、パチンコ店には人が並んでいたのです。

この、いい台を取るため、パチンコで勝つため、という本質的な理由は、いまも変わってはいません。

現在は、風営法による広告宣伝の規制強化によって、この台が出ますよとか、この日は出やすくしますよといったイベントの告知などは、実質的に禁止となっています。

ところが、店舗内ではそれとなくお知らせがされていたり、旧イベント日ということで知っている人たちが集まったり、あるいは第三者がイベント情報をまとめたりしているので、結局はいい台を取るために、現在もぞろぞろと並ぶ人があとを絶たないのです。

なお、開店後の入場方法は、並んだ順番に抽選くじを引いてもらい、くじの番号の早い順から優先的に入場できるという方式が一般的で、近年ではこの並ぶ手間などを省くため、アプリで並ばずに抽選を受けられるようなものも登場しているのですが、抽選はなしで並んだ順番から入場できるというパチンコ店もあります。

そうなると、早く並んだ順にいい台を確保できる可能性が上がるため、勝ちたい人は朝どころか、閉店後の夜11時ごろから翌日のために並んだりすることもあるのです。

わざわざ県外から遠征までして並ぶ人がいたり、朝から数千人が並ぶパチンコ店もあったりと、いまだにパチンコ店の並びはよく見かけますが、そういった朝から並んでいる大人たちを初めてみたときの衝撃を、私はいまでも忘れません。

朝から並ぶ大人を見て衝撃を受けたときの話

これは、忘れもしない、私がまだ10代だったころの話です。

当時の私は大学受験で東京を訪れ、見知らぬ街にとまどいながらも、朝から試験のために大学へ向かっていました。拠点から最寄りの駅まで移動し、そこからは徒歩で受験校を目指していたのです。

そんなとき私は、途中でなにやら行列ができているのを見つけました。

湊
ミナト(10代)

東京は朝からすごいな、なにをしているんだろう

その並びは数百人規模で、どうやら入り口付近だけでは収まらず、建物のまわりをぐるっと囲むようにして人が並んでいるようでした。

あまりの人の多さに、これはいったいなんなのかと少し気になった私は、試験会場までの道順だったこともあって、その並びができているお店をのぞいてみることにしたのです。

……が、そこはパチンコ店でした。

平日の朝早くから通勤する人が行きかうなかで、かたや私はこれから大学受験というなかで、朝っぱらから遊ぶためにパチンコ店に並んでいる大人たち。

本人たちは勝つためでしょうが、そんなことは知ったことではなかった私は、こう思ったのです。

終わってるな、この連中は……と。

平日なのに仕事はどうした? いい大人が朝からこんなところに並んでいて恥ずかしくはないのか? 道を教えてくれる人も少ないし、終わってるな東京って街は……

仕事は人それぞれなのでそれはべつにいいとしても、これから入試という張り詰める思いのなか、私はなにか見てはいけない縁起の悪いものを見てしまったような、ひどく不快な気分になってしまったのです。

東京の人は道を教えてくれない

ところで、当時はまだスマホなんて便利なものがまだなかった時代でしたから、土地勘のない人間にとって、まだ行ったことがない目的地に向かうということは、なかなかむずかしいことでもありました。

紙の地図を片手に歩いても、いま自分がどこを歩いているのかわからなくなることもあります。GPSなんてものが普及するのはまだ先の話だったからです。

そこで、東京を下見していた私は、わからないので道を通行人に何度が尋ねようとしたのですが、これがことごとく無視。うわさに聞いていたとおり、東京の人間は道を教えてはくれませんでした。

しかし私はあきらめず、動物好きに悪い人はいないと、犬の散歩をしていた女性に目的地までの道を聞いたのですが、これは教えてくれないどころか、なんとかして私がたどり着いたその場所に、そのオバサンと犬がいたという出来事があり、東京はドライな街だなと痛感したのです。

これが、パチンコの並びを見た私が、「東京は終わっている」と感じたもう1つの理由です。しかも結局、その日受験した大学は落ちました。

その後自分も連中の1人になった

それからほどなくして、晴れて大学生となった私は、しだいにパチンコにのめり込んでいくようになり、なんとも情けない話ですが、いつしか私自身もそのなかの(朝から並ぶ連中の)1人となってしまいました。

雨の日は傘をさして朝から並び、風の日は強風にあおられながらいつもいる連中と肩を並べ、雪の日は凍える手をポケットに突っ込みながらパチンコ店が開くのを待ちました。

平日には登校する学生、仕事に行く社会人から刺すような冷たい視線を浴びせられ、休日にはデートに行くカップルや、街に遊びに来た若者、親子連れから、「なにあれ?」と後ろ指をさされました。

皮肉なもので、かつての受験生だったときの私が、朝からパチンコ店に並ぶ連中に向けた視線と同じ視線が、今度は自分に対して向けられていたのです。

とくに、なにも知らない子どもが、純粋に「あの人たちはなにをしているの?」と、お母さんやお父さんに聞いている、その話が耳に入ってきたときが、いちばんつらかったかもしれません。

お父さん
お父さん

何をしているんだろうなぁ。う~ん、「何もしていない」んじゃないかな? おまえはあんな大人になっちゃダメだぞ

そんな会話が聞こえてくるようでした。

パチンコ店の並びから離脱しよう

パチンコなどにのめり込む「ギャンブル依存症」の恐ろしいところに、かつては自分が憎んだ存在に、自分までもがなってしまうというものがあります。

初めてパチンコ店の並びを見たあの日、私は憎しみというよりも、情けなさや怒りに近い感情を覚えました。ところが、自分がその恥ずべき存在になってしまっていても、後ろめたい行為をしてしまっていても、依存する対象の前には、そんな感情はなんの力も持たなくなってしまうのです。

街ゆく人々から冷ややかな視線を向けられながらでも、いい台に座るために朝からパチンコ店に並ぶ。

もし、これがそうしたくてしているわけではない、本心からの行動ではないのであれば、初めてパチンコ店に並んでいる人を見たときのことを、一度思い出してみてください。

あそこにいた連中の1人になりたいと思いましたか? 朝から並んでパチンコをすることがいまでも楽しいですか?

生活を切り詰め、ぜいたくもせずにコツコツと貯めたお金を持って朝から並び、すべてを搾り取られて帰ってくるような生活はもういいでしょう。どうせなら1時間、2時間並んでも満足して帰ってこられるようなところに並んだほうが、並んでいるあいだも有意義な時間になると思いますよ。

今回のまとめ

・パチンコ店に並ぶ人は勝つために並んでいる
・並ぶ人に送られるのは冷ややかな目線
・あそこに並ぶ大人はなにもしていないのかもしれない

人からどう思われようが関係ないという考え方ももちろんあるとは思いますが、とくにギャンブル依存症の方にとっては、この朝から並ぶという行為は危険以外のなにものでもありません。

なぜなら、せっかく朝から時間をかけて並んだということもあって、狙っていた台が外れた場合でも、そのまま運だけでなんとかしようとしたり、ほかの人が捨てていった低設定らしき台に移動して、結局は気がすむまで(お金が尽きるまで)打ち続けてしまったりするからです。

狙いが外れたらいさぎよく立ち去るということは、依存者でなくてもとてもむずかしいことです。であれば、最初から並ばなければそんなことも起きないので、やはりパチンコ店には並ばないほうがいいということです。

抽選でいい番号を取ること、いい設定の台に座ることに労力を使うのであれば、パチンコをやめることに力を使ったほうがいいですよ。

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