ギャンブル依存症で作った借金を500円玉貯金で一撃返済しようとした結果

返済するからこそまたお金が借りられる。それなら、借金の返済を止めてしまえばいいのではないか、と思われたのです。

当時、パチンコ依存症による借金にまみれていた私は、お金を返しては借り、返しては借りを延々と繰り返していたのですが、まるで終わりが見えない借金地獄に苦しめられるなかで、この現状を打破するための策を思いつきます。

それは、あえて借金は返済せずに貯金箱にお金を貯めていき、最大まで貯まったところでそれを借金の返済にあて、一気に借金を減らす、もしくは完済するという「一撃返済計画」でした。

借金を返済することによって借入可能額が増え、またお金が借りられるようになる。つまり、この借入可能額こそが借金地獄の元凶であり、返済という行為は、地獄の門をみずから開く行為だと私は考えたのです。

はたして、この妙策ともいえる作戦は、実を結んだのでしょうか。

利息を無視した捨て身の策略

ギャンブル依存症によってパチンコの呪縛にとらわれていた当時、私が最も苦しめられていたのが、最大で120万円ほどあった借金問題でした。

ほとんど休むこともなく、朝も夜も働き、給料の大半は借金の返済につぎ込む毎日。しかし、カード(消費者金融)の「利用可能額」が増えてしまうと不思議なもので、返済したお金は自分のものだ、また借りてもいいんだ、と感じるようになってしまい、ふたたび借り入れをしてしまうのです。

とくにこの現象の恐ろしさは、少し返済がうまくいき始め、利用可能額がある程度まとまって空いてきたときにこそ起こりやすいところにありました。

利用可能額の増加に比例して、このお金でパチンコに行ける、という思いが加速すると、「どこからもお金が借りられないから行けない」という絶対的な防壁は決壊。パチンコに行き始め、ふたたび借金の元本は借り入れ限度額まで戻ってしまい、返済生活も振り出しに戻ってしまうのです。

それはまるで、借金生活という長い暗闇から脱出できる出口を、やっとの思いで見つけたと思ったら、向こう側から何者かによって蹴っ飛ばされ、またしても暗闇の奥底に転げ落ちていくような感覚でした。そして、これが、延々と繰り返されるだけ。

まさに無限に続く、泥沼の借金地獄でした。

ところが、そんな地の底だけを見続けていたある日、私の目の前を覆う暗闇に、一条の光が差し込みました。そしてその光は、地の底ではいずりまわっていた私に、あるとんでもない発想を授けたのです!

返済することで利用可能額が増えて気がゆるむのであれば、そもそも借金の返済をしなければいいのではないか……? と。

肉を切らせて骨を断て

ついに私は、借金まみれの現実を前にして気が狂ってしまったのかというと、けっしてそんなことはなく、当然ながら、借金から逃げようなどということを画策したわけでもありません。

私が閃いたのは、ある種の逆転の発想で、借金の返済によってパチンコへの衝動が大きくなるのであれば、返済は必要最小限に抑えて元本を減らすことは考えず、あえてお金は別の場所に貯めておくことにし、機が熟したところで、一気に借金を返済するというものでした。

別の場所に隠しておいたお金に手をつけることがなければ、借金はつねに限度額となっているため借り入れはできず、パチンコに行くことができません。けれど、お金は貯まっていっているため、実質的に借金の返済は進んでいることになるわけです。

もはやこの作戦には、成功するビジョンしか見えませんでしたが、しかし、この作戦には、非常に大きな欠点もありました。

それは、元本が減らない分、利息分の金額を無駄に垂れ流すことになるということ。

この作戦を思いついた当時は、消費者金融から勝手に限度額を下げられたこともあって、借金は60万~70万円くらいにまで減っていたと記憶していますが、月の利息はおおよそ10万円あたり1500円なので、まるまる元本の分で、月に1万円ほどは無駄に消えていくことになってしまいます。

とはいえ、このままふだんどおりに返済をしていても、泥沼の借金生活から脱出することはできないのは、これまでの経験からしてあきらかでした。

このふざけた現状を打破するには、利息を犠牲にしてでもお金を貯め、貯まったところで諸悪の根源である借金を大幅に消し去るしかない。

そう思った私は、まさに肉を切らせて骨を断つ作戦で、借金の完済を目指すことにしたのです。

BANK MAX作戦が始まった

500円玉貯金箱

今回の作戦で、私がお金の隠し場所として選んだのは、100均で売っているふつうの貯金箱でした。

この作戦の要となるのは、それをやってしまうと利息が無駄になってしまうため、絶対に返済用の貯金には手を出さないことでしたが、それならば貯めるお金は、そのままではパチンコやスロットには使えない硬貨のほうが望ましいと思われたからです。

このタイプの貯金箱であれば、すべて500円玉で、MAXまで貯まれば30万円。1箱貯まれば借金総額は約50%になり、2箱までいけば、借金はほぼチャラになります。

500円玉で50万円、100万円といった、さらに上のタイプもあったようですが、近場にはそういった大きいものは見当たらなかったので、私はこの500円玉貯金箱で借金完済計画、名づけて「BANK MAX作戦」を開始したのです。

すべて500円は意外ときつかった

それからというもの私は、買い物などの際にはできるだけ500円玉のお釣りをもらうようにし、できた500円玉はせっせと貯金箱に。ところが、これがなかなかうまいこと進んでいきません。

単純に考えて、500円玉で30万円貯めようとすると、600枚の500円玉が必要になるわけですが、買い物に行く回数が1日1~3回程度であれば、500円玉はできてもせいぜい1~2枚がいいところで、思ったよりも500円玉は増えていかなかったのです。

それに加えて、たとえば900円のお会計で500円玉をつくろうとすると、会計以上の1400円を出すという荒業を使わなければならず、それも気になることではあったので、私は途中から作戦の方針を変更。100円玉の貯金も解禁することにしました。

それ以降は、買い物はすべてお札ですまし、お釣りの500円と100円硬貨はすべて貯金箱へ。お金に余裕があるときでも、カードの利用限度額が増えるのを防ぐため、5千円や1万円を500円に両替して貯金箱に入れるなどして、硬貨貯金に専念しました。

そして、貯金を始めてからどれだけの時間が経ったのかは定かではないですが、ついに、その時は訪れたのです。

500円玉貯金箱、開封の儀

貯金を開始してからどれくらいの時間が経ったことでしょう。少なくとも、そう簡単にはここまで到達することはできませんでした。本作戦はいよいよ、最終フェーズに突入することとなります。

そう、念願のBANK MAXの時が来たのです……

なお、残念なことに、MAXになった際の写真は撮影できなかったのですが、これは貯金箱が満タンになったときに興奮した私が、すぐに貯金箱をハンマーで叩き割ってしまったからです。

これまでも何度か硬貨貯金に挑戦したことはありましたが、最大まで貯まることなど一度もなく、途中でいつもパチンコで負けたお金を補填するため、貯金箱は破壊されてきました。

しかし、今回ばかりは満を持して、私の貯金箱は開封されたのです!

貯まった100円と500円玉硬貨

手近にあった箱の中に入れてみると、その光景は、まさに金の山……

これはもう期待せざるをえません。ウン百円でウン十万円貯まる系の貯金箱というのは、全部貯めきると、だいたい表記されている数字以上になるものなのです。

はたして、これはいったい、いくらになっていたのでしょうか!?

10枚ずつ並べた100円と500円玉硬貨

10枚ずつ並べていくと、このようになりました。

100円玉のほうが多いような気もしますが、それに負けないくらい、500円玉も強い存在感を放っています。

22万円分の100円と500円玉硬貨

角度を変えて写真を撮りたくなるほどのすばらしい光景。

そして私は、開封の儀を堪能したところで、総額の計算に移行します。集計した硬貨貯金の枚数と金額は、以下のようになりました。

硬貨枚数金額
500円365枚18万2500円
100円395枚3万9500円
(合計)760枚22万2000円

やはり思っていた以上に100円玉が多く、そして100円玉は、占有していたスペースの割にはたいしたお金にはならず、合計22万円ちょっとという結果に。

1箱30万円の目標には届きませんでしたが、私はひさしぶりに、まとまったお金を確保することができたのです。それに、なにか新しいことを始めると、生活に変化は起きるもの。

貯金生活のあいだもパチンコには行ってはいたものの、ふだんの買い物でお金が減るスピードがやたらと早かったこともあってか、以前よりもパチンコに行く回数は減り、このまま順調に事が運んでいけば、借金の完済も夢ではないと思われたのです。

忍び寄る崩壊の足音

ギャンブル依存症による借金生活の苦しいところは、返したお金をふたたび使ってしまうため、完済というゴールがまるで見えないところにあります。

「一撃返済」を目的に始まったこのBANK MAX作戦は、当初の計画では貯金箱がMAXになったところでそれをすべてお札に両替し、返済にあてることでゴールにかかったモヤを取り払う、というものでした。

すぐにでもこの硬貨を持って銀行に行けば、本作戦はひとまず成功ということになります。が、いざ貯金箱が満タンになってみると、私の心境に変化が生じたのです。

湊
ミナト

ちょっとこれは、借金の返済に使いたくないな……

たとえるなら、べつに食に困っているわけでもないくせに、いたずらで畑を荒らす野生動物の気を引くため、大切に育ててきた野菜を、その畑の前に置きに行くような心境、とでもいったところでしょうか。

ようは、たしかに自分でつくった借金ではあるものの、パチンコが理由の借金なんてものに、時間をかけて大切に貯めた貯金を使いたくなくなってきたのです。

しかし、そうはいっても、借金を完済しなければ、パチンコの呪縛から解放されることも、真っ当な生活を取り戻すこともできないので、作戦完遂を目前にして、私は当初の計画を変更。

BANKのお金はそのままに、ペースを落として2箱目の貯金に突入し、借金の返済も通常どおり行っていくことにしたのです。

妙策、ここに破れたり

その後は、毎月の給料から借金の返済と、BANKへの貯金を平行して行い、借金の残高が貯金箱にある額と同程度になったら、一撃返済の作戦を完遂させようかと考えていました。

ところが、このへんからどうもあやしい気配が漂い始めます。

返済が進むことで利用可能額が増加していくと、それに伴って、パチンコへの衝動の加速が起こり始めたのです。

そしてその衝動は、大切に守ってきたBANKの貯金を、万が一のときの「保険」として考えさせるまでに急速に育っていき、私の足をパチンコ店へと向かわせました。

さて、この後の展開は、もうご想像がつくことでしょう。

ふたたびパチンコ店に入り浸るようになった私は、負けて生活が危うくなれば、ふたが開いている貯金箱からお金を取り出し、そのつど補填するようになりました。

パチンコで負ける、貯金箱からお金を取り出す、銀行で両替。

当初はそのお金に手をつけることには強い拒否反応があったものの、何度かこれを繰り返しているうちに思考は停止。最終的には、25万円ほどにまで増えていたBANKの貯金は、すべて消え失せてしまっていたのです。

いっぱいになった貯金箱を眺めながら、借金を完済できたら、海外旅行にでも行って好きなだけ遊びたいな、なんてことを考えていたりもしました。しかしその夢は、ギャンブル依存症によってもろくも崩れ去り、こなごなに散っていったのです。

こうして、貯金をしているあいだは無駄に利息を垂れ流し、犠牲を払って得た貯金もすべて消え、私はふたたび暗闇の底へと転げ落ちるという、なんとも悲しい結末を迎え、一撃返済計画は幕を閉じたのです。

今回のまとめ

・硬貨貯金作戦は利用限度額を増やさないという面では有効
・努力して貯めたお金は使用にためらいが生まれる
・貯金箱のふたは最後の最後まで開けてはいけない

この500円貯金による一撃返済計画は、あとちょっとのところで失敗に終わってしまいましたが、いま思えば、多くの収穫はあったようにも思います。

カードの利用限度額が増えなければ、それはパチンコへの抑止力になることがわかりましたし、努力して貯めたお金というのは、その努力に見合ったものに使いたいと感じるものだと思うので、ある程度の額が貯まっていても、そのお金でパチンコに行こうとはあまり考えません。

パチンコに使うお金も、ほかのことに使うお金も、使われるお金自体が持っている価値は一緒ですが、使う対象によっては、使いたいと思う気持ちやありがたみ、ようは「幸福度」がまるで変わってくるものだと思います。

私の場合、貯金箱の中にお金があるというのに、そのお金でパチンコに行こうとしなかったのは、依存症状さえなければパチンコは、人生に必要ないものだったからこその話だと思っています。

それと、貯金箱のふた。

たったプラスチック1枚だけのうすい板のようなものですが、これが開いているのと開いていないのとでは、お金の手のつけやすさに雲泥の差が出るような気がします。

この作戦はおそらく、1箱目のふたを開けず、2箱目もスピードをゆるめず、一撃返済ではなく一撃「完済」が可能な額まで到達していれば、成功していたのではないかと思います。

貯金箱のふたは、開ける前にどうするかを考えるなど、最後の最後まで開けないほうがいいのかもしれません。

私は現在、借金もギャンブル依存症もすべてない、自由な生活を手にすることができていますが、失敗は成功のもとということで、とにかくトライしていくことが大事なことのようにも思います。

やり方さえ間違えなければ、このBANK作戦も有効ではあると思うので、気になる方は試してみてもいいかもしれないですよ。

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