これは、以前私が勤務していたバーで、しかも最悪のタイミングで起こった、食い逃げ事件の話です。
- バーで私が無銭飲食の被害に遭ったときの話
途中でお金が足りないことに気づき、怖くなって逃げてしまった。生活苦などの理由から警察に逮捕されるために、わざと無銭飲食をした……。
イブスター店長そんな「食い逃げ」にまつわる話は、ときどき耳にしたりもするものだな
が、実際のところ、ほんとうにそんなことが身の回りで起こるのか?



私は学生時代のアルバイトも含めれば、10年以上飲食業界にたずさわってきました
当然そのような現場に出くわしたことは一度もありません。
正直、食い逃げなんてものは、都市伝説レベルの話だと思っていました。
そう、自分が被害に遭うまでは……。
これは、「酔っぱらってうっかり飲食代金の支払いを忘れてしまい、そのまま帰ってしまった」とかいう系統の話ではありません。
この記事では、私が長年勤務していたバーで起きた、明確な悪意を持った食い逃げ事件についてお話しします。


ミナト
元バーテンダー。現在は兼業ブロガーとして活動中。夢は海外放浪の旅にでること、自分のお店をつくること。ブログを通してひとりでも多くの方のお役に立ちたいと思っています。当ブログのコンセプトは「24時間営業の人生の休憩所」。>> プロフィール詳細はこちら
本日の1本


- カナディアンクラブ・ブラックラベル|カナディアンウイスキー
【ひと言】:CCの日本限定ラベル。8年以上熟成。ソーダ割や水割りとの相性バツグン



今回の件の人物が飲んでいたのがCC(カナディアンクラブ)だったそうな
食い逃げ詐欺?事件はバーで起きた


これは、私が初めて一人でお店を任されるという、記念すべき日に起きた話です。
当時の私は街のショットバーで働いていました。
そのときは、入店(勤務を開始)してからは日が浅く、バーテンダーとしての経験も不十分。
すべての業務を完遂できるレベルにはまだ達していない状態でした。



しかし、背に腹は代えられないということだったのだろう
深刻な人手不足という理由で私は、中途半端ながらも、店をひとりで任されることになったのです。
バーテンダーにとっては、非常に多くの経験を積めるので、これはとてもよろこばしいことでした。
けれども、そんな期待よりも、「ほんとうに大丈夫かこれ?」という不安のほうがまさる心境で、私はその日を迎えました。
緊張感高まる一人営業。
ところが、いざ営業がスタートすると、応援に駆けつけてくれた常連さんが助けてくれ、私はなんとか業務を遂行することができていました。
あっというまにその日の営業も終盤戦へ。
このまま、無事に一人営業初日を終えられる……。
そう思いながら、店の片づけを始めていたときでした。
ドアを開く音が店内にひびき、1人の男性が入ってきたのです。
ナゾに秘密結社についての談義を聞かされる
きわどい時間帯ながらもまだ営業時間内。
男性は席に着くと、こう切り出しました。



……お兄さん、フリーメイソンて、知ってる?
このとき、なにかぞわっとするものを感じたことを、いまでも覚えています。
初対面で、しかも第一声がフリーメイソン。確実にやばい気配しか感じられません。
フリーメイソンとは秘密結社のことです。
- 世界を裏で牛耳る真の支配者
- 陰で政治を操る闇の主導者
とかいわれていますが、実際なにをしているのかは、“秘密”結社なので私にはわかりません。
基本的には慈善活動をおこなっているようです。
そこからは、その男性の「秘密結社についての談義」が始まりました。
- フリーメイソンには人口を減らす計画がある
- 同じく秘密結社である「イルミナティ」のカードゲームでは、アメリカ同時多発テロ(911)が予言されていた(これは有名な話)
などと、そういったオカルトチックな話が延々と続くこと数十分……。
耐えきれなくなった私は、ここで、こう切り返したのです。



なにか飲まれますか……?
そう、この男性、まだなにも注文していなかったのです!



いいの? それじゃあなにか安いやつを。あとこれ、あげるよ
私には「いいの?」の意味がわかりませんでした。
が、男性客の要望どおり、いちばん安いものを提供します。
また、男性客からは、なにかの総菜が入ったタッパー(食べかけ?)をあげるといわれたのですが……そこは丁重にことわりました。
でもって、さらによくわからない話を聞かされること小一時間ほど。
まもなく閉店時間となり、男性客もそろそろ帰るというので、私はお会計を出したのです。
ちなみに金額は、チャージ+お酒代で1100円でした。



……え、いや、お金取るの? というかそれ、さっきの(総菜)と交換てことじゃなかったの!?
いやいや……もはや意味がわかりません。
総菜と交換って……、そんな話、飲食店であるわけがないでしょう!
やはり、私のやばいと感じた直感は、あたっていたのです!!
後日支払うと嘘をついて男は店から逃亡をはかる


話を聞くと、なんとこの男性客、そもそも所持金がない状態で入店。
最初からお酒を飲む気はなかったというのです。
さらには、キャッシュカードのなかにも残高はなく、お金を下ろすこともできないと。
それならなぜ入ってきたのか?



ありえんだろ、さすがに
私は問いただしたかったのですが、ことが起きてしまった以上、この状況では話し合っていてもらちがあきません。
ひとまずは男性客が後日支払いにくるということで話がつき、私は、男性客の電話番号と氏名を書いた紙を受け取りました。
しかし残念なことに、これまでの言動からして、この紙きれ1枚だけではこの男性を信用するに足りません。
さらにいうと、これだけでは店の経営者にあとで文句をいわれることはわかりきっていたので、私は提案したのです。
なにかもう1つだけ置いていってもらうことはできないかと。



そしたら免許証……いや、そういえば明日車の運転があるからだめだ



それならパスポート……いや、明日必要になるかもしれない
車の運転ならまだしも、明日飛行機に乗るなんてことがあるのか?
とはいえ、知らないお店に身分証明書を置いていくというのは、プライバシー的な問題もあります。
それは避けたいと思うのも不思議なことではありません。
そこで私は、ならばお互いの信用のため、
「コピーしたものでいいので、なにか身分を証明できるものを置いていってくれませんか」
と提案します。……が、



コピーするお金がない



…………
私はポケットマネーから10円玉を何枚か渡しました。
男性は「すぐコピーして戻ってくるから!」といい残し、店から出ていきます。
もしかするとこの男性は、このままもう戻ってこないかもしれない。
……逃げるつもりかもしれないな。
これまでのやりとり、とくに身分証がどうこうのくだりで、
「なんとかしてこの場だけでもしのげれば」
という男性の気配を私は感じ取っていたのです。
けれど、戻ってくるといったのだから、その言葉を信じよう。
私は店で一人、男性が戻るのを待つことにしたのです。
警察に通報するしかないと電話をかけた


私が勤務していたお店の近くにはコンビニが何軒かありました。
コピーを取って戻ってくるだけなら、5~10分もあればこと足りるはず。
ところが、30分待っても、1時間待っても、男性がお店に戻ってくることはありませんでした。
食い逃げ……。
逃走のおそれがあるなかでのこの判断(※)がそれを招いてしまったのかもしれません。
こうなる可能性は、少なからずあるとはわかっていましたが、まさかほんとうに逃げるとは……。
しかも、経営者に指示をあおいだところ、責任を取らされ、飲食代金は私が立て替えることになるというおまけつき。
1000円程度とはいえ、当時の生活に困窮していた私にとっては、なけなしのお金です。



働きにきているのにお金を払わされるのは、いかがなものか
なんとかしてこれを取り戻す方法はないか。
私は疲れきった頭をフル回転させます。
……いや、待てよ、そういえば電話番号を聞いたぞ。
男性客はコピーをして戻ってくるという「うそ」をついて逃げました。
これはもう詐欺みたいなものでしょう。こんなことを許してはいけません。
彼は、私が渡した数十円も盗んでいったのだから……!
私は男性が置いていった電話番号をプッシュします。
すると、6~7コールほどで、なんと男性は電話に出たのです。



…………
こちらが名乗るも、無言をつらぬく男性。
これはおそらく、うそをついて逃げたという、うしろめたい気持ちがあるからでしょう。
また、すぐに電話を切らないのは、こちらがどう出るのかをさぐっているようにも思われました。
そこで、ここを好機と見た私は、男性が通話状態を維持しているすきに、たたみかけたのです。



経営者は本来すぐに通報するところ、私が自腹で立て替えたので、ひとまずは通報はしないといっています



ただ、このままの状態では、いずれ警察に通報することになってしまいます。いつでもいいので、お金を払いに来てもらえませんか? 私だって、こんなことで通報なんかしたくないんですよ



…………(ブツッ)
ここで通話は終了となりました。
しかしおそらく、男性は、私がいったことはすべて聞いていたように思われました。
今回、店内には監視カメラもなければ、食い逃げも現行犯ではありません。
加えて、うそをついてコピー代金を持ち去ったのはかなりあやしいものの、
- この男性客は当初、酒を飲む気はなかった、つまり無線飲食をするつもりではなかった(故意ではなかった)
というポイントが詐欺ではないとする考え方もあるようです。
ようするに、この場合は、名前と電話番号は判明しているものの、警察に通報したとしても犯人が捕まる可能性は低いように思われました。



なけなしのお金を取り戻すには、本人に返してもらうほかなかったわけだな
そしてなによりも、こんなくだらないことで警察に通報し、逮捕される人なんて、私は見たくはありませんでした。
店側は私が補填したからそれでいいみたいになっていたので、本気で通報する気なんてものは、はなから私にはなかったのですが……。
男性は後日になって店にやってきた


人の良心や甘さにつけ込み、それを足蹴にしていく……。
そんな人間に対抗するには、人を信じることをやめるしかないのか?
今回のケースでいえば、たしかに例の男性には、最初はお酒を飲む気はなかったという事情があったのかもしれませんが……。
しかし、問題が起きた日から数えて2~3週間後のことでした。
なんと、その男性は店の前に現れたのです。
くしゃくしゃになった1000円札と、100円玉をその手に持って。
男性はこういいました。



きっと君も、生活が大変だったと思うんだけど、そんななか、お金を立て替えてもらっててごめん
いまになって思えば、ただ警察に通報されたくなかったから返しにきただけのことかもしれません。
けれどもそのときの私には、人を信じたのは正しかったんだと、自分の心が救われたようにも感じたのです。
食い逃げは食い逃げですが、いちおう返しにきてくれた。
ということで、この件は丸くおさまってぶじ解決。
それからこの男性のすがたを店で見かけることはありませんでしたが……、まあ、いい勉強になった「バー食い逃げ事件」でした。



……あれ、そういえば、コピー代まだ返してもらってないな
今回のまとめ
- 従業員をだましての食い逃げは詐欺にあたる
- ただし、食い逃げをする意思がなかった場合は詐欺にはならないことも
- 相手の連絡先などはきちんと確認しておいたほうがいいかも
私が経験した無銭飲食はこの一件だけでしたが、こういったことは飲食店で働いていれば、マレにある気もします。
以前、常連さんがお金を下ろしにいき、酔っぱらっていて支払いを忘れてしまい、そのまま帰ってしまった、ということもあったよう。ただ、この場合はツケということで、問題にはならなかったようですが。
判断がむずかしいところではありますが、
- 一度店を出る場合は、お互いの信用のため、スマホなどなにかを置いていってもらう
としたほうがやっぱりいいなと、この一件以降感じるようになりました。



私も万が一自分がそのような状態になったときは、スマホなどを一時的にあずかってもらうようにしています
お店側も、「なにか置いていってください」とはいいにくいですからね。
お店とお客さんとのあいだでの口約束のトラブルは、意外と多いものです。
ちょっとしたことでお互いの信用に傷がつくのはよくないので、こういったことには気をつけたいものです。



コメント(確認後に反映/少々お時間をいただきます)