じつはこれは秘密にしていることでもあったのですが、私のいちばん好きなウイスキーを紹介します。
- 元バーテンダーが選ぶ一番うまいと思う酒(ウイスキー)
ミナト私は7年ほどバーで雇われ店長として働いていました
そのなかで、
バーテンダーがいちばんうまいと思うお酒、ほんとうにおすすめのウイスキーは?
といった質問はよくされてきました。



ウイスキーがたくさんあるバーだと、どれを頼んでいいのかわからないってのはあるよな
あとは、酒場を仕切っているバーテンダーがいちばん好きなウイスキーというのなら、それはさぞかしうまい酒なんだろう、といった理由からです。
この質問をされたとき、諸事情から私は、ほんとうに好きなウイスキーは内緒にしてきました。
しかしこの記事では、ついに公開しようと思います。
私がいちばん好きなお酒(ウイスキー)は、「エズラブルックス」という銘柄のバーボンウイスキーです。


ミナト
元バーテンダー。現在は兼業ブロガーとして活動中。夢は海外放浪の旅にでること、自分のお店をつくること。ブログを通してひとりでも多くの方のお役に立ちたいと思っています。当ブログのコンセプトは「24時間営業の人生の休憩所」。>> プロフィール詳細はこちら
本日の1本


- エズラブルックス|バーボンウイスキー
【ひと言】:安くてウマい。口当たりも滑らか。しかし個人的にはそれ以上に思い出のある1本



ウイスキーには思い出補正があるんだよな。今回のエズラはまさにそういうお酒だそうだ
安くてうまいコスパ最強ウイスキー「エズラ」


私がバーで勤務していた当時は、
- いちばん好きなお酒はなんですか?
- ほんとうにおいしいウイスキーはどれですか?
とか、いろいろと聞かれたものです。
そんなとき、お酒のつまみ程度に聞きたいのではなく、ほんとうに知りたい方には、私はこのように回答してきました。



私がいちばん好きなウイスキーですか? う~ん、やっぱりこれですかね(ゴソゴソ)


| 銘柄 | エズラブルックス(スタンダード) |
|---|---|
| 種類 | バーボンウイスキー |
| 容量&度数 | 750mL 45度 |
エズラブルックスは、アメリカ・ケンタッキー州でつくられているバーボンウイスキーです。
この黒いラベルのものが、標準的なスタンダード品となっていました。
その上には、年数熟成が入ったことで名前が変わった、オールドエズラ7年や、オールドエズラ12年(↓)


そしてオールドエズラ15年(↓)


といったラインナップがあったのですが、現在それらの年数ものはすべてが終売。
年数もので入手できるのは、在庫のあるものか、リニューアルされた「バレルストレングス(7年)」という、度数を高めた高級品のみとなっています。
ちなみに、オールドエズラ7年、12年に関しては、終売となったあとのタイミングあたりで、少しラベルが変わりました。
その理由として、つぎの話を聞きましたが、
生産中止が決まったあとで、つくっておいた樽が大量に見つかり、在庫がある分だけリニューアル品として再販することができたから。
これについては、真偽のほどは不明となっています。
エズラブルックスの終売情報
また、その後になって、エズラブルックスのスタンダード品も終売となりました。
なぜかというと、つぎの理由が考えられます。
- ブランドのラインナップ再編
- 原酒不足によるもの
- 世界的なバーボン需要の高まり
現在は「エズラブルックス99プルーフ」(49.5度)という商品が流通しています。
これにブランドを統一するために終売となったのではないかな、と個人的には感じています。
このように、エズラブルックスには、貴重な年数ものなどのバリュエーションがいくつかありました。
しかし私が好きなものは画像のスタンダード品、いちばんふつうのブラックでした。
ウイスキーが好きなら、「なぜそれなんだ?」と思われるかもしれません。



なぜなら、このウイスキーは、安いお酒だからだな
単純に、年数熟成もののほうが味がおいしいのはたしかです。
おいしいウイスキーなら、ほかにもいくらでもあるからです。
でも、そこではないんですよね。私がこのウイスキーを愛してやまない理由は。
エズラブルックスをベストウイスキーに選ぶ理由


なぜ私が、エズラのスタンダードをいちばんうまいと思うお酒にあげるのか。
それは、私が初めてエズラと出会った日の、いまも忘れることはない過去の出来事に答えはあります。



お店では長くなるので、最初から最後までお話しすることはありませんでした
しかし今回はすべてを書けるので、そのいきさつをお話ししましょう。
駆け出しのバーテンダーは悩んでいた


当時、駆け出しのバーテンダーだった私は、一人ですべての問題を処理しなければならない状況に立たされていました。
人手不足などの理由により、右も左もわからないまま、お店の営業を一人で任されていたのです。
当然ながら、そんな状態で仕事がうまくいくはずもありません。
1つの問題が解決したと思えば次の問題が起きます。お客さんに怒られたりすることもありました。
お客さんによっては対応の糸口がつかめず、なにを話せばいいのかわからないこともありました。
加えて、経営者からは、売上をあげられていないことなどへの文句を日常的にいわれます。



まあパワハラに近かったですね。正直いうと
とまあ、そんなことばかりが起きていたのです。
そんな、つねに問題が発生しているような状況で、当時私は大きな問題を1つ抱えていました。
これはバーではよくあることなのですが、
「店は認めているが、新人の君はまだ認めていない」
とでもいったようなお客さんのことです。
ようは、「これまでのバーテンダーとくらべると新人の君はまだまだだな」と、思われているであろうお客さんへの対応に悩んでいたんですよね。
これへの解決策は単純で、腕をみがき、経験を積むしかありません。
私は、それまで以上に修行にはげみました。
営業が終了してから朝まで技術の勉強をしたり、お酒に関する文献を読みあさりました。また、会話は情報戦でもあるので、酒以外の情報も積極的に取り入れるようにしていきます。世代の違う相手ともなんとかやりあえる、そんな「武器」を集めていったのです。
そういった私のすがたは、あとで聞くと、街行くお客さんも見てくれていたようでした。



「なんか朝まで残ってやってるなあ」と、見ている人は見ているわけだな
もしかすると、彼もその一人であったのかもしれません。
ある日、その男性客はいったのです。



最近、顔つきが変わってきたね
人に認められるというのはうれしいものです。
とくに毎日のように怒られていた駆け出しのころの私にとっては、ある種の心が救われるようなものがありました。
こんな日こそバーに行こう。
私は、その日の仕事終わりに、昔からお世話になっていたバーに行くことにしたのです。
しかしお金がないのがお約束で


お店を閉めて行きつけのバーに向かう途中、私は「そういえば」と財布の中を確認。
すると、このときの私の所持金は、なんと1150円でした。
当時、生活に困窮していた私には、下ろせるお金や、クレジットカードさえもありません。
ほんとうにお金がこれしかなかったのです。
それでも、どうしてもウイスキーが飲みたかった私は、どうしたかというと……。
失礼を承知のうえ、バーのマスターに連絡してみたのです。



いま、お金がこれしかないんですけど、一杯だけいけますか……?



……OK!
それまでの関係があったからこそというのもあるとは思います。
マスターはこころよく私をお店に迎え入れてくれました。
さらに、なにかを察してくれもしたのでしょう。
今回は特別にということで、なんとチャージなしのダブルで、ウイスキーをふるまってくれたのです!
そして、なにを隠そう、このとき私が飲ませてもらったのが、「エズラブルックス」だったのです。
そのとき飲んだエズラの味は、いまでも鮮明におぼえています。
- 仕事がうまくいってうれしかったこと
- どうしてもウイスキーが飲みたかったけれどお金がなかったこと
- それでも私を招き入れてくれ、お金が足りていないのに、シングルをダブルにしてもらえたこと
ほんとうにうれしかった。
いままで飲んだどんなお酒よりも、この一杯はおいしく感じたのです。
高級品にまさるふつうの安酒


その後私は、仕事にも慣れ、生活苦からもなんとか抜け出すことに成功。
勉強もかねて、多くのウイスキーを飲みました。
- 20年、30年と熟成年数の長いウイスキー
- かつて製造されていた希少品であるオールドボトル
- 業者がオフィシャルの蒸留所から樽ごと買いつけて製造するボトラーズブランド
など、いわゆる高級なウイスキーも飲んできました。
たしかに、そういったものは、おいしいものが多いです。
質のいいものは、まちがいなくうまいと言うことができるでしょう。
感動するほどおいしいものもたくさんありました。



でも、あのときの、いつものバーで飲んだ「エズラブルックス」の感動を超えてくるものは、1つもなかったんですよね
まだ飲み足りないだけかもしれません。
さらに高級なお酒を飲めば、それも変わることもあるかもしれないでしょう。
けれど、私のなかでは、答えはすでに出ていました。
強烈な想い出によって補正された酒の前には、どんなにうまい酒も、それを超えることができない。想い出にまさる酒はない
ということだったのです。
ふつうのお酒と高級なお酒、純粋に味だけをくらべれば、その差は歴然です。
ところが、記憶による補正の力は、その埋められない差を一気に埋めてしまい、すべてを瞬時にくつがえしてしまう。
それが、「想い出」の持つ力なのです。
バーで働いていると、よく、つぎのような話を聞きます。
「海外旅行のときに飲んだ現地のカクテルの味が忘れられず、いろんなバーで同じものを注文したけど、やっぱりあれを超えるものと出会うことはできなかったなあ」
それも同じ話だと思います。
大切な想い出のそばにあったお酒が、私の場合はエズラでした。
これが、私がいちばんうまいと思うお酒に、エズラブルックスを選ぶ理由です。
酒は想い出をよみがえらせる


また、想い出のそばにあったお酒は、当時の記憶を鮮明によみがえらせる力があるとも私は思います。
- 海外旅行の際に立ち寄ったバーで飲んだお酒
- 初恋の人といっしょに飲んだお酒
- 記念すべき日に飲んだお酒
それらを飲めば、いつなんどきでも、当時の景色や感情、記憶を呼び覚ましてくれるのです。
喜びに満ちあふれているときにそれを飲めば、さらに幸せな気持ちに。
反対に、悲しみにひたっているときにそれを飲めば、立ち直るきっかけをあたえてくれたりもします。
当時飲んだお酒と同じ、あるいはほとんど変わらないお酒を今後も飲む。
それをしたとしても、当時ほどのおいしさを感じることはできないかもしれません。
でも、かつての記憶を懐かしんで思いをはせることや、いまの自分をふるい立たせることはできるはず。
だからこそ、私は、なにかあったときはエズラを飲むのです。



マスター、エズラのロックをお願いします



あー、ごめん。エズラ取り扱いやめちゃったんだよね……(笑)
そんなわけで私は、想い出の場所で、想い出のお酒を飲むことはできなくなってしまいました。
まあでもエズラブルックスへの愛はいまも変わりません。あればエズラを飲みます。
……終売になってしまったので、いまはよけいに飲めなくなってしまいましたが(汗)
今回のまとめ
- 思い入れのあるお酒は記憶を呼び覚ましてくれる
- 想い出にまさる酒はないのかもしれない
- エズラは補正抜きにしてもうまいのでおすすめ
私がいちばん好きなウイスキーは「エズラブルックス」です。
絶対に忘れられない想い出のそばにあったお酒で、強力な思い出補正がいつもかかるからです。



それから、「安いウイスキーが好きでバーではそれを飲む」という人は、年配の男性にも多い気がするな
というのも、いまでこそウイスキーは安く手に入ります。
しかし当時は、ウイスキー自体がとんでもない高級品だった時代もあったわけで、
「自分が若いころのウイスキーといえばこれだったんですよね」
と、やはり昔に思いをはせる方、当時の銘柄に思い入れのある方が多いから、という理由からではないかと私は思います。
こういったものはめぐり合わせなので、探せば見つかるようなものではないかもしれません。
でもウイスキーにかぎらず、いろいろと飲んでいれば、いずれは「これだ!」というお酒に出会うこともできるでしょう。
ぜひ、そういうお酒を見つけてもらいたいと思っています。
おっと、そういえば忘れていました。



私がエズラを秘密にしていた理由ですが……、
これをおすすめすると安いエズラばかり出るようになり、売上(単価)が下がると同時に同じ酒ばかりが出る状況を経営者に怒られたから、もあったんですね。
いまはもう関係ないのでお話しした次第ですが……。
まぁそれはいいとして、エズラはおすすめなので、ぜひいちど飲んでみてください!




コメント(確認後に反映/少々お時間をいただきます)
コメント一覧 (2件)
私もエズラが好きです。
検索してたらこちらへ。
久しぶりに飲んだエズラブルックス。
たしかに思い出補正はあっても、今も美味しい。
ミナトさんのお話も素敵ですね。
コメントをありがとうございます!
やっぱり思い出があると、色あせない感があって、いつ飲んでも美味しく感じられますよね。
バーで飲めば場所的な補正もあって美味さは倍増です。
これからも飲んでいきたい1本です!