「え、なんですかこれ!?」「あちらのお客様からです」……それはもはや、都市伝説レベルかもしれません。
- バーで「あちらのお客様からです」は本当にあるのか?
- 「あちらのお客さまから」が成功or失敗する4つのケース
バーでひとりで飲んでいると、突然バーテンダーから「あちらのお客様からです」とお酒を出され、あちらを見ると……。
なんて、ドラマや映画のワンシーンで出てきそうな話ですが、そもそもの話、つぎのことは気になるところですよね。
- 「あちらのお客様からです」は本当にバーに存在するのか?
- かりに存在したとして、それをするのはありなのか?
イブスター店長ふだんからバーに行く人も行かない人も、気になることだと思うんだよな。これをしてみたいと思う人もいるかもしれない
そこでこの記事では、「あちらのお客様からです」の真相をお伝えしたいと思います。
さきにいうと、「あちらのお客さまから」は、いくつかの理由からお店では断られることも多いです。
ただし、状況によってはアリで、成功するパターンがある(存在する)のも事実ですよ。


ミナト
元バーテンダー。現在は兼業ブロガーとして活動中。夢は海外放浪の旅にでること、自分のお店をつくること。ブログを通してひとりでも多くの方のお役に立ちたいと思っています。当ブログのコンセプトは「24時間営業の人生の休憩所」。>> プロフィール詳細はこちら
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あちらのお客様からですはアリかナシか?


はじめに、「あちらのお客様からです」はアリなのかナシなのか、から見ていきましょう。
結論からいうと、基本的にはナシです。それをする人もほとんどいません。



その理由をここからは説明していくぞ
「あちらのお客様からです」というのは、男性から男性、女性から女性へむけてのものではありません。
基本的には、男性から女性へむけてのものであって、ナンパ行為に近いともいえるものです。
そしてそこが、あまりヨシとされない原因となっています。
酒場がバーとよばれるようになった、つまりバーが生まれたのは、1800年代のアメリカ西部開拓時代だとされています。



それを描いた西部劇の映画などでは、カウンター上でグラスをすべらせるシーンがよく登場します
その後の洋画でも、男性が女性に(話をする口実として)お酒をご馳走するのは、ひとつのバー文化として多数登場します。
そういったことから、「あちらのお客様からです」の元ネタは、映画にあるのかもしれません。
その影響もあってか、一時期は日本でもよくみられたそうです。
「あちらのお客様からです」の元ネタの補足
私が聞いた話では、バブル経済期の80~90年代のころは「あちらのお客様からです」は比較的あったとのこと。
日本中が好景気にわきあがり、世の男性たちは、ディスコ・クラブ・カフェバーなどで、夜を徹してナンパに明け暮れていたとか。



徹夜で遊んで仕事に行くのも、わりと普通だったらしいな(笑)
また欧米の映画では、男性が見知らぬ女性に、
Can I buy you a drink?(一杯奢らせてもらえない?)
と、バーやクラブなどで声をかけるのは、昔から定番の演出となっています。



欧米だと、「バーで気になる女性がいるのに声をかけないのは男じゃない!」みたいな雰囲気があるようにも感じます。文化の違いだと思いますが
つまりそういった映画を見て、女性に声をかけたい男性が、
- ナンパの手法のひとつとしてマネして使うようになった
というのが、「あちらのお客様からです」の元ネタになっているように思われます。
しかし、その後バブル経済は崩壊してしまったわけで、時代とともにバーも変化します。
現在、日本では、バーでのナンパは迷惑行為とみなされることが多いです。
バブルもおわり、バーはナンパをする場所ではなくなった……というふうに私は感じています。



バーの利用者も、そういったことは基本的なマナーとしてわかっていることが多いな
なので、バーで「あちらのお客様からです」が起きることは、いまではかぎりなくゼロに近いです。
そう、現代においては、都市伝説レベルでしか存在しないんですよね……じつは。
私は現場で7年以上(雇われ店長として)働いていました。



働きはじめるまえの期間も足せば、最低でも8~9年は職場+αでよくバーにいました
しかし、じっさいにこの目で見た、または頼まれたのは、片手でかぞえられる程度しかありません。
もちろん、バーのスタイル(たとえばお客さん同士の距離が近いなど)によっては、話のきっかけとして起こることもありえます。
ただ、ある程度しっかりとしたバーでは、ほぼないと思いますよ。
なぜかというと、バーで「あちらのお客様からです」をしようとすると、断られる場合もあるからです!
あちらのお客様からです、が断られる理由
バーで「あちらのお客様からです」をしようとすると、場合によっては断られます。
というのも、それを受け入れてしまうと、奢る側と奢られる側とのあいだに優位性が生まれてしまうからです。
どういうことか、これも見ていきましょう。



たとえば、「あちらのお客さまから」が、男女間で成立したとします
それは男性側が勝手にしてきたこととはいえ、女性側はなにかをもらうかたちになります。
ですから、当然、そこには貸し借りのような優位性が生まれてしまいます。
そうなると、女性のお客さんは、話す気分ではなくても話さないといけない感じにもなりますよね?
連絡先を聞かれたら、ご馳走されている手前、教えたくなくても断りにくくもなるというものでしょう。
その結果、女性のお客さんは、そういった面倒くさいことが起きるお店にはもう来なくなる可能性も高くなるわけです。
お店側としても、大切なお客さん(とくに女性は大事にされることが多い)が来なくなるのは、かなりの痛手となってしまいます。



まあ、なかには、「タダ酒が飲めてラッキー」となる人もいるかもしれん
しかしひとりでバーに来る女性のお客さんは、(ひとりになりたいなどの)明確な目的があって来ていることも多いです。
そういった、ナンパ的コンタクトを嫌がる方もすくなくはありません。
つまり、「あちらのお客様からです」は、
- 女性のお客さんの快適な時間・空間を守るため
という理由で、お店側から断わられてしまうことも多いのです。
バーテンダーは未然にトラブルを防ぐのも仕事
そんなわけで、バーテンダーは未然にトラブルを防ぐ仕事もしています。
男性のお客さんに悪気はなかったとしても、
- そのせいで、お客さんがひとり来なくなってしまった
となれば、お店側としても、なんらかの対策を打つ必要がでてきます。
そのまま「あちらのお客様からです」をOKにしておけば、今後、おなじことが起きてしまう可能性もあるからですよね。
じっさい、私が勤務していたバーでは過去に、「なにかご馳走してあげるよ」と、手当たりしだい女性に声をかける男性客がいたそうです。
ところが、女性のお客さんからはクレームが殺到。
最終的には多くの女性客がお店からいなくなり、その男性客も来られなくなってしまった、という話もあったそう。



最初から「あちらのお客様からです」をNGにしておけば、こういったトラブルは、未然にふせげた話でもあったと思います
お客さん同士のトラブルをふせぐ・リスクを避けるためにも、「あちらのお客様からです」は、断わられることもあります。
このへんに、「あちらの……」をあまり見かけない理由があるのです。
したがって、アリかナシかでいえば、基本はナシといえるでしょう。
欧米バー文化との違いや、時代の変化もあり、いまでは「あちらのお客様からです」は、あまり受け入れられるものではないと感じます。
あちらのお客様からですの成功&失敗パターン


お客さんを守るため・トラブルをふせぐため、「あちらのお客様からです」は、バーでは断わられてしまうこともあります。
しかし、そうはいっても成功するパターンもじつはあって、かならずしもこれがNGとなるわけでもありません。
- 今日はいいことがあって、だれかにお酒をふるまいたい
- 初めて来た知らないお店だけど、自分も仲間に入れてほしい
そんなときなどは、「あちらのお客様からです」をしたいということもあるでしょう。
またこれをきっかけに、話が盛り上がることがあるのも事実です。
そこでここからは、「あちらのお客様からです」を成功させる方法を、成功例・失敗例をまじえて紹介していきます。



成功&失敗は、4つのケースにわけて見ていくぞ
ケース1:こちら初来店×あちら初来店


まずは「ケース1」。男性も女性も初来店、という場合から見ていきましょう。
これは、ほぼ確実に失敗すると思っていたほうがいいです。
まず、両者の素性がわからない以上、バーテンダーも動けません。
あちらの男性は、ただのナンパ目的かもしれません。
こちらの女性は、そういうのが好きではない、というか、嫌いな人かもしれません。
よって、この状況での「あちらのお客様からです」は、成功する道理がないのです。



まあでも、やってみないとわからないんじゃないか?
と思われるかもしれません。
……が、じっさいこの状況で「あちらのお客様からです」をしようとすると、以下のようなパターンとなって撃沈するのがオチですよ。



マスター、そちらのお客さんになにか1杯……



えーと、いえ、ウチはそういうのやってないんですよね……すみません(小声)
最高に居たたまれない感じになってしまうのは必至……。
このパターンで「あちらのお客様からです」をするのは、やめておいたほうがいいでしょう。
ケース2:こちら初来店×あちら常連さん


つづいて「ケース2」。男性のお客さんは常連さんで、女性のお客さんは初来店という場合です。
この場合も、やめておいたほうが無難ですが、条件によってはありになります。
バー(お店)と常連のお客さんとの関係はすこし特殊なものです。
- バーテンダーは常連さんのことを親愛なる友人のように思う
- 常連さんはずっとお店がつづいてほしい、それに協力したいと思う
など、おたがいのあいだには「絆」が生まれたりもします。
新規の女性のお客さんが、行きつけのバーに来た
となれば、常連さんからすれば、その女性もこれから通ってくれるようになればいいな、と思ってくれたりもするものです。
しかしそこで、その女性客がまた来てくれるようにと、「あちらのお客さまから」をしたとしましょう。
たしかに、それがうまくいくこともあるかもしれません。
ただ、前述のとおり、そういうのがイヤな女性は、初めてだからこそお店にはもう来なくなる可能性もあるわけです。
とくに常連さんからとなると、優位性が増幅して感じられるのもあります。考えようによっては、常連さんがバーテンダーと結託してナンパをしてきているようにも思えます。
ようするに、善意が逆効果となってしまうこともあるということです。
したがって、この状況でも「あちらのお客様からです」は失敗する可能性があります。
場合によっては、おたがいの信頼関係に傷がついてしまうかもしれないで、やめておいたほうがいいでしょう。



ただし、例外的に受け入れられる場合もあるんだ
それは、シャンパンなどをボトルで頼んで、
ひとりでは飲みきれないから、よかったら皆さんにも一杯ずつどうぞ
といった場合です。
男性が常連さんなら、バーテンダーとの関係もすでにできているはずです。
またひとりをピンポイントに狙ったものではないので、ご馳走されるお客さん側としても気がラクです。
こういった自然なパターンなら、「あちらのお客様からです」は、受け入れられることも多いと感じます。
ケース3:こちら常連さん×あちら初来店or複数回


「ケース3」は、男性は初来店または複数回来店で、女性は常連さんという場合です。
これはいける可能性が多少はあります。
女性のお客さんが常連さんなら、バーテンダーも、
- あと何杯飲まれるのか
- なんのお酒が好きなのか
- そのお客さんはどのような人なのか
といった、その人のことやほかのお客さんとの相性は、だいたい把握できていたりします。
よって、つぎのような状況なら、
- あちらの男性:「初めてのお店だけど仲間に入れてもらいたい」
- こちらの女性:「べつにそういうことなら」と理解してくれる人



あちらの方がご馳走したいそうですけど、どうしましょうか?
と、バーテンダーも聞きに行くこともできます。
女性の常連さんが、
- ビールやワインなどのおなじものしか飲まない
- かつ「あちらのお客様からです」を、ある種のネタとして受け入れてくれる
という、超限定的な場面では、



あちらのお客様からですよ(笑)
と、飲み終わるタイミングを見はからって、「あちらのお客さまから」を完遂できるかもしれません。
ただ、これも前述のとおりで、なにを目的としたものかわからなければ、バーテンダーは動けません。
ナンパ目的ならまず断わられます(女性の常連さんを守るため)。
よって、なぜそうしたいのかが伝わる程度は、バーテンダーと話してからでないとむずかしいでしょう。
ケース4:こちら常連さん×あちら常連さん


最後に「ケース4」。男性は常連さんで、女性も常連さんという場合です。
これは、おたがいが見知った仲であれば、わりとあったりもします。
- 今日はボーナスが出たんで飲んでください!
- 今日は誕生日なんですか? それじゃあ1杯ごちそうしますよ!
- 先日はありがとうございました、今日はお礼に、なにか好きなものをどうぞ
知らない人にたいしてのいわゆる「あちらのお客様からです」ではありません。
しかし常連さん同士のコミュニケーションのひとつで、「なにか一杯ご馳走」はあります。
ナンパとか、優位性とか、そういった話ではない、ほんとうに気持ちでの話です。



まあでも、これも立派な「あちらのお客様からです」だと思うぞ
バーはそういう、お客さん同士のコミュニケーションもおもしろい場所だと私は思います。
バーで「あちらのお客様からです」をしたければ、お客さんと仲良くなって、その人にしてあげるのがいちばんスムーズかもしれません。
バーテンダーに、「じゃあそういうことなので、○○さんに一杯」とお願いすれば、快くお酒をつくってくれるはずです。
今回のまとめ
- バーで「あちらのお客様からです」は基本的にはない
- お客さんのあいだで優位性が生まれるのがよくない、などの理由があるから
- ただし常連さん同士などではあることもあり、人によってはOKの場合もある
バーで「あちらのお客様からです」は、基本的にはありません。
おもな理由としては、いまの時代、日本のバーではナンパはNGなものとなっていることが多いからです。



また、かつて私が勤務していたお店のマスターは、「バーは茶室のようなものだ」といっていました
格の高い武士であっても、茶室のせまい入り口をくぐるには刀を置いてこなければならず、亭主と客の立場は対等。どれだけ身分にちがいがあっても、フラットに話せる、それがバーなんだよ。
これは、お客さん同士でもいえることだと私は思います。
したがって、「あちらのお客様からです」を使って、知らない人にお酒をご馳走するのは、このおたがいが対等という絶対の法則がくずれることにもつながりかねません。
ほかのバーでも、おなじような考えはあると思います。
もっとも、「あちらのお客様からです」は、常連さん同士でのコミュニケーションのひとつとして存在もします。



ボトルを開けてみんなでシェア、というのもあるんだったな
ですので、絶対のタブーというわけではありません。
が、これまで見てきたとおり、バーテンダーもふくめておたがいが見知った仲ではないのなら、ひかえるに越したことはないと思います。
ほかのお客さんと話す糸口をつかめない、ならば「あちらのお客さまから」しか……なんてことはありません。
バーテンダーは、話の仲介もしてくれるので、そんなことはしなくても仲間に入れてもらうことはできますよ。
お土産を持っていくという手もある
それから、これが最後の話で、「あちらのお客様からです」というとお酒を想像すると思います。
しかしもっと簡単に成功させる方法もあります。
それは、お土産などのお菓子を行きつけのバーに持っていくことです。
こういったお土産などのお菓子をお店側に渡すと、バーテンダーが「あちらのお客様からです」と、ほかのお客さんにもくばってくれたりします。



それがきっかけで、ほかのお客さんと仲良くなれたりすることもあるんですよね
ようは、どうしても「あちらのお客様からです」がしたいのなら、お土産を持っていけば簡単にできるという話です。



……と、お土産を食べたいだけの元バーテンダーからの助言だ
ただし、つぎのようなのは、マナー違反になるのでご注意を。
- お土産をすこしだけみんなに分けて、あとは自分たちでお酒のつまみに食べまくる……
単純な話、変にやましいことをすると、バーでは注意されたりするって話です。
そういうのがなければ、バーはバーテンダーもお客さんも、みんながとても親身になってくれる場所だと思いますよ。



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