バーで知らないお客さんに話しかけるときは、バーテンダーに協力してもらうか、場の空気を読む必要があるでしょう。
バーに一人で行ってみると、バーテンダーと、知らないほかのお客さんが楽しそうに会話をしていて、自分もその話題に入りたいな、と思うことや、ほかのお客さんと話してみたいな、と思うことはあるのではないでしょうか?
ところが、そこで「自分もそう思います!」なんて突然会話に参加してしまうと、それまで楽しそうだったほかのお客さんが、「あっ、はい……」のようになってしまい、なんだかお互いがばつの悪い思いをしてしまう、といった残念なことが起きてしまうこともあります。
じつをいうとバーには、ほかのお客さんからは話しかけられたくないという人も少なからずいるからです(そういった方のための話もあとで少しふれます)。
とはいえ、バーの醍醐味は「会話」であって、私の経験上、話したくない人というのは比較的少数派なので、今回はバーでの醍醐味を最大限楽しめるように、ほかのお客さんに話しかける方法や、会話に参加するわざ、そして、それをしていいのかどうかを見極めるための注意点などをお話ししたいと思います。
まずはその場の「間や空気」を読もう
バーは知らないお客さん同士が価値観を共有することができたり、談議に花を咲かせたりすることができる場所ではありますが、バーに来るお客さんというのは、人それぞれ目的が違います。
誰とでも仲良くといったように、人と話すことが好きなお客さんもいれば、バーテンダーとしか話したくない、つまり横のつながり(お客さん同士のつながり)は極力持ちたくない、というお客さんもいます。ほんとうに誰とも話さず、一人で静かにお酒を飲みたいというお客さんだっています。
そのため、会話が盛り上がっていたとしても、そのお客さんがほかの人とも話したいのかというと、かならずしもそういうことではありません。
バーテンダーと話していたのが、先ほどのような「ほかのお客さんとはあまり話したくない人」だった場合、突然会話のなかに入ってしまうと、冒頭のように水を差すような感じになってしまうこともあるわけです。
ほかのお客さんに話しかけたり、会話に参加したりする際は、まずはその場の状況や空気といったものを読まなければなりません。ようは、話しかけたいお客さんがどういうタイプの人かを、見極める必要があるのです。
では、どうすればそんなことができるのかというと、しばらくは「見」というよりも「聞」に徹すること。
具体的にいうと、まずは参加したい話題が出ていてもしばらくはその話を聞いているだけにしておきます。
そうしながら、そのお客さんは話しかけても大丈夫そうな人なのか、それともそうではないのか、どれくらいの距離感でバーテンダーと話しているのか、どのような話をしているのか、などを観察します。
そして、それらの情報からいけそうだと判断しても、そこではまだ話しかけずに、まずは先にジャブを打つのです!
ほかのお客さんとの会話にスムーズに入るわざ
正直いうと「話しかけても大丈夫そうだ」の判断基準は人によっても異なりますし、実際に大丈夫なのかそうでないのかは、バーテンダーくらいしかわかっていないことも多いため、最もスムーズに会話に参加するためには、バーテンダーに仲介してもらうのがいちばん手っ取り早いです。
しかしながらその方法は、バーテンダーと、ある程度の関係性がなければ使えないため、少しばかり回りくどいのですが、そういった場合には、先ほどのジャブ打ちが効果を発揮します。
このジャブ打ちは、いわばダイレクトにはいかないことで失敗するリスクを減らし、というよりもリスクを無くし、バーテンダーからの仲介も待てるという、ノーリスクハイリターンの完全無欠な戦法。
ジャブの打ち方は、おもに以下の2つのパターンがあります。
1. ほかのお客さんをチラ見する
バーのカウンターというのは、基本的にはそこまで長くはないため、「聞」に徹していれば、会話の内容はだいたい耳に入ってくると思うのですが、あるタイミングが来たとき、会話の方向(ほかのお客さんの方向)をチラッとだけ見ます。
たとえば、その話題には興味があるとか、その話は自分も知っている、といったようなタイミングで、
面白そうな話ですねぇ
なんてことを考えながら、チラチラ見るのではなく、チラッとだけ見るのです。
すると、そういったささいな動きでも、注意深いバーテンダーは見ていますから、皆さんの会話に参加したい気配を察知して、大丈夫そうだと判断されれば、話を振ってくれたりもするわけです。
……お客さんは「鮫島事件」て知ってますか?
といったように。
ただし、あまりチラチラ見ていると、バーテンダーからもほかのお客さんからも、「もしかしてやばい人なのか?」と警戒される可能性があるので、チラ見が使用できる回数は、2~3回程度と考えておいたほうがいいかもしれません。
2. 一人でうなずいてみる
これも1つ目のチラ見と同様に、「聞」に徹するなかで、その意見は共感できるとか、「そうそう」と思ったときなどに、その場でちょっとうなずいてみます。
(鮫島事件……)
するとどうでしょう、皆さんの会話に参加したい気配を察知したバーテンダーは、こういうかもしれません。
アンタやっぱり……おっと、誰か来たようだ
ただし、これも先ほどと同じく、一人でウンウンうなずいていると、バーテンダーとほかのお客さんから、「やっぱりやばい人なのか?」と、さらに警戒されてしまう可能性があるので、このうなずきが使用できる回数も、1~2回程度と考えておいたほうがいいでしょう。
バーテンダーの仲介を経ずに直接話しかける方法
もちろん、そのようなジャブを放ってみても、バーテンダーは動いてくれない、もしくは会話を仲介してくれない場合もあるので、そういった場合は、バーテンダーの仲介を経ずに直接話しかけてみるのもありでしょう。
ただし、それをする前に、なぜバーテンダーは仲介してくれないのかを考えてから行動を起こしたほうがいいかもしれません。
ジャブを放ってもバーテンダーが動かない理由には、おもに以下のような可能性が考えられます。
- バーテンダーと会話しているお客さんが、ほかの人とは話したくないタイプ
- バーテンダーと会話しているお客さんが、ほかの人と話す人なのかまだわからない
- バーテンダーが忙しくてジャブに気づいていない、もしくは気づいていても即座に対応できない
たとえば、皆さんの放ったジャブにバーテンダーが気づいてくれ、皆さんには話しかけてくれるも、ほかのお客さんとはつなげてくれないという場合があったとします。
この場合は、①か②の可能性が高いと思われますが、それはいいかえれば、50%の確率で話しかけないほうがいい、ということでもあり、①ならアウト、②ならセーフ、といったような状況になってきます。
そうなったらもう、そのお客さんに話しかけるときは、イチかバチかの賭けに出るしかない……? というとそんなことはなく、このようなときは、バーテンダーとほかのお客さんの会話から、お互いの距離感をはかってみるのがいいかもしれません。
どういうことかというと、バーテンダーとほかのお客さんの距離感が比較的近い(=仲がいい)場合、これは①の可能性が高いとも考えられますし、バーテンダーとほかのお客さんの距離感が比較的遠い(=関係が浅い)場合、これは②の可能性が高いとも考えられるのです。
そして、皆さんの観察眼でその場の状況や空気を読んだ結果、②「ほかのお客さんが人と話すのかまだ不明」と判断、もしくは、②+③「バーテンダーが忙しい」といった状況で仲介が望めないときこそが、まさに動くタイミング。
「鮫島事件」なんですが、じつは私も……
それに対する相手の返答が、
えっ、そうなんですか!?
と、このように食いついてきた場合は、会話が成立し、目的を果たすことができたと思っていいでしょう!
会話というのは最初が肝心なので、そこがクリアできれば、あとは勝手に盛り上がったりもするものですよ。
会話が続かなかったらサッと身を引こう
一方で、相手がそれとは全く逆の反応、つまり、話しかけてもまったく食いついてこない場合も、当然ながらあります。
「鮫島事件」なんですが、じつは私も……
あっ、そうなんですねぇ……
…………
このような場合は、そのお客さんは、話したくないというサインを出している可能性が高いと思われるので、変に深追いはせず、いさぎよく身を引いたほうがいいでしょう。(逆にいうと、話しかけられたくない場合は、このような対応をとるのがいいかもしれません)
もっとも、相手のお客さんが、その日は知らない人と話す気力すら残っていない日だったとか、人見知りで話しかけられたことにビックリしてしまった、ということもあったりもするので、かならずしもそういった反応が、「人に話しかけられたくない」となるわけではありません。
皆さんが先に帰る場合は「お先に失礼します」とか、相手が先に帰る場合は「おやすみなさい」などとひと言そえておくと、次に会ったときは向こうから話しかけてくれることもあったりするなど、次につながることもあるのです。
ジャブを放ち、ストレートがかわされたら、みずからリングアウト。ひとまずは、これがいいのではないでしょうか?
そのような場合はバーテンダーもフォローしてくれますし、変に気まずい空気のままになってしまうこともないので、ダメならダメで、そこまで気にする必要もないと思いますよ。
お客さんに話しかける際のマナーと注意点
このように、ほかのお客さんに話しかける際は、なんの前触れもなしにいきなり話しかけるのではなく、少し様子を見てから話しかけたほうがいいものと思われます。
また、それに加えて、知らないお客さんに話しかける際には、話す内容や立ち振る舞いなど、気をつけておきたい注意点(バーのマナー)もあるので、これもいっしょに確認しておきましょう。
知らない人に話しかける際の注意点は、おもに以下の5つです。
1. 礼節をわきまえる
お互い初対面の場合、礼節をわきまえ、相手に敬意をもって接するのは、私は人として当然のことだと思っています。
いきなりタメ口で話しかけると、「なんだこいつは」と思われてしまってもおかしくはないので、少なくとも、最初は敬語で話すのがいいと思いますよ。
もちろん、仲良くなったあとで、タメ口になったりすることもあるとは思いますが、その際も「礼に始まり礼に終わる」の精神は、忘れないようにしたいですね。
2. 酔っぱらってからむようなのはNG
酒に酔った勢いでからむようにして話しかけるのは完全にアウト。からまれたほうは面倒くさいと感じますし、きっと不愉快に感じてしまうと思います。
そもそもの話、バーは「酔う」場所ではあっても、「酔っぱらう」場所ではありません。
飲み過ぎている場合は、バーには行かないというのも英断ですよ。
3. 根掘り葉掘り聞かない
初対面同士の場合、相手のことが知りたいから、話を途切れさせないために、といった理由から、相手の年齢や職業、出身地や居住地、家族構成なんかまで、根掘り葉掘り聞いてしまう人がいたりもします。
しかしこれは、質問される側からすると少々うっとうしいもので、「自分はいま調査されているのか?」と、過剰な詮索は、不信感をつのらせるだけとなってしまいます。
一定の距離感を保つことも、バーでのたしなみのひとつ。
まずはいきなり距離を詰めようとはせずに、あたりさわりのない話題から始めてみるのがいいでしょう。信用できる人だなと相手が思ってくれれば、相手のほうから、自分のことを話してくれたりもするものですよ。
4. お客さんがグループで来ている場合は静観が無難
会話に参加したいと思った相手が、仲間うちのグループで来ている場合や、男女のカップルだった場合、そのお客さんたちは、かぎられた時間を、仲間や恋人と過ごしたいと思っていることも多いと思います。
たとえば、カップルの男性がお手洗いに行っているあいだに女性が声をかけられていて、戻ってきたら変に盛り上がっていたりでもしたら、男性からすれば、なんだかモヤモヤした気持ちにもなってしまい、楽しかった時間が台無しになってしまう、ということもあるかもしれませんよね。
そういったこともあるので、このような場合は、会話に混ざりたかったとしても、静観するのが無難かなと私は思います。
5. 話しかける相手が女性の場合はナンパ認定に注意
バーでのナンパ行為は問答無用でアウトですが、むずかしいのは、女性のお客さんに話しかけた場合、こちらにナンパする意図がなかったとしても、女性のお客さんがナンパされていると思えば、それはナンパとして認定されてしまう、ということでしょう。
下心が見え見えなのはもってのほか。ただ、それが純粋に話してみたいという気持ちによるものであり、かつ、これまで見てきたようなマナーを守って接することができれば、その場合は話しかけられた女性のほうもきっと、ナンパではないと理解してくれるはずだと思います。
相手が女性、男性にかぎらず、「男たるもの、紳士的であれ!」ということですね。
バーでのナンパがアウトになってしまう理由
→ バーでのナンパ行為はNGだけど、出会い(恋愛に発展)は確かに存在する
今回のまとめ
・自分から話しかける場合は間や空気を読もう
・マナーを守って楽しく会話!
実際のところ、二度と会うこともないかもしれないほかのお客さんに、そこまで気を使う必要はあるのか? と思われる方も少なくはないかもしれません。
しかし、たとえばの話、こちらには予定があるのにもかかわらず、それを無視して突然家に上がり込んでくるような人に対して、お茶を出してもてなしたいとは、ふつう思いませんよね?
それと同じようなことで、人と人とのつきあいは土足での踏み込み合いではないですし、とくに知らない者同士の社交場であるバーとなれば、それはなおさらのこととなるので、やはりそこまで気を使う必要はあるでしょう。
人と人とがお互い良好な関係を保てるのは、「親しき仲にも礼儀がある」からだと私は思っています。知らない人と話してみたいという方には、それを念頭に置きつつ、バーで新しい仲間をつくってもらいたいと思います。
バーでできた仲間はバーテンダーと同じく、困っているときや、悩んでいるときなどに、強力な味方にもなってくれますよ。
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