バーで「あちらのお客様からです」は存在するのか?というかアリなのか

「え、なんですかこれ!?」「あちらのお客様からです」……残念ながらそれはもはや都市伝説レベルです。

一人でカウンターで飲んでいると、突然バーテンダーから「あちらのお客様です」とお酒を出され、「あちら」の方を見るとそこには紳士的な男性が……

なんてドラマや映画のワンシーンで出てきそうな話ですが、そもそもこの「あちらのお客様です」は本当にバーに存在するのか?と思いますよね。

で、仮に存在したとして、今度はそれはアリなのかという話にもなってきます。

そこで、気になる皆さんのためにも、長年に渡って現場を見てきた私がこれらの疑問にお答えしよう。「あちらのお客様から」にまつわる話の真相を。

あちらのお客様からはもはや絶滅レベル

あちらのお客様から(以下、長いのでA-actとします)というのはそもそも男性から男性、女性から女性へ向けて行われるものではなく、基本的には男性から女性へ向けて行われるものであり、つまるところそれは、ただのナンパ行為と言っても過言ではないもの。

特に、私が聞いた話では、日本中が好景気に沸き上がり、トレンディドラマも流行。世の男性達はディスコ・クラブ・カフェバーなどでナンパに明け暮れていたという、バブル経済期の80~90年代には「A-act」は度々見受けられたそうです。

が、とっくの昔にバブル経済は崩壊し、時代の流れと共にバーも変化。現在ではバーでのナンパは基本的に迷惑行為でしかなく、バーの利用者もそういったことはわかっている方が多いので、「A-act」が発動することは限りなくゼロに近いのです。

そう、残念ながら現代においては「A-acter」は絶滅レベルでしか存在しないのです!

事実、私が現場で働いていた7年以上、それに加えて働き始める前も1年以上はどっぷりとバーに漬かっていたので、最低でも8~9年は職場+αでバーにいましたが、実際にこの目で見た、というか頼まれたのは確か1人か2人とかその程度。

もちろんバーのスタイルによっては(例えばお客さん同士の距離が近いようなバーでは)話のきっかけとして「A-act」が起こることもなくはないです。ただ、ある程度しっかりとしたバーではほぼ起こり得ない。

というか、しようとすると断られたりする場合もあるのです!

あちらの(略)は断られることも

バーで「あちらのお客様から」をしようとすると、場合によっては断られます。

というのも、それを受け入れてしまうと、あちらのお客さん(奢る側)とこちらのお客さん(奢られる側)との間に、必然的に優位性が生まれてしまうから。

どういうことかと言うと、例えば「A-act」が男女間で成立したとして、男性側が勝手にしたこととはいえ、女性側は何かを貰う形になる訳ですから、当然そこには貸し借りのような優位性が生まれてしまいます。

そうなると、こちら(女性)のお客さんは話す気分ではなくても話さないといけないような感じにもなりますし、連絡先を聞かれでもしたら、ご馳走されている手前、教えたくなくても断わりにくくもなるというもの。

その結果、こちら(女性)のお客さんは、そういった面倒臭いことが起こる店にはもう来なくなるという可能性も高く、店側としても大切なお客さんが来なくなるというのはかなりの痛手。さらには、あちら(男性)のお客さんはそういった意図がなかったとしても、結果的にお客さんを1人飛ばしてしまったとなると、これはもう誰も幸せにならない事態となってしまうのです。

よって、そういったリスクを避けるためにも、バーによっては「A-act」は断られます。断られた方はかなり居たたまれない感じになってしまうかもしれません。

ただ、「A-act」を成功させる方法も実はあります。

A-actを成功させる方法

今日はなんだかいいことがあって誰かにお酒を振舞いたいとか、知らないお店だけど自分も仲間に入れてほしいとか、弾けてしまったバブルの熱気を感じてみたいとか、中には「あちらのお客様から」をしたいという方もいるでしょう。

そこで、ここからはそんな酔狂な皆さんのため、私が「A-act」を成功させる方法を、失敗・成功例を交えて伝授したいと思う。

(case1)あちら初来店×こちら初来店

まずは「case1」。あちら(男性)のお客さんもこちら(女性)のお客さんも初来店という場合。

これはほぼ100%失敗すると思っていた方がいいです。

まず、両者の素性がわからない以上、バーテンダーも動けない。あちらの男性が手癖の悪いナンパ師かもしれない。こちらの女性はそういう男が大嫌いな人かもしれない。よって、この状況での「A-act」は成功する道理がない。

そんなものやってみないとわからない!と思われるかもしれませんが、実際この状況で「A-act」をしようとすると、

あちらのお客さん
あちらのお客さん

マスター、そちらのお客さんに何か1杯……

湊
ミナト

いや、ウチそういうのやってないんですよね……すいません

で、終了です。

最高に居たたまれない感じになってしまうので、このパターンだけは避けよう。

(case2)あちら常連×こちら初来店

続いて「case2」。あちら(男性)のお客さんは常連さんで、こちら(女性)のお客さんは初来店という場合。

この場合もやはりやめておいた方がいいです。

バーと常連のお客さんとの関係は少し特殊なもので、バーテンダーは常連さんのことをまるで親愛なる友人かのように想い、常連さんはずっとお店が続いて欲しい、それに協力したいと想い、お互いの間には優しい空気が流れていたりもするもの。

新規の女性のお客さんが行きつけのバーに来たとなれば、常連さんからすればその女性の方も常連さんになってくれればいいなと思ったりもするものですが、そこで、その女性客がお店に居ついてくれるように一肌脱ごう!とあちら(常連)の男性が「A-act」を発動させたとしましょう。

確かにそれが上手くいくかもしれない。ただ、前述の通り、そういうのが嫌な女性はその時点でもうお店には来なくなる可能性もあるわけです。

要するに、善意が逆効果になってしまうこともあるということ。よって、この状況でも「A-act」は失敗する可能性が高いですし、場合によってはお互いの信頼関係に傷がついてしまうこともあるので、やめておいた方が無難でしょう。

(case3)あちら初来店(or 複数回)×こちら常連

そして「case3」。あちら(男性)のお客さんは初来店(または複数来店)で、こちら(女性)のお客さんは常連さんという場合。

この場合はいける可能性はあります。

女性のお客さんが常連さんであれば、バーテンダーもあと何杯飲まれるかとか、何のお酒が好きなのかとか、他のお客さんとの相性なんかは大体把握したりもしているので、

湊
ミナト

あちらの方がご馳走したいそうですけど、どうしましょうか?

と、聞きに行くこともできますし、例えばビールやワインなど同じ物しか飲まないという方であり、且つ「A-act」をネタとして受け入れてくれるという、超限定的な場面では、

湊
ミナト

あちらのお客様からです……

と、飲み終わるタイミングを見計らって「A-act」を完遂することもできる訳だ!

ただ、これも前述の通り、あちらの男性が何を目的としているのかがわからなければバーテンダーは動けないですし、ナンパ目的であれば恐らく断られるので、なぜそうしたいのかが伝わる程度は、バーテンダーと話してからではないと難しいでしょう。

よって、この状況は場合によっては成功する可能性アリと言えます。というか、いわゆる「あちらのお客様から」が成功するパターンはこれくらいかもしれない。

(case4)あちら常連さん×こちら常連さん

最後に「case4」。あちら(男性)のお客さんは常連さんで、こちら(女性)のお客さんも常連さんという場合。

この場合はお互いが見知った仲であれば、普通にあったりもします。

例えばボーナスが出たんで飲んで下さい!とか、誕生日なんですか?1杯ご馳走しますよ!とか、そういった具合にですね。

いわゆる「A-act」ではないですが、常連さん同士のコミュニケーションの一つというような、ナンパとか、下心とか、優位性とか、そういった話ではない、本当に気持ちだけの話での「A-act」。

でも、これも立派な「あちらのお客様から」だと私は思いますよ。

今回のまとめ

・あちらのお客様からは基本的にナシ
・お客さんの間で優位性が生まれるのがよくない
・あちらのお客様は、現代にはもういない

ちなみに、「あちらのお客様から」というとお酒を想像すると思うのですが、もっと簡単に成功させる方法もあります。それは、お土産などのお菓子を行きつけのバーに持っていくこと。

こういったお土産などのお菓子をお店側に渡すと、バーテンダーが「あちらのお客様からです」と、他のお客さんにも配ってくれたりもします。それがきっかけで他のお客さんと仲良くなったりすることもあります。

なので、どうしても「あちらのお客様から」がしたいのであれば、お土産を持っていけば簡単にできるぞ!

……と、お土産を食べたいだけのバーテンダーは語った。

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