【とり村見学】手放された鳥が里親を待つ保護施設「とり村」へ行ってきた

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埼玉県にある鳥の保護施設「とり村」。そこでは120羽以上の鳥が、新しい家族との出会いを待ちながら暮らしていました。

飼い主の加齢による病気や海外転勤などの事情、毛引きや叫びといった鳥自体の問題行動など、やむをえない理由によって手放された、もしくは、なんらかの緊急性の高さから救助された鳥たちを保護し、新たな里親を探す活動をしている団体がいます。

埼玉県新座市中野に事務所を構える、認定NPO法人「TSUBASA」です。

今回はわけあって、その「TSUBASA」が運営する鳥の保護施設であり、里親に引き取ってもらえる日を待ちながら、インコなどの多くの鳥たちが暮らしている「とり村」に行ってきました。

鳥さんの里親や引き取りを考えている方のお役に、そして、保護活動をおこなっている「TSUBASA」の活動のお力添えになれればと思い、私がそこで見てきたもの、感じたことを報告したいと思います。

(注:写真はすべて許可をいただいたうえで、鳥さんおよび、ほかの方の迷惑にならないように撮影させていただきました)
目次

(見学前編)とり村を訪れた理由

埼玉県の柳瀬川駅前

好天に恵まれ、青空が広がる週末の昼下がり。ここは埼玉県にある柳瀬川という駅の前で、鳥の保護施設である「とり村」の最寄り駅。

電車で来る人は、ここから無料で送迎をしてもらうこともできるため、私はここで送迎車を待っていたのですが、そもそも今回、なぜ私がここに来たのかというと、飼っているウサギの仲間を探しに……来たわけではなく、母のつきそいで来たのです。

これよりも少し前に、私の実家で20年以上暮らしていたオカメインコが天寿をまっとうし、現世から旅立っていくという悲しい出来事がありました。

鳥好きの母からすれば、鳥のいない生活というのは、とてつもなく空虚なもの。それからは、ふとしたときに鳥のことを思い出してしまうといった、胸にぽっかりと穴が空いた生活を送っていたのです。

そこで、そんな生活から脱却したいと、新しく鳥をお迎えすることを母は考え始めたのですが、次に飼うのであれば、どこかで購入するのではなく、身寄りのない鳥さんを引き取りたいと。

「週末に里親説明会がおこなわれているみたいだから、よかったら、いっしょに来てみない?」

じつは、両親と同居していない私も、とり村に同行したほうがいい理由というものはあり、それは母も知っていたことではなく、のちになって判明することでした。しかしこのとき、そうとは知らないながらも、私のなかに眠るアニマルセンスは、鳥たちの声を聞いたような気がしたのです。

鳥

来いよ、ミナト……。鳥に選ばれし男……

おっと、そんなくだらないことをいっているあいだに、送迎車が来たようです。ようするに私は、このとき、なんとなく誘われたからついて行くことにしたのです。

鳥の保護施設「とり村」に到着

とり村の外観

送迎車に乗って約10分ほどで、とり村に到着。

こちらの建物が「TSUBASA」の活動拠点であり、引き取られた鳥さんたちの家でもあるとり村です。建物の中からは、鳥さんたちの鳴き声も聞こえてきます。

とり村の外にいるオウム

入り口の前では、大きな鳥さんがお出迎え。

この鳥さんは、体を揺らしながら歌を歌ったり、「こんにちは」などの日本語を使いこなすかなりのやり手。たまに大きな声で叫びます。

ちなみに、この鳥さんはたしか、とり村のマスコット的な存在で、引き取りのリストには入っていなかったと思います。

そのほかにも、健康上の理由などから、とり村にはいるけれど引き取りはできないという鳥さんもいて、引き取りが可能(里親募集中)となっている里親待ちリストは、これも後述しますが、「TSUBASA」HP内の、「MTB参加鳥一覧」という項目からも確認することができます。

とり村の屋内

さて、私はさっそくとり村の中へ。

建物内に入ると1階はこのようになっていて、手前は鳥の餌などが販売されています。中央は里親希望の相談などをするスペースで、奥は飼い主さんが愛鳥を連れて遊びに来ることができる「バードラン兼里親説明会の会場」となっています。

バードラン兼里親説明会の会場

こちらがバードランを兼ねた里親説明会の会場。

今回は私たちを含め、説明会に参加されていた方はけっこう多く、だいたい20~30人ほどの方が来られていました。用意されていた椅子がおおかた埋まるくらいです。

そして、参加者がすべて集まったところで説明会は開始。以下、里親説明会の内容について、くわしくお話ししておきます。

里親説明会の流れと内容

「TSUBASA」が引き取られた鳥たちのために設けている、新しい家族を探すための里親制度は、“Meet The Bird” 略して「MTB」と呼ばれています。

「MTB」では、「人が鳥を選ぶのではなく、鳥が人を選ぶ」をコンセプトにしているそうで、少しでも鳥さんたちのことを人に知ってもらいたいという想いで活動されているそうです。

「MTB」は基本的には月に1回、第4土曜日か第4日曜日あたりにおこなわれ(その月によっても異なるもよう)、説明会の所要時間は約40分間。少し長いなと感じるかもしれませんが、これはあっという間です。

また、里親説明会の流れについては、おおまかに、以下の3つの内容に分かれて進行していきました。

  1. 里親制度について
  2. 里親になるための流れ
  3. 鳥の十戒

1. 里親制度について

「TSUBASA」が設けている里親制度は、基本的にはとり村で暮らしているすべての鳥さんが対象で(「MTB」に出ていない鳥さんも対象)、引き取りは原則として一羽のみ。

ただし、ペアなどで暮らしている鳥さんは、はなればなれになってしまうと、逆に体調をくずしてしまったりすることもあるため、ペアなどでの引き取りとなる場合もあるそうです。

また、「TSUBASA」が保護してから日が浅く、性格が不明な鳥さんや、病気の治療中の鳥さん、ワシントン条約で譲渡が禁止に指定されている鳥さんの引き取りは不可となっているそうなので、こういった鳥さんはとり村にいても、里親になることはできません。

引き取りにかかる費用

とり村での引き取りには、市場価格の半分~3分の2+健康診断料の費用と、場合によっては安くはないお金がかかります。しかしこれには、大きな理由があります。

私が訪れた当時は120羽以上とうかがいましたが、それからも数は増え、現在とり村で生活している鳥さんは150羽以上。

その餌代や世話代といった施設の運営にかかる費用はすべて、寄付や物品の支援、ボランティア、そして引き取りの費用でおぎなっているからです。施設に残る鳥さんたちが、新しい家族と出会うまで生活ができるのも、この引き取りでの費用があるからこそだといいます。

里親が見つかるまで2年以上、長ければ10年以上もかかる場合もある。そのため、この引き取り費用は、とり村で暮らす鳥さんたちにはなくてはならない、必要なお金なのです。

2. 里親になるための流れ

里親になるための流れですが、これは最低でも3回はとり村に行く必要があり、期間も多少長くなります。しかしこれも、すべては鳥さんの幸せを思ってのこと。詳細は以下のとおりとなっています。

MTB里親説明会に参加

まずは毎月1回ほど、13時ごろからおこなわれている里親説明会に参加します。説明会の日程などはTSUBASA公式サイトから確認することができ、初めての場合は、申し込みフォームから事前に申し込みをおこなう必要があります。

MTB後に仮登録へ

実際に鳥さんと出会ってみて、里親になりたいと思った鳥さんがいたら、その場で仮登録へと進みます。仮登録では、いくつかの質問等の面談があり、面談終了後はその内容をもとに、「TSUBASA」のスタッフによる審査がおこなわれます。

同居している家族同伴のうえ、2次面会へ

仮登録から約2週間後(早ければ1週間以内)、審査を通過した場合は「TSUBASA」から連絡が来るので、ここでは同居している家族とともにふたたびとり村へ行き、そこで2次面会がおこなわれます。

このとき、同居している家族がいなくても、別居している家族がいる場合は、誰かしらといっしょに来てもらいたいとのことでした。

これに関しては、万が一鳥さんを引き取った人が世話をできなくなった場合、別居している家族が、その世話を引き継げるかどうかという話になるからだと思います。

最初のほうでふれた私も同行したほうがよかった理由というのは、じつはこのへんにあります。

ホームステイの準備

2次面会を経ても里親になる意志が変わらなければ、鳥さんといっしょに暮らすお試し期間のようなものである、約1~2週間のホームステイの準備に取りかかります。

ホームステイの準備は、鳥さんの健康診断(感染症予防のため、すでに鳥さんを飼っている場合は、おうちの鳥さんもおこなう)や、ホームステイ期間中に鳥さんが暮らすケージの用意など。

鳥さんが暮らしていたケージや餌などは、生活環境をできるだけ変えないために配達で送ってくれるそうなので、ホームステイ期間中は、新しくなにかを買う必要はありません。

鳥さんの引き渡し&ホームステイ

再度とり村へ行き(3回目)、鳥さんを引き受けてからホームステイが始まります。

ホームステイ期間中は、まわりに仲間がいなくなったことで餌を食べなくなるなどの健康問題、反対に、まわりに鳥がいなくなったことで本性をあらわし、鳴いたり攻撃的になったりするなどの問題行動(とくに大型の鳥さんはときどき「絶叫」する習性がある)が起きる場合もあるらしく、毎日のレポート提出が必須となっています。

すでにおうちに鳥さんがいる場合は、お互い病気の感染などをふせぐため、ホームステイ期間中は、鳥さん同士を同じ室内に置いてはいけないそうです。

問題がなければ里親決定!

ホームステイが無事に終われば、「TSUBASA」と契約後、正式に里親として鳥さんのお迎えが決定します。

しかし、なにかしらの問題があって、残念ながら里親が決定しなかった場合は、とり村に戻る前に、もう一度鳥さんに健康診断を受けさせることになっています。

ただ、そのときはうまくいかなかったとしても、別の鳥さんの里親を希望してくれるのは歓迎なので、よかったらまた「MTB」に来てくださいとのことでした。

3. 鳥の十戒

以上の説明のあと、最後に「鳥の十戒」というものが紹介されて、里親説明会は終了となります。

鳥の十戒とは、2001年にアメリカで開催されたシンポジウムで、愛鳥家として著名なジェーン・ホランダーという女性から、日本の愛鳥家と愛鳥のためにと「TSUBASA」の代表者が託されたものだそうで、「TSUBASA」では、この十戒を大切にしているそうです。

十戒は以下のようなものでした。

鳥の飼い主への十戒(鳥の視点から)

1. 私は10年かそれ以上生きるでしょう。飼い主と別れるのは大変辛いのです。お家に連れて帰る前にその事を思い出して下さい。

2. あなたが私に望んでいることを理解する時間をください。 

3. 私を信じてください-それが私の幸せにとって重要なのです。

4. 長い間私に対して怒らないでください。罰として閉じ込めたりしないでください。あなたには仕事と娯楽があり友達もいます。私にはあなたしかいないのです。

5. 私に時々話しかけてください。あなたの言葉が理解できなくても、話しかけてくれればあなたの声はわかります。

6. あなたがどのように私を扱っても、私はそれを忘れません。 

7. 私を叩く前に、私にはくちばしがあってあなたの手の骨をたやすく咬み砕いてしまうこともできるということを思い出してください。でも私は噛みません。

8. 私を協力的でない、ガンコ、だらしないと叱る前に、そうさせる原因があるかどうか考えてみてください。たぶん適切な食べ物をもらっていないか、ケージにいる時間が長すぎるのです。 

9. 私が年老いても世話をしてください。あなたも年をとるのですから。

10. 私が最後に旅立つとき、一緒にいてください。“見ていられない”とか“自分のいないときであってほしい”なんて言わないで。あなたがそこにいてくれれば、どんなことも平気です。あなたを愛しているのだから。

TEN COMMANDMENTS OF PARROT OWNERSHIP
– From a parrot’s point of view –
By Jane Hallander出典:鳥の飼い主への十戒

動物たちと暮らし、息を引き取るところを見てきたからこそ、そして、今後もかならずその時が訪れることがわかっているからこそ、こみ上げるものがある。

鳥に選ばれし男ミナト、これには、涙を禁じえませんでした。

今回のまとめ

・鳥の保護施設である「とり村」は埼玉県新座市にある
・里親制度は「人が鳥を選ぶのではなく、鳥が人を選ぶ」がコンセプト
・正式な里親までは最低3回は「とり村」へ行き、だいたい1か月前後かかる

とり村見学レポートの前編はここまでとなります。

今回は里親説明会の話がメインとなりましたが、次回は説明会を終えて、いよいよ「MTB」へと突入。たくさんの鳥さんたちと出会い、そして私はそこで、ある一羽の鳥さんと出会いました。

「MTB」以降の詳細については、次回にお話ししたいと思います。

また、認定NPO法人TSUBASAのホームページからは、里親説明会の申し込み以外にも、イベントの参加、バードランの会員登録などもおこなうことができます。興味のある方は、ぜひのぞいてみてください。

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