スコッチ? シングルモルト? ブレンデッド? それもウイスキーなの?? なんていう疑問にお答えしましょう。
ウイスキーは大麦や穀類を原料とした蒸留酒のことをいい、5つの生産国でつくられるものが中心となっていますが、そのなかでもとくに人気が高いのが、スコットランドでつくられる「スコッチウイスキー」です。
スコッチウイスキーは、生産される方法の違いなどによって、「シングルモルト」と「ブレンデッド」という2つの種類に大きく分けられ、正直いうと前者のほうが人気はあるものの、それぞれが多くのファンを獲得している魅惑のウイスキー。
ただ、この分類方法が少々ややこしく、「スコッチ・シングルモルト・ブレンデッド・ウイスキー」という4つの用語が出てきているので、初心者の方はこのへんでわけがわからなくなってしまい、飲まずに敬遠してしまうこともあるように思います。
しかし、これもわかれば簡単な話。今回は、少しわかりづらいスコットランドのウイスキーについて、その分類や特徴、味わいなど、それぞれの違いについてわかりやすく解説していきます。
スコッチウイスキーの特徴と名前の由来
冒頭でも少しふれましたが、スコッチウイスキーとはなんなのかというと、イギリス北部のスコットランド地方でつくられたウイスキーの総称を指し、その名前の意味や由来は、スコットランドでつくられたウイスキーということで、スコッチ(=スコットランド産の)ウイスキーと呼ばれています。
通称は「スコッチ」と、後半は略して呼ばれるのが一般的で、スコッチがどうだ、スコッチがこうだ、というのは、ようするにスコットランドのウイスキー(スコッチウイスキー)を、略称で呼んでいるだけの話。
「スコッチ=スコッチウイスキー=スコットランドのウイスキー」という図式にしてみると、わかりやすいかもしれません。
また、その特徴は非常に個性的で、製造過程では原料を乾燥させる際、基本的にはピート(泥炭)というものが使用されるのですが(後述します)、スコッチウイスキーはそれによって、ピートに由来する独特のフレーバーを身にまとうのです。
これが、スコッチウイスキー最大の特徴かつ味の決め手でもあり、多くのファンを魅了する1つの要素にもなっています。
独特な味わいを生み出すピート(泥炭)
(参考:切り出されたピート)
では、ピートとはなんなのでしょうか。これは、スコットランドの荒野に花を咲かせる植物である、ヘザーやシダ・コケなどの水生植物が枯れ、何千年にもわたって堆積してできた「泥炭(でいたん:石炭になる前のもの)」のことをいいます。
スコッチウイスキーではもともと、層になっている泥炭を切り出して乾燥させ、それを燃やした熱で、原料となる麦芽を乾燥させてきました。
そしてこのとき、燃やした泥炭から出る煙が麦芽に染み込むことで、スコッチウイスキーには独特の煙のようなフレーバーが生まれるのですが、このピート由来の燻香こそが「ピート香(こう)」や「スモーキー・フレーバー」と呼ばれる、スコッチが持つ特有のかぐわしいフレーバーなのです。
ピートをたき込む量や、たく・たかないはつくり手によっても異なり、いっさいたかないタイプのスコッチもあります。したがって、すべてのスコッチから煙っぽい香りがするのかというと、じつはそういうわけではありません。
ピート香が強いタイプは、歯医者のにおいだとか、ヨードチンキ(消毒薬)の味だとかよくいわれているな
・スコッチウイスキーはスコットランドでつくられているウイスキー
・スコッチウイスキーの特徴はピート由来のスモーキーフレーバー
スコッチがピートを使用することになったルーツ
→【密造酒時代】スコッチウイスキーが100年間に渡る密造を強いられた理由
シングルモルトとブレンデッドの違いと分類方法
それではいよいよ、今回の本題である、「シングルモルト」と「ブレンデッド」の違いについて説明していきます。
これらは、スコッチウイスキーを大きく分類したときに出てくる種類を指していて、両方とも同じスコッチウイスキーです。先ほどの話と同じように、「シングルモルト(ウイスキー)」、「ブレンデッド(ウイスキー)」と、一般的には後半の「ウイスキー」を略して呼んでいるだけで、両者ともにスコットランドのウイスキーで間違いありません。
先ほどの例でいうと、「スコッチウイスキー=(シングルモルト or ブレンデッド)」という図式であらわすことができると思います。
また、これらの分類方法になると少しむずかしくなるので、ここからは、画像を見ながら2つのタイプのウイスキーについて理解を深めていきましょう。
用語のくわしい説明はあとまわしにすることにして、ここでは、先に全体のニュアンスをつかむことができればOK。
たとえば、スコットランドには「A、B、C」という3つの蒸留所があり、A蒸留所ではそのまま飲んでもおいしいウイスキー(モルトウイスキー)を、B蒸留所でも同じくそのまま飲んでもおいしいウイスキー(モルトウイスキー)を、C蒸留所ではおもに味をととのえるためのウイスキー(グレーンウイスキー)をつくっていたとします。
このとき、A蒸留所という、1か所の蒸留所内でつくられた、そのまま飲んでもおいしいウイスキーだけを混ぜてつくったものが「シングルモルト」。
A、B蒸留所という、複数の蒸留所でつくられた、そのまま飲んでもおいしいウイスキーと、C蒸留所でつくられた、味をととのえるウイスキーを混ぜてつくったウイスキーは「ブレンデッド」。
以上です。
ようは、スコットランドつくられるウイスキーは、基本的には蒸留所をまたぐかまたがないか(1か所でつくられるか複数個所でつくられるか)の違いで、シングルモルト・ブレンデッドに分かれる、というわけです。
みかんジュースに置き換えるとわかりやすい
先ほどの画像の場合、よけいな用語も入ってしまっているので、まだよくわからないという方もいらっしゃると思います。そこで、さらにわかりやすくしたものがあるので、そんな方は、こちらの画像をごらんください。
みかんの生産量トップ3の「和歌山、静岡、愛媛」では、みかんジュースをつくっています。
和歌山では、県産オリジナル品種のみかんだけを使用した、個性的な味わいが特徴のシングルみかんジュース「WAKAYAMA」が大人気。(シングルモルト)
一方、和歌山、静岡の個性的なみかんと、そのままでは出荷することができなかった愛媛のわけありみかんを使い、バランスをととのえて飲みやすくしたブレンドみかんジュース「MIKAN-BLEND」も同じく人気となっています。(ブレンデッド)
シングルモルトとブレンデッドの関係は、まさにこんな感じ。県名を蒸留所に、みかんをウイスキーに戻して考えれば、これらの違いはもうバッチリですね。
なお、わかりやすいたとえ話として「わけあり」という言葉を使いましたが、調整用のグレーンウイスキーは、けっしてわけありのウイスキーということではなく、愛媛のみかんも、おいしいものばかりということは、ご留意いただきたいと思います。
みかんジュースが飲みたくなってくるな
・シングルモルトは単一の蒸留所でつくられたモルトウイスキーだけでつくられる
・ブレンデッドは複数の蒸留所でつくられたモルトウイスキーと、調整用のグレーンウイスキーでつくられる
スコッチウイスキーの種類と用語解説
それでは最後に、シングルモルトとブレンデッドの特徴や違いについて、もう少しくわしく、そしてほかにもあるスコッチの種類や、先ほど出てきた用語についても解説していきます。
これも、先ほどの画像を見ながらだとわかりやすいので、それらを見ながら、まずはスコッチウイスキーの原料となるウイスキーから見ていきましょう。
モルトウイスキーとグレーンウイスキー
スコッチウイスキーは、モルトウイスキー同士、またはモルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜ合わせてつくられるのですが、原料となるウイスキーは、それぞれ異なる特徴を持っています。
モルトウイスキー
モルトウイスキーとは、大麦麦芽のみを原料につくられるウイスキーのことで、100を超えるスコットランドの蒸留所でつくられています。
その最大の特徴は、ピートのたき込み具合から蒸留釜の形状、蒸留所がある気候まで、すべてが蒸留所によって異なることから、生まれてくるウイスキーがそれぞれ「個性」を持っていること。
そのため、モルトウイスキーは、ラウド(声高な)スピリッツとも呼ばれています。
グレーンウイスキー
グレーンウイスキーとは、大麦麦芽と、トウモロコシや小麦といった穀類を原料につくられるウイスキーのことで、モルトウイスキーの蒸留所の数と比べると、10分の1以下の数しかありませんが、規模は大きく、設備も近代的な蒸留所でつくられています。
その特徴は、モルトウイスキーとは反対に、風味はライトでおだやか。
そのため、グレーンウイスキーはサイレント(寡黙な)スピリッツとも呼ばれ、基本的には、モルトウイスキーとのブレンド用につくられています。
ヴァッティングとブレンド(ブレンディング)
続いて、スコッチの原料となるウイスキーを混ぜ合わせる用語である、ヴァッティングとブレンド(ブレンディング)について解説します。
ヴァッティング
モルトウイスキーは、貯蔵環境などによって、ひと樽ごとに個性や風味が微妙に異なるため、最終的には、モルトウイスキー同士を混ぜ合わせる(ブレンドする)ことで風味のバランスをととのえるのですが、この作業のことを「ヴァッティング」といいます。
ヴァット(Vat)とは、大桶という意味を持つ言葉で、モルトウイスキー同士を大桶に入れて混ぜ合わせることから、ヴァッティングと呼ばれているのですが、この用語はあくまでも、モルトウイスキー同士を混ぜ合わせる場合にかぎって使用されます。
ブレンド(ブレンディング)
個性的なモルトウイスキーとマイルドなグレーンウイスキーを混ぜ合わせ、ウイスキーを飲みやすく、そして飲み飽きない風味にととのえる作業を「ブレンド(ブレンディング)」といいます。
混ぜ合わせるという意味ではヴァッティングと変わりませんが、モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜ合わせる場合はヴァッティングとは呼ばず、ブレンド(ブレンディング)と呼び分けられています。
シングルモルトとブレンデッド
今回の本題である、スコッチウイスキーを分類すると出てくる、シングルモルトウイスキーとブレンデッドウイスキーについてです。
シングルモルトウイスキー
(シングルモルトを代表する銘柄の1つ、グレンフィディック12年)
単一の蒸留所内でつくられた個性豊かなモルトウイスキー同士を、ほかの蒸留所のものとは混ぜ合わせずに、個々の蒸留所内でのみ混ぜ合わせる(ヴァッティングする)ことでつくられるウイスキーのことを、シングルモルトウイスキーといいます。
その特徴はズバリ、1本1本のウイスキーが、蒸留所によって異なる個性を放っていること。
強烈ではげしい個性を持つものから、やさしさに満ちあふれているものまで、シングルモルトの風味は千差万別。ひとたび口に含めば、その個性におどろかされ、蒸留所の景色や、そこで働くひとびとにまで思いをはせることもできることもできるかもしれない。それが、シングルモルトの持つ魅力です。
後半のウイスキーは略して「シングルモルト」と呼ばれることが多く、できあがった製品は、蒸留所の名を冠しているのが一般的となっています。
ブレンデッドウイスキー
(ブレンデッドを代表する銘柄の1つ、ジョニーウォーカーの黒ラベル)
通常は数十種類の個性豊かなモルトウイスキーと、数種類のマイルドなグレーンウイスキーを混ぜ合わせる(ブレンドする)ことでつくられるウイスキーを、ブレンデッドウイスキーといいます。
その特徴は、先ほども見てきたように、飲みやすく、そして飲み飽きないこと。
強烈な個性は、時として飽きを呼んでしまう場合もありますが、そんなときは、飲み飽きないものを飲みたくもなるというもの。ひとたび口に含めば、落ち着ける場所、帰って来れる場所に、今日も戻ってきたことを思い出させてくれるような気もする。それが、ブレンデッドの持つ魅力です。
シングルモルトと同様、後半は略して「ブレンデッド」と呼ばれることが一般的となっています。
ヴァッテッドモルトとピュアモルト(ブレンデッドモルト)
最後に、これはあまり覚えなくてもいいと思うのですが、スコッチウイスキーをこまかく分類すると出てくる、ヴァッテッドモルトとその他について解説しておきます。
ヴァッテッドモルトとピュアモルト(ブレンデッドモルト)
ヴァッテッドモルトとは、複数の蒸留所でつくられたモルトウイスキー同士を混ぜ合わせてつくられるウイスキーのことをいい(シングルモルトに近いけれど少し異なる、ブレンデッドのグレーンウイスキーなしのような感じ)、これもスコッチウイスキーに分類されますが、位置づけとしてはやや特殊な部類となっています。
ピュアモルトとは(画像には載せていませんが)、モルトウイスキー100%でつくられるウイスキーのことです。
ちなみに、ピュアモルトに関しては、その分類方法から、シングルモルトもヴァッテッドモルトも、ピュアモルトになるということにもなるのですが(もともと業界内では、ピュアモルトはヴァッテッドモルトのことを指して呼んでいたそうです)、2009年に制定されたスコッチウイスキーの規則で、「ピュアモルト」という言葉の使用が禁止となり、両者は「ブレンデッドモルト」で統一されることになっています。
そのため、このへんは覚えなくても大丈夫ですし、ブレンデッド(ヴァッテッド)モルトもあまり見かけないマイナーなウイスキーなので、これらは頭の片隅にでも置いておくくらいで大丈夫かなと思いますよ。
今回のまとめ
・大きく分けるとシングルモルトとブレンデッドに分類される
・シングルモルトは個性的で、ブレンデッドは飲みやすい
今回の話で、スコッチウイスキーがなんなのか、そして、スコッチウイスキーを分類すると出てくる「シングルモルトとブレンデッド」の違いや特徴についても、だいたいおわかりいただけたのではないかと思います。
最後に少しふれたように、スコッチにもいろいろありますが、基本的によく見かけるのはシングルモルトとブレンデッドの2種類なので、この2つだけ覚えておけばとくに問題はないと思いますよ。
また、よくわからなくなったときは、みかんジュースの話を思い出してください。この話だけで、スコッチの分類という大きな疑問はきっと解決するはずです。
身近によくわからないという方がいたときは、みかんジュースの話をしておけば、だいたい理解してくれると思いますよ。
シングルモルトのエリアごとの特徴などはこちら
→【シングルモルト】スコッチウイスキー6大生産エリアの特徴を地図で解説
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