シングルモルトのさらなる魅力の扉を叩きたい……。ならば、スコッチウイスキーが生産されるエリア情報を網羅しよう!
スコッチウイスキーのなかでも、バラエティーに富んだ味わいからファンも多いシングルモルト。風味豊かなモルトウイスキーから生まれてくる、唯一無二の個性がその魅力となっていますが、じつはシングルモルトの個性は生産地、つまり蒸留所のあるエリア(地域)によってある程度の傾向があります。
その生産エリアというのはおもに6つ。
「6大産地」ともいわれるこの生産地区分を知っていると、シングルモルトの魅力をエリアごとでも感じることができるようになり、さらには味の傾向から、好みのスコッチを探しやすくもなるのです。
今回は、この6つに分けられたスコットランドのウイスキーの生産地区分(スコッチウイスキーの蒸留所が多い地帯)を地図で確認しながら、それぞれの地域が持つ特徴や傾向について、代表的な銘柄とあわせて見ていくことにしましょう。
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スコッチの生産地区分と6つの生産エリア
スコットランドは日本の北海道に匹敵する広さを持ち、その広大な土地には100を超える蒸留所があるのですが、そもそもの話、スコットランドがどこにあるのかよくわからないという方も少なくはないように思うので、本題に入る前に、まずはこちらの画像をごらんください。
これは見てのとおりで、英国(イギリス)の地形ですね。
英国はスコットランド、イングランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの地域で構成されていて(アイルランドは独立した国ですが、北東部にある北アイルランドはイギリス領)、英国の最北部にあるのがスコットランドです。
もともとはスコットランドも独立した国でしたが、1700年代にイングランドに併合されてからは、英国を構成する1つの地域となっています。
それでは、スコットランドの場所を確認できたところで、次はスコットランドの地形を拡大し、6つに分けられた生産エリアを見てみましょう。
スコットランドにおけるモルトウイスキーの伝統的な生産地区分はこのようになっていて、生産エリアは、一般的には以下の6つに分けることができます。
- ハイランド(Highland)
- ローランド(Lowland)
- スペイサイド(Speyside)
- キャンベルタウン(Campbeltown)
- アイラ(Isley)
- アイランズ(Islands)
もともとは酒類生産免許に関係した規制の違いに由来し、伝統的な地域の区分は「ハイランド・ローランド・キャンベルタウン・アイラ」の4つに分けられていたのですが、現在はハイランドの中にある「スペイサイド」を独立させ、スコットランドの島々で構成される「アイランズ」を加えた6つで分けるのが一般的となっています。
シングルモルトになじみがないと、なんの話かサッパリになってしまうと思うのですが、このへんはウイスキーを飲んでいれば勝手に覚えていくので、そこまでむずかしく考えなくても大丈夫です。
スコッチウイスキーのシングルモルトは、おもに6つのエリアでつくられているということがわかればOKでしょう!
そしてここからは、各エリアでつくられるシングルモルトの特徴や傾向について、エリアごとの代表的な銘柄とあわせてご紹介していきます。
飲めばわかる。ただそれだけのことだ
ハイランド(Highland)
スコットランドの北部に位置するハイランド地方は、非常に大きな面積を有し、その数約30と、多くの蒸留所が集まる巨大な産地。そしてこのエリアでつくられているウイスキーは、「ハイランドモルト」と呼ばれています(地域名+モルトの呼び方は以下すべて同様)。
ハイランドはその広大さから、一般的に東西南北の4地域に分けられますが、当然ながら、面積が広いことから地域ごとには大きな変化があり、ハイランドモルトの特徴をひと言でいいあらわすのは、ややむずかしくなっています。
しかし、東西南北で分けて考えれば、北ハイランドでは力強い辛口、東および南ハイランドはおだやかでフルーティー、西ハイランドは潮っぽい海岸的な傾向がある、ということもできるでしょう。
代表的な銘柄には、「グレンモーレンジ」や「クライヌリッシュ」などがあります。
ローランド(Lowland)
ハイランドの境界線から南に広がるエリアがローランド地方で、エリアの面積はハイランドに次ぐ広さを有していますが、蒸留所の数は少なく、有名どころは3つとなっています。
ローランドはおだやかな気候から、つくられるウイスキーもソフトでメロー。やわらかな草っぽさを感じさせる味わいで、とても飲みやすい傾向があり、このエリアのウイスキー(ローランドモルト)は、シングルモルト初心者の方にもおすすめ。
代表的な銘柄には、「オーヘントッシャン」や「グレンキンチー」などがあります。
スペイサイド(Speyside)
スペイサイドは、エリアの面積は大きくはないものの、全エリアのなかで最も多い約50の蒸留所が集まる非常にホットなエリア。
良水に恵まれ、清涼な空気がウイスキーの熟成に適し、かつ大都市から遠く離れた渓谷だったため、かつては密造酒の一大生産地だった背景があります。
スペイサイドモルトは、洗練されたエレガントさと、磨き抜かれて抑制されたかぐわしいピート香を持ち、花や果実を思わせるフルーティーなものが多いのが特徴。シングルモルトの入門にも最適です。
代表的な銘柄には、「グレンリベット」や「グレンフィディック」、「マッカラン」などがあります。
スコッチウイスキーの密造時代はこちら
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キャンベルタウン(Campbeltown)
かつては30を超える蒸留所があり、小さい町ながらモルトウイスキーの中心地として栄えたキャンベルタウン。
しかし、第一次世界大戦や世界恐慌などのウイスキー生産に不利な社会的背景や、アメリカの禁酒法が需要を急激に押し上げ、品質よりも量を重視した生産によって「粗悪品」というイメージがついてしまったことなどが影響し、大半の蒸留所は衰退、閉鎖の憂き目にあうこととなってしまい、現在は3つの蒸留所のみが稼働中。
とはいえ、逆境のなかでも生き抜いてきた蒸留所でいまもつくられるウイスキーは、伝統を受け継ぐ名酒ぞろい。キャンベルタウンモルトは、香り豊かで塩っぽい風味があるのが特徴で、香りがいいことから、女性の方にもおすすめできます。
代表的な銘柄には、「スプリングバンク」や「グレンスコシア」などがあります。
アイラ(Isley)
日本でいうと淡路島くらいの大きさの島に、最近新しくできた1つの蒸留所を加えて、現在は9つの蒸留所が稼働中。
アイラモルトは、豊富なピートをたき込まれ、海風のなかで熟成されることから、強烈なピート香や潮っぽさを感じさせるものが多く、その独特な薬品臭はハマるとクセになる中毒性があり、熱狂的な信者も数多く存在します。アイラ島の蒸留所をめぐる観光も大人気。
代表的な銘柄には、「ラフロイグ」や「アードベッグ」、「ボウモア」などがあります。
アイランズ(Islands)
アラン島、ジュラ島、マル島、スカイ島、オークニー諸島、最近ではルイス島という島も含め、スコットランド周辺の島々で構成されるのがアイランズで、現在は7つの蒸留所が稼働中。
アイランズは、かつてヴァイキングが支配したオークニー諸島や、霧の島という異名を持つスカイ島、野生の鹿が多数生息するジュラ島など、それぞれの島がどれも個性的で、島によって地理も文化も異なります。
そのため、アイランズモルトに共通する特徴はあまりないのですが、これもハイランドと同じ要領で全体的に見ると、海岸的な特徴を持つ傾向にあるということができるでしょう。
代表的な銘柄には、「タリスカー」や「ハイランドパーク」などがあります。
今回のまとめ
・生産エリアによって特徴にはある程度の傾向がある
・エリアで楽しむのもおもしろいのでおすすめ
シングルモルトの生産エリアの特徴を簡単にまとめると、ハイランドはバランス、ローランドはやさしい、スペイサイドはフルーティ、キャンベルタウンは香り豊か、アイラは薬品臭、アイランズは島っぽい、と、もちろん例外もありますが、だいたいはこのような感じになると思います。
実際に飲んでみるときに、どこのエリアのモルトなのかを少し気にしてみると、好みのエリアが見つかったりするなど、シングルモルトをより深く楽しめること間違いなしです。
慣れてきたら、「ハイランドでなにか……」と、エリアで注文してみるのもありでしょう。ぜひ、いろんなエリアのシングルモルトを試してみて、お気に入りのエリア、そしてお気に入りの1本を見つけてみてください。
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