実家の浴室はホワイトアント(シロアリ)によって破壊されました。修理に3桁万円かかったとかなんとか……。
うだるような暑さをものともせず、進軍を始める黒の軍勢「アリ」。奴らは駆除しても無限に湧き続け、仲間を次々と地中から召喚し、隊列を組んで餌場まで進むタフなソルジャーです。
外を歩いているアリは一見害はないようにも見えますが、一度家の敷地内に入って来ようものなら話は別で、種類によっては風呂場を破壊したり、変な場所に巣をつくったり、人や犬などのペットに噛みついたりと、結構ヤバイのです。
やられる前にやるしかない……。そう、夏は生き残りを賭けた、危険生物との戦いの季節なのです。
アリの習性と生態
突如として地中から出現し、一度餌場を見つけようものなら、たとえ仲間がどれだけ討ち取られようとも進軍を諦めない「アリ」は、死の恐怖から解放された、ある意味最強の部隊と言えるかもしれません。
特に、彼らの最大の強みである圧倒的な兵力数は驚異的で、視界に映るアリを全て駆除したとしても、翌日には完全にリセット。まるで亡霊を見ているかのような数の暴力で家の敷地内に侵入してきます。
しかし、彼らは亡霊でもなんでもないのです。彼らの生態を知れば、私たちは彼らの進軍を食い止めるができます。ということで、まずはアリの習性・生態について見ていきます。
ロマンティックなアリの生態
アリは「コロニー」と呼ばれる巣の中で、女王アリ・働きアリ・兵隊アリなどの役割分担をしながら集団で社会生活を送っています。群れのボスでもある女王は、1コロニーに1女王が基本で、女王アリが卵を産み続けることで群れは大きくなっていきます。
また、夏ごろになると「新女王の門出」なるイベントがあり、メスとオスの羽アリは「結婚飛行」と呼ばれる空の旅に出かけます。
この旅は、メスとオスが空中で愛し合い、メスが種を確保するというロマンティックな旅。ところが、オスはその目的を果たすと力尽きて死亡し、場合によってはメスや生まれてくる子たちに喰われ、養分となってしまうのです。
オスにとってこの旅は、死が約束された新婚旅行であり、二度と土を踏むことはない片道切符のハネムーン。しかし、それこそがオスの存在意義であり、オスはこのためだけに生まれ、これによって死んでいくのです。
そしてその後、地に降り立った新女王は羽を落としてコロニーを築き上げ、アリたちは増えていきます。
ちなみに、アリのオスは本当にこのためだけに生まれてくるので、巣で生活する働きアリは全てメス。死を恐れないアリの精神は、死の旅に出たオスから受け継がれているかもしれません。
全部隊の95~97%は地中で待機している
新女王によって築かれたコロニーではアリは爆発的に増えていき、量産された働きアリは仲間たちを食わせていくため、外に餌を探しに出るようになります。
そして餌場を見つけたアリはフェロモンという化学物質で足跡を残し、仲間に餌場のルートを示します。時々アリ同士が立ち止まって接触し、頭突きのような動きをしているのは、触角を使ってお互いが仲間なのかを識別しているのです。
こうして餌場に突き進むアリの隊列が出来上がるわけですが、ここで注目すべきは、実は地上で活動しているアリは全部隊の3~5%にしかならないということ。
つまり、地上にいるアリを殲滅したところで、いくらでも地中から湧き出る次の部隊が控えているのです。これこそが奴らを亡霊と錯覚させるトリックであり、そして、私たちが得た突破口でもあります。
働かないアリは常に2割いる
また、これは余談ですが、働きアリにはある法則があります。その名も「働きアリの法則」。
これは、全体のアリの2割がよく働き、6割は普通に働き、2割は仕事をサボるというもので(2:6:2の法則とも)、よく働くアリの2割を間引けば残りの8割のうち2割がよく働くアリになり、よく働くアリだけを集めればそのうちの2割がサボるようになり、サボるアリだけを集めればそのうちの2割がよく働くアリになるという、アリのやる気は常に2:6:2の割合に分かれるというもの。
働くアリがいるからこそサボるアリが出てくるのか、それともサボるアリがいるからこそ働くアリが出てくるのか。
それはよくわかりませんが、社会の厳しさを教え込んでやるとするならば、おまえたちが仕事をサボっている間にコロニーは滅びるのだ、ということです。どういうことかは後述します。
危険なアリたちに注意!
さて、アリの生態はこんなところで十分でしょう。それでは早速駆除を開始……といく前に、アリによっては用意した武器が効かない場合があるので、いくつかの危険なアリについて確認しておきたいと思います。
奴隷を狩るサムライアリ
特に私たちにとっての脅威ではないのですが、三日月型の牙を持ち、その姿はまるで「独眼竜」で知られる伊達政宗の兜を思わせるサムライアリ。
このアリは他のアリ(クロヤマアリ)の巣を襲撃、アリの蛹(さなぎ)をかっさらうと、自分たちの巣で育てて使役するという「奴隷狩り」をすることで知られています。
また、サムライアリの新女王はクロヤマアリの巣に単身乗り込み、元々いた女王の首を取ると、自分が女王の座につくというコロニーの「乗っ取り」までも行います。
ただ、サムライアリは自分で餌を食べることもできないらしく、他のアリを使役しなければ生きてはいけないそうなので、こうした行動をするようです。私たちに牙をむくわけではなく、そして自然のことなので、もし見つけても放っておいてあげよう。
風呂場を破壊するシロアリ
シロアリとは名ばかりで、こいつらは「G」の仲間です。私の実家の浴室はこいつらによって破壊され、それ故に私は時々、実家のアリを駆除しにいくのです。
シロアリは湿気を好むために浴室が狙われやすく、女王・働きアリ共に長生きすることでも知られ、繁殖力も強い危険生物。1匹でも見つけたら巣がある可能性を疑ったほうがいいようです。
通常の殺虫剤などでは効かないこともあるので、こいつらを駆除・予防するためにはシロアリに効くもの、シロアリ専用のものを使用する必要があります。連鎖駆除効果で仲間や巣にも作用する「シロアリアース」がオススメ。
危険な外来種アルゼンチンアリ
アルゼンチンアリは南米原産の特定外来生物で、体色は黒褐色、世界および日本の侵略的外来種ワースト100に選ばれている危険なアリ。
その特徴は多女王制(女王アリが複数)による超巨大コロニーの形成、地中以外にも巣をつくる適応能力の高さ、非常に強い攻撃力で生態系を破壊するなど、とにかくヤバいアリです。
外では植木鉢や、家の中ではカーペットの下などを巣にしてしまうこともあるというため、もしも発見した場合はすぐに駆除する必要があります。
毒針を持つヒアリ
同じく南米原産の特定外来生物であり、世界の侵略的外来種ワースト100にも選ばれているヒアリは、体色は赤褐色で、毒性の強い毒針を持っているのが最たる特徴。
ヒアリは刺されると焼けるような激しい痛みを覚えることもあってか「ファイヤーアント」とも呼ばれ、毒に対するアレルギー反応(アナフィラキシーショック)によって人を死に至らしめる危険性を持っています。
貨物船のコンテナなどから日本に侵入している模様。超危険級のアリです。
アリを巣ごと駆除する方法
一部の危険なアリは確かに存在しますが、外にいるのは「クロアリ」という種類の黒いアリが一般的なので、ここからはこいつらを駆除する方法をご紹介します。
私が普段アリの駆除に利用しているアイテムはこれだ!
こちらはキンチョーの「アリ用コンバット」。
アリ用コンバットは、地上に出ている僅か3~5%の働きアリが仲間のために餌を持って帰る習性を利用し、毒餌を巣に持ち帰らせることで、女王や幼虫、控えのアリまで全てに毒を行き渡らせることができる強力な罠です。
特に、女王が死んだコロニーではそれ以上働きアリが生まれることはなくなるため、無限に湧き出るアリの軍隊はこれで壊滅させることができるのです。
対象となるのは普通のアリに加え、危険級のアルゼンチンアリ、超危険級のヒアリにも効果あり!
本体はこのようになっていて、容器の中に半練りタイプの毒餌が入っています。有効成分はプロも使用する「フィプロニル」というもので、置いたその日からすぐに効果を発揮します。
裏面にはテープが付いているので、壁に(垂直に)取り付けることも可能!
そして使い方は置くだけ簡単、このようにアリがフェロモンを使って示した通り道にアリ用コンバットを置いておくだけ。あとはよく働く働きアリが毒餌を持ち帰ってくれます。
仕事をサボっているアリは巣でふんぞり返っているかもしれませんが、奴らは働き者に仕事をさせていい気になっているところ、訳がわからないまま死んでいくのです。
仲間を食わせるため、より効率のいい家屋に浸入したことで破滅を迎えることになってしまったアリのコロニー。自らの怠慢が破滅を招いたのだと、薄れゆく意識の中でサボりアリたちは思うのです。
来世で働き者になることに期待。
今回のまとめ
・普通のアリにはコンバットがオススメ
・シロアリはGの仲間なので特に注意が必要
地上にいるアリに放水したり、殺虫剤をかけたりしても無駄なのは、地下にこそアリの本隊がいて、いくらでも兵士を補充することができるからです。
アリ用コンバットを設置すると最初はアリも警戒しているのか、なかなか中には入っていかないのですが、そのうち餌を持って帰るようになります。だいたい1~2週間もあれば効果を実感できると思いますよ。
それとシロアリの被害は本当にお金がかかるので、普段から予防し、被害を確認できたら専門業者に相談するなど、早めの対応がお勧めです。
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