カジノエージェントは「一般の人にはカジノはおすすめできない」と言った

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富裕層でもみごとに散っていくカジノ。はたしてここで、一般人がふつうに遊ぶことはできるのでしょうか。

世の中には、カジノエージェントという、富裕層をアテンドする仕事があることを皆さんはご存じでしょうか。

東洋のラスベガスと呼ばれるマカオでは、このエージェントが多数存在し、富裕層をVIPルームへと日夜案内しているのだそうです。そして、そのなかの1人でもある尾嶋誠史氏は、著書『カジノエージェントが見た天国と地獄』で、エージェントの仕事とはなにか、マカオのカジノではなにが起きているのかなどを語っています。

また、尾嶋氏は著書のなかで、こうも述べていました。一般の方が(生活費を削ってまで)カジノで勝負をするのはおすすめできないと。

これは、以前痛い目にあったものの、またカジノに行こうと企んでいる私にとってはかなり考えさせられる本でもあったので、今回はこちらの本をご紹介しつつ、新たにできた私の課題についてもお話ししたいと思います。

目次

カジノエージェントが見た天国と地獄

本書は、マカオでカジノエージェントとして働いている著者が、6年のあいだ見聞きしてきた、カジノで繰り広げられる途方もない世界を紹介したもので、全体は4つの章で構成されています。

1章はマカオという都市と、カジノエージェントという仕事について。2章はツアー客から富裕層が味わった天国と地獄(富裕層の地獄が多め)で、3章は著者がエージェントとして働きだしたわけ。4章は今後ほぼ確実とみられる、日本にもできるであろうカジノとその問題点、といったようになっています。

とくに興味深かったのは、カジノエージェントという職業、富裕層でものめり込むカジノの恐ろしさ、そしてやはり、私としては、著者が考える日本にカジノができた際のギャンブル問題でしょう。

ここからはそういった印象に残ったことを、かいつまんでご紹介していきたいと思います。

一般人は立ち入れない「VIPルーム」

マカオに多数存在するカジノは、各国のカジノと同じくレートでフロアが分かれていて、「平場」と呼ばれる一般フロア、平場よりもハイレートな「ハイリミット」、そして「VIPルーム」があります。

マカオの平場は500香港ドル(約7000円)くらいから遊ぶことができ(1香港ドルは2018年のレートである約14円で計算)、ハイリミットでは3000HKD(約4万2000円)くらいから遊ぶことができるといいます。

お店によっては、平場は100~200HKD、ハイリミットでも1000~2000HKDからあると私は聞いていますが、いずれにしても、一般の人が入れるフロアというのは、そこまで高いわけではありません。

しかしVIPルーム。ここに入ると、世界は一変するそうです。

VIPルームとは文字どおり、資産家でないと立ち入ることができない富裕層向けのフロアで、このフロアでは、1回に250万HKD(約3500万円)くらいまで賭けることができるなど、すでに桁違いの世界となっているのにもかかわらず、さらにはベット額の交渉も可能。

著者自身、上限が300万HKD(約4200万円)に設定されたテーブルで、100万HKD上乗せの、400万HKD(約5600万円)くらいまで上げる人を見たこともあるそうです。

一般レートではお目にかかることなどない、1枚100万HKD(約1400万円)のチップも存在するなど、まさにVIPなフロアであるVIPルームですが、このVIPルームの運営に関わっている人たちこそがカジノエージェントであり、そして、エージェントが所属する「ジャンケット」という業者なのだそうです。

エージェントとジャンケット業者

VIPルームというと、あれはカジノが運営しているものだとばかり私は思っていたのですが、どうやらすべてがそういうわけではなく、「ジャンケット業者」と呼ばれる別の会社が運営している場合もあるそうで、その仕組みについて著者は、以下のように説明しています。

それぞれのジャンケット業者が、カジノ会社にテーブルと部屋を借りるフィーを払い、個別にVIP用のカジノクラブを開いているということ。イメージとしては、カジノ・ホテル側がテナントで、僕らジャンケット業者はその店子のようなものでしょうか。カジノエージェントが見た天国と地獄 p.36

このようなジャンケット業者はマカオに数百社と存在し、目安としてはテーブル1台で7億円、VIPルームにはテーブルが10台ほどあるので、年間70億円ほどの保証金をカジノに支払い、それでも余りある売上をあげているといいます。

そのなかでも著者は、「太陽城集團(サンシティグループ)」と呼ばれるマカオ最大派閥のジャンケットグループに所属しているそうで、エージェントの仕事の内容については、このように説明していました。

……すべてのジャンケットには、僕らのような「エージェント」と呼ばれる営業マン的な存在の人がいます。そして、VIPルームのお客様に対して入国時から帰国時まで、すべてのシーンをアテンドし、多くの場合その料金も支払います。カジノエージェントが見た天国と地獄 p.53

ようするに、カジノのVIPルームは(とくにマカオは)ジャンケットという業者が運営し、そこに所属するエージェントは、お客さんの世話のいっさいを引き受け、楽しくカジノで遊んで帰ってもらう仕事をしている、ということです。

なお、ジャンケットが運営するVIPルームには、エージェントを介してでなければ入ることはできず、エージェントの収入源は、お客さんが使った金額の1%(チップに交換した額ではなく、遊んだ総額の1%)のバックマージンとなっているそう。

どのお客さんも最低1億円はチップを購入し、著者は何人かでチームを組んで、月に30名ほどのお客さんをアテンドするそうなので、1か月だけで数千万円にものぼるバックマージンが入るのだとか。

いや、すごい世界もあるものです。

著者が見た天国と地獄

本書でも詳しく解説されていますが、じつは中国は法律がきびしく、国内でのギャンブルは禁止。娯楽施設も少なく、国外へのお金の持ち出しにも制限がある(人民元は約33万円、米国ドルは約55万円)など、富裕層が多いとされる一方で、お金の使い道がないことに悩まされている人も多いのだそうです。

そこで、なかば裏技的な手法を使うことで、合法的にお金を国外に持ちだすことがジャンケット業者にはできるので、これを利用して、中国の富裕層はマカオのカジノに向かうそうなのですが、そういったお客さんをアテンドするなかで、著者は半端ではない人たちを見聞きしてきたといいます。

これはぜひとも本書で確かめてもらいたいと思うのですが、そういった話をいくつか取り上げてみると、以下のようなものが印象的でした。

  • 軍資金3万円で3億円勝った日本人ツアー客
  • 48時間ぶっ続けでバカラで勝負するも一文無しになり、その後は消息を絶った中国人建築会社社長
  • お客さんが1日3割の利息でした借金のかたにマフィアに監禁され、死と隣り合わせになった日本人エージェント
  • 4億円の負債をつくり、家族にまで迷惑をかけたというのに、まだギャンブルを続ける日本人放蕩息子
  • 2億円の借金を残して国外逃亡し、それでも金を借り続けた結果、マフィアに銃撃された日本人会社役員

こういった話はどうしても地獄にかたよってしまいがちですが、これはもう、壮絶としかいいようがないものでした。

3億円勝った日本人ツアー客がかすんで見えるほどに、ウン十億、ウン百億という、とんでもないお金の使い方をしている富豪の逸話がほかにも多数登場しています。

日本のカジノとギャンブル依存症

日本でもカジノ法案(IR法案)が可決され、将来的には日本にもカジノができることになりそうですが、著者は日本にカジノができる場合、注意すべきはマネーロンダリングとギャンブル依存症だと述べています。

とくにギャンブル依存症に関しては、マカオで散っていく破産者、帰りのフェリー代さえも払えないほどにすっからかんになってしまう人、お金をつくるために質屋に物を売る人や、質屋で物をクレジットカードで買い、すぐに質に入れて現金をつくるという、錬金術のような手を使う人を見るたびに、「ギャンブルは恐ろしい」と思わずにはいられないといいます。

現に、マカオでもギャンブル依存症は深刻な問題となっていて、依存者のためのカウンセリングがひんぱんに行われるなど、国をあげて問題に取り組んでいるほどのものだそうです。

また、著者はカジノができることのメリットも多数あるとしたうえで、このようにも述べていました。

長年カジノを見てきた僕自身も、いっときはカジノでギャンブルしたこともありますが、いまとなってみては僕自身はカジノでギャンブルをしたいとは全く思っていませんし、逆に周囲の人がカジノで遊びたいと言ったら、止めるでしょう。……一般の方が自らの生活費を削ってまで、カジノにギャンブルをしに行くことはおすすめしません。カジノエージェントが見た天国と地獄 p.204-p.205

その理由は、9割の人がカジノでは勝つことができず、カジノは「一度ハマると抜け出せなくなる」からだそうです。

誰もが「ほどよいところでやめられるから大丈夫」と最初は思ってはいても、一度勝負が始まってしまえば、勝ち金をすべて失うまで突っ走り、負けていれば、負けを取り返すために熱くなり、気づけばすべてを失っている。

カジノで勝負するのであれば、自分の資金のなかから、きちんと上限金額を決め、あくまで「遊び」としてやる範囲内でないとむずかしい、と著者はしていました。

感想と課題:それでもカジノに行くのか?

私も私なりに、カジノの天国と地獄は見てきたつもりで、地獄を見たというのに、またカジノに行こうと画策しているわけですが、本書を読んだあとから、やはりカジノには行かないほうがいいのではないか? とも考えるようになりました。

ひとたび勝負が始まってしまえば、自分が納得するまで突っ走ってしまい、遊びの範囲内で収めることができないからです。

私の経験上、カジノはレートをいくらでも上げることができるため、お金の制御ができないのであれば、貯蓄がウン百万、ウン千万とあったとしても、一瞬ですべてが消え去ってしまう危険性がそのへんにごろごろと転がっているように感じます。

一般の人が入れるフロアでも、じつは数百万円くらいであればふつうに賭けることができ、1000万円レベルの勝負もお金さえあればできてしまうのです。

そんなカジノに遊びではすまない状態で行けば、いったいどうなってしまうのか。私もカジノの幻想に魅せられた亡者の仲間入りを果たすのは、いや、亡者からせっかくよみがえったというのに、またしても亡者に戻ることになってしまうのは、きっと時間の問題となってしまうことでしょう。

私はもともとパチンコに依存していた過去があり、現在はすべてのギャンブルから遠ざかっていますが、お金の使い方が当時と変わっていないのであれば、パチンコでひいひい言っていたのが、今度はカジノでひいひい言うことに変わるだけのような気もします。

そう考えるとカジノは、レートが上がることはないパチンコよりも、はるかに危険なものなのかもしれません。それがあるからこそ、富裕層はカジノにハマり、なかには破滅してしまう人もいるのでしょう。

いくらお金を稼いでいても、いくらお金を貯めていても、お金の使い方に制限をかけられなければ一瞬でおけら。これは非常にむずかしい問題といえます。

ただ、私は過去の経験から、カジノでお金を稼ごうなどとはもはや思ってはおらず、旅行の際にちょっと遊びたいと思っている、ただそれだけのことなので、そこでなにかが変わる可能性にかけたいとも思っています。

いずれにせよ、考える時間はまだいくらでもあるので、ギャンブルからは完全に足を洗うのか、制御装置の作動にかけてカジノにふたたび足を踏み入れるのか、この問題は熟考したいと思います。

総評&まとめ

・カジノは富裕層でも破産する
・天国よりも地獄を見るほうが多いように思われる
・お金の使い方に制御がかけられないのなら行くべきではない

本書はカジノの危険性に警鐘を鳴らすものではなく、カジノのおもしろさや、カジノができるメリットを述べたうえで危険性にも言及しているものなので、カジノに興味がある方であれば、楽しめる内容となっているように思います。

また、今後日本にもカジノができると思われることで、投資詐欺も増えてきているといいます。そういったものへの対処方法についても書かれているので、あやしい話にだまされないための実用的な本でもあります。

私にとっては知らない世界のことが多く書かれているものだったので、どんどん読み進めることができました。とくに地獄に落ちてしまった人の話は、ギャンブルの恐ろしさをあらためて認識させるものがあったので、カジノにのめり込むとどうなってしまうのかが知りたい方にもいいかもしれません。

カジノについてもう少し深く知りたい、日本にカジノができるとどうなるのか、カジノの世界では日夜なにが繰り広げられているのか。そういったことが知りたい方におすすめの一冊です。

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