コンゲーム小説の傑作と名高い『百万ドルをとり返せ!』を読みました。

私はいま、爽やかな気分です
ということで、さわやかな気分のうちに、この本を紹介します。
- 「コンゲーム」とはなにか?
- どのへんが傑作だったのか?
このへんのことも紹介していければと思います。ではごらんください!
『百万ドルをとり返せ!』の書籍・著者情報
タイトル | 百万ドルをとり返せ! |
著者 | ジェフリー・アーチャー |
出版社 | 新潮社(1977/9/1) |
ページ数 | 430ページ(文庫) |
面白かった度 |
小説『百万ドルをとり返せ!』は、
- イギリスの政治家だったけれど、
- 北海油田の幽霊会社への投資で全財産を失った
という、なかなかハードな経歴をもつ、ジェフリー・アーチャーのデビュー作です。
この本が大ヒットを飛ばしたことで借金は完済となり、
その後は「行くぜ政界復帰!」
となるも、偽証罪を問われて4年の実刑判決 → 服役……と、その経歴はやはりハード。
ちなみに百万ドルは、発売当時(1970年代)のレートだと1ドル300円くらいみたいです。
「3憶円をとり返せ!」ということで、スケールもでかい。
もうこの時点で『百万ドルをとり返せ!』からは、おもしろい気配がただよってきますね。
コンゲームとは何か?
『百万ドルをとり返せ!』はコンゲーム小説の傑作といわれます。



で、コンゲームってなんだ?
という話になるので、これも解説しておきましょう。
コンゲームとは「詐欺師が標的を信用させてお金をだまし取る」勝負のこと。
コンゲームのコンは「confidence=信用」の「con」です。
あざやかな騙し合いが魅力のジャンルで、読者までもがだまされたり、なんてこともあります。
というわけで同書は、標的をだまして100万ドルを「とり返す」ストーリーとなっています。
『百万ドルをとり返せ!』のあらすじ(ネタバレなし)
大物詐欺師で富豪のハーヴェイ・メトカーフの策略により、北海油田の幽霊会社の株を買わされ、合計百万ドルを巻きあげられて無一文になった四人の男たち。天才的数学教授を中心に医者、画商、貴族が専門を生かしたプランを持ちより、頭脳のかぎりを尽くして展開する絶妙華麗、痛快無比の奪回作戦。新機軸のエンターテインメントとして話題を呼ぶ“コン・ゲーム小説”の傑作。
裏表紙より
非合法な手段にも手を染め、巨万の富をきずいてきたハーヴェイ・メトカーフ。
彼が新たに着手した詐欺は、「ほぼ確実にもうかる投資話に乗ってきた人間から大金を巻き上げる」ものでした。
ハーヴェイの操り人形と化した、夢見るアメリカ青年(わき役)は、この投資話をあちらこちらでしていきます。
すると、4人の大きな魚が釣れて……。
というのが『百万ドルをとり返せ!』のあらすじです。
「北海油田の幽霊会社の株を買わされ……」のくだりは、著者の実体験にもとづいているようですね。
おもな登場人物(標的となるハーヴェイ・メトカーフ以外)は以下のとおりで、
- スティーヴン・ブラッドリー(数学教授)
- エイドリアン・トライナー(医者)
- ジャン=ピエール・ラマン(画廊の経営者)
- ジェームズ・ブリグズリー(舞台志望の貴族)
この4人が投資詐欺で大損をぶっこきます。
しかし、スティーヴン率いる“ギられた”被害者で結成されたチームは、そのままではおわりません。
- それぞれのアドバンテージを生かし、
- それぞれのプランを4人で協力して進め、
- 詐欺られた「合計100万ドル」を詐欺り返す。
一撃必殺ではなく「4連撃での奪還」で、彼らは、悪の親玉ハーヴェイ・メトカーフから、奪われた金を取り返しにいくのです!
『百万ドルをとり返せ!』を読んだ感想
「われわれは株式詐欺のエキスパートであるきわめて頭のよい男に金を盗まれました。われわれは株のことはよく知りませんが、みなそれぞれの分野におけるエキスパートです。そこで、みなさん、ぼくは盗まれた金を盗み返すことを提案します。
一ペニーも多くなく、
一ペニーも少なくなく、です」
『百万ドルをとり返せ!』p.96
ここから彼らの逆襲がはじまったわけですが、いや、最高にすがすがしい気分になれました。
悪役ハーヴェイが「嬉々として金を払っていく」ように仕向けるプランは芸術的。
加えて、途中からは、



じつはハーヴェイはいいやつなんじゃないか?
と、思えてくるなど、悪役にも好感がもてたからこその爽快感もありました。
(※カジノでブラックジャックをするシーンがあって、そこでのハーヴェイのプレイスタイルもよかった!)
「奪われたから奪い返す」
だけの一発ではなく、「だまされポイント」が複数にわたって仕掛けられているのもいい!
読んでいると、途中までうまくいきすぎている感を感じると思うのですが、それもあとでわかることでしょう。
それから、なんといっても終盤のほんわかした感じです。
詐欺被害にあっているので、最初は、4人からは殺伐とした雰囲気も感じられました。
ところが、作戦が進むにつれて友情が芽生え、しょうもない冗談をいって笑いあったりする仲にもなるわけです。
リアル(現実)の話をすると、こういう友人は、年をとるごとに減っていく気がします。
だからこそ、彼らにそんなステキな友人ができたことが私はうれしく、そしてうらやましく、



コレなんだよなあ……
と、気持ちのいい風に吹かれたような気分になれたのです。
- 天才数学者の天才的な部分はそこまで感じられなかった
- それぞれのプランはそこまで頭脳戦というわけでもない
とか、あげればいくつか(多くの人が気になりそうな点)はありますが、小さなことはもはや気になりません。
ラグビーでいうところの「ノーサイド」のような爽やかさ。
コンゲーム小説の傑作というのは、
古い作品(先駆者的な意味で)
というのもあるかと思いますが、このへんのスポーティな部分にもあるように私には感じられました。
今回のまとめ
- 『百万ドルをとり返せ!』はコンゲーム小説の傑作
- さわやかで気持ちのいい「騙し騙され」は一読の価値あり
『百万ドルをとり返せ!』は映画化の話もあったそうですが、最終的にはテレビドラマになったようです。
きちんとした見られるところをさがしましたが、しかしこれは見つかりませんでした。



ただ、本書でもふれられているもので、
コンゲームで有名な映画に『スティング』というものがあります。
映画が好きなら(これも古いものですが)こちらもチェックしておきたいところです。
同作品は「U-NEXT
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