状況によって使い分けることができるので、オーセンティックバーとカジュアルバーの違いを知っておくと便利ですよ。
お酒を楽しむことができ、大人の社交場としての側面も持ち合わせるバー。しかし、ひと言でバーといっても、現在はさまざまな種類のお店があります。
たとえば、気軽な料金からお酒が飲めるワンコインバーであったり、食事をいっしょに楽しめるダイニングバー、店主こだわりの音楽を聴かせてもらえるミュージックバーから、これぞバーといった王道のバーまで、そのスタイルは多種多様ということができます。
そんな多様化するバーの種類ですが、じつは「オーセンティックバー」と「カジュアルバー」の2種類に大きく分けることができるのはご存じでしょうか?
オーセンティックとカジュアル。初めて耳にされた方は、なにがちがうのかも気になりますよね。
そこで、このような疑問にもお答えするため、今回は、オーセンティックバーとはどのようなバーで、どのような意味を持っているのか、カジュアルバーとはなにがカジュアルで、これらはなにを基準に分類されているのか、といったことから、それぞれのバーが持つ特徴についてご紹介していきたいと思います。
オーセンティックバーとは
バーはバーでも音楽を楽しむバーや、スポーツ観戦を楽しむバー、ダーツなどのゲームを楽しむバーまでさまざまな形態がありますが、多種多様化するバーのなかでも王道のスタイルをとっているといえるのが「オーセンティックバー」です。
オーセンティック(authentic)には、「本物の、正真正銘の、真正の」といった意味があり、この単語を冠したオーセンティックバーという呼び方は、伝統や格式を重んじた正統派のバーに対して使われます。
その特徴は、バーテンダーのたしかな知識や技術、会話や接客などのていねいなサービス、上質なお店の雰囲気、などに重きを置いているといったものがあり、たとえば、以下のような条件を満たすバーがオーセンティックバーにあたります。
- バーテンダーがジャケットやベストを着用しているなど、身だしなみがきっちりとしている
- お店の雰囲気は重厚で落ち着いている(内装が木を基調としたつくりになっているなど)
- チャージやショットの料金は高めに設定されている
ただし、これらの条件を満たしているバーがすべてオーセンティックバーになるのかというと、そういうわけではありません。
じつはオーセンティックバーの定義には、これといった、はっきりとした決まりがあるわけではないからです。
オーセンティックバーを見分ける目安
オーセンティックバーかそうでないかの基準に関しては、じつをいうと感覚的なところによる部分も多く、ここからここまでがオーセンティック、という線引きが存在するわけではありません。
そうなると、「それじゃあ、どのお店がオーセンティックバーなのさ?」と思われることと思うのですが、そんなときは、しっかりとしたホテルのバーを思い浮かべてみてください。
一杯だけでもけっこう高くて、お店の雰囲気は落ち着いていて、さわがしい人なんてだれもいない、といったあの感じ。あのような感じのバーが、オーセンティックバーであるということができると思います。
そもそも日本のバーの歴史は(外国人を対象としたものでしたが)、貿易がさかんだった1800年代の中ごろ、横浜や神戸といった、港街にできた「ホテルバー」から始まりました。
当時は外国人将校などのえらい人がくると、「あれがちがう、これがちがう」と、怒られたりもしながらバーテンダーはめきめきと腕を上げていったとも聞きますが、その当時のバーテンダーのスピリットがこんにちまで受け継がれてきたからこそ、現代のバー文化があると私は思っています。
そして、その伝統を、時代が変わろうが守りつづけているのがオーセンティックバーであると思うのです。
したがって、オーセンティックバーには明確な定義はないのですが、それを見分けるひとつの基準としては、ホテルバーを基準に考えるとわかりやすいと思いますよ。
カジュアルバーとは
カジュアルバーがなにに対してカジュアルなのかというと、さきほどのオーセンティックバーに対してカジュアルなバーのことをいい、オーセンティックバーよりも気軽にお酒を楽しめるといった特徴があります。
おもに、以下のような条件を満たすバーがカジュアルバーにあたります。
- バーテンダーはワイシャツのみであったり、私服の場合もある
- お店の雰囲気はライトでにぎやか
- チャージやショットの料金は安めに設定されている
だいたいこのような条件を満たしているバーは、カジュアルバーに分類されることが多いと思うのですが、これもさきほどと同じく、カジュアルバーにもこれといった定義があるわけではありません。
つまり、オーセンティックにかぎりなく近い、あるいはそれを超えているかのようにも思えるカジュアルバーもあれば、反対に、まったくもってそうではない、ようはカジュアルどころのさわぎではないようなカジュアルバーもあるということです。
よって、これも判断するのはむずかしい場合もあるのですが、そんなときはやはり、これもホテルバーを基準にするとわかりやすいと思います。
判断の目安としては、街にあるいわゆる「街場のバー」で、ホテルのようにかっちりとはしていないバーがカジュアルバーにあてはまりやすい、ということができるかもしれません。
オーセンティックかカジュアルかは人にもよる
オーセンティックバーは正統派のバー、カジュアルバーはオーセンティックバーとくらべて気軽に楽しめるバーということがわかりましたが、両者ともに、明確な線引きがあるわけではありません。
オーセンティックバーにもガチガチのお店から、カジュアルよりのお店までいろいろとありますし、カジュアルバーにも、オーセンティックバー寄りのお店から、なんでもありのようなゆるゆるなお店まであります。
また、これらのちがいは、人のとらえ方によっても変わってきます。
たとえばの話、店主がオーセンティックバーの方針で営業しているお店であっても、あまりにも要素がそろっていなければ、そこはオーセンティックバーとはいえないかもしれません。
反対に、どこからどう見てもオーセンティックバーであるにもかかわらず、店主が「うちはカジュアルですよ」と、冗談ではなくいっている場合は、そこはカジュアルバーということになるでしょう。
それと同じことで、お客さんが、「あそこはほかとちがって正統派だな」と思えば、その人にとってそこはオーセンティックバーになりますし、オーセンティックバーの方針で営業しているお店でも、お客さんが「あそこはライトな感じだな」と思えば、その人にとってそこはカジュアルバーになるというわけです。
ようするに、結局のところオーセンティックかカジュアルかという話は、人の思いによる部分も大きく、それをバーで話すのも野暮というもので、人それぞれが思っているとおりでいいのではないかなとも私は思います。
それでもどうしても答えがほしいという方には、ホテルバーを基準に考え、ホテルバーと同様に「カッチリ」しているバーはオーセンティック、ホテルバーよりも「ゆったり」しているバーはカジュアルということで、いかがでしょうか。
分類するのが難しいスタイルのバー
バーは大きく分けると、いちおうオーセンティックとカジュアルという2種類に分けることができますが、なかには例外というものもあり、専門分野に特化しすぎている、つまりとがりすぎていて、もはや分類することができないようなバーもあります。
そういったバーに関しては、カジュアルだとかいってしまうと失礼にあたる場合もあるので、最後に、個人的に分類がむずかしいスタイルのお店などをご紹介しておきたいと思います。
スピリッツなどの専門店(モルトバーなど)
ジン、ウォッカ、ラム、テキーラの4大スピリッツと呼ばれるものや、ウイスキーでもシングルモルトから入手が困難なオールドボトル、ハーブリキュールなどのコアなお酒まで、専門店というものは存在します。
もちろん、専門店でもライトな雰囲気で、カジュアルに営業しているバーもあるのですが、なかにはとんでもなくとがったバーがあることも事実で(とくにモルトバーに多い)、そういったバーはオーセンティック、もしくはカジュアルというよりも、専門店として考えたほうがいいかもしれません。
個人的には、シングルモルト専門店(モルトバー)や、ラム酒の専門店、ラム&テキーラの専門店が多いように感じられ、とくにモルトバーなどは、どちらかというとオーセンティック寄りのお店が多いように思います。
音にこだわるバー(ジャズバーなど)
ジャズバーやソウルバーなどの音楽が聴けるバーは、一般的にはカジュアルに分類されますが、なかにはアナログレコード、アンプ、スピーカーなど、音に尋常ではないこだわりを持つ店主が経営しているバーもあります。
そういったお店は、もはやカジュアルバーとかではなく、ジャズバー、ソウルバーなどとして考えたほうがまちがいはないでしょう。
生音の演奏が楽しめるバーも、どちらかというとオーセンティック寄りのお店が多いように感じられます。
私も、アナログのジャズバーにはよく行かせてもらっていますよ。
ミクソロジー(カクテル)専門店
ミクソロジー(Mixology)とは、Mix(混ぜる)とology(~学、~論)という単語を組み合わせた言葉で、液体窒素、遠心分離器、真空調理などの技法を駆使してカクテルをつくる調理法のことをいい、これをおこなうバーテンダーは「ミクソロジスト」ともよばれます。
高度な技術や専門知識が必要となることから、ミクソロジーカクテル専門店は、オーセンティックにかなり近いものがありますが、これもやはり、ミクソロジーバーという専門店として考えたほうがいいかもしれません。
どちらかというとオーセンティックバーになるような気もしますが、無理に分類する必要もないというものでしょう。
例外というものは、なんにでもあるわけですから。
今回のまとめ
・オーセンティックは正統派でカッチリ、カジュアルは気軽でゆったり
・どちらにも分類できないようなお店は専門店として考えるといいかも
オーセンティックかカジュアルかは、最終的にはお店の方針とお客さんの感じ方で決まるような気もするので、本格的な感じのところは前者、ライトな感じなところは後者、とそこまでむずかしく考える必要もないのかもしれません。
ただし、注意点をひとつだけ。オーセンティックバーではない、つまりカジュアルバーであればさわいでもいいという意見がときどき見受けられますが、まったくそんなことはないので注意するようにしましょう。
今回見てきたように、カジュアルバーにもいろいろとあるわけですし、バーはそもそも大人の社交場でもあるので、さわぐ場所ではないのです。
たしかに、大声を出すことをよしとしたり、黙認しているバーもありますが、どこのバーに行っても恥をかかないためには、それは基本ではないということは知っておいていただきたいですし、バーの基本は、オーセンティックにあると思っていてまちがいはありません。
カジュアルバーでも立ち振る舞いはスマートに。それができる人は、カッコイイと思いますよ。
ショットバーはどちらに分類されるのかはこちら
→ ショットバーは普通のバーとは何が違うのかを日本のバーの歴史から紐解く
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