ご存じでしょうか。ストロング系チューハイには、ジントニックの2倍以上の純アルコールが含まれていることを……。
新型コロナによる影響で、近年はご自宅でお酒を楽しまれる方も増えてきているように思いますが、カクテルをつくって飲む場合、アルコールの度数はどれくらいになっているのか? というのは気になることかもしれません。
また、「ビール中瓶1本とテキーラ2杯のアルコール量はおなじ」といわれるように、ついつい飲みすぎてしまいがちなおうちでは、お酒にふくまれる純粋なアルコールの量についてもそう。
しかし、そういった疑問は瞬時に解決します。カクテルなどのアルコール度数や、お酒にふくまれる純アルコール量は、それを計算する「計算式」があるからです。
これを知っておくと、どんな割りものでも、どんな種類のお酒でも、アルコール度数(濃度)やアルコール量(含有量)を計算できるようになり、適量もわかるので、飲みすぎていないかなどをチェックしたりすることができるようにもなります。
お酒は楽しく適量がベスト。今回は、そんな便利な、お酒のアルコール度数・純アルコール量を知るための計算式を、いくつかのカクテルや、ビール・ワインなどのお酒を例に、バーでの現場経験もある私がご紹介していきたいと思います。さきにいっておくと、とても簡単ですよ!
カクテルのアルコール度数の計算式
日本の酒税法では、酒類は「アルコール分1度以上の飲料」と定義され、ビールやワインなどの醸造酒、ウイスキーやテキーラなどの蒸留酒、リキュールなどの混成酒といった、おもに3つのものに分類することができます。
アルコールが入った飲料(お酒)を飲むことで、私たちは、たとえば食欲の増進、気分の高揚、リラックス効果などを得ることができます。が、アルコールの度数によっては、思っていた以上に酔いがまわってくるなど、あとになってから気分がなえてしまうこともあるものです。
だからこそ、おうちでお酒をつくる場合は、事前にどれくらいのアルコール度数になるかは把握しておきたいところなのですが、そんな問題を解決してくれるのが、この「アルコールの度数の計算式」。
基本となる、カクテルや割りもののアルコール度数を計算する方法は、以下のとおりです。
アルコール飲料の度数(%)×総分量分の1+副材料の度数(%)×総分量分の1=アルコール度数
これだけだとすこしわかりにくいと思うので、ここからはじっさいに、これをカクテルなどにあてはめて計算してみることにしましょう。
ロングカクテル(ジントニック)の場合
たとえばジントニックを、アルコール度数40%のジン30mlと、90mlのトニックウォーターでつくるとすると、これは以下のようになります。
氷のとけぐあいを加味しなければ、1対3でつくった総量120mlのジントニックのアルコール度数は「10%」ということになるわけですね。
ライムジュースを加えた場合
では、そこに10mlのライムジュースを加えてみた場合はどうなるでしょうか? これも、さきほどの計算式に副材料のぶんを足せばいいだけで、
このように、ライムジュースが増えたことで、総量が10ml増えたジントニックのアルコール度数は「9.2%」となるわけです。
焼酎の水割りの場合
焼酎の水割りの場合も同様で、アルコール度数25%の焼酎45mlと、割り用の水90mlの1対2で水割りをつくった場合、計算式を省略すると、
このとおり、総量が135mlの焼酎水割りのアルコール度数は「8.3%」となります。
ウイスキーのハイボールの場合
ウイスキーのハイボールの場合も、焼酎の水割りとまったくおなじ。アルコール度数40%のウイスキー45mlと、割り用の炭酸水90mlでつくるとすると、以下のとおりです。
ハイボールのアルコール度数は「13.3%」。とても簡単ですね!?
ショートカクテルの場合
ショートカクテルも計算式は一緒ですが、ショートカクテルの場合は、ベースとなるスピリッツにリキュールなどのべつのお酒が加わることもあるので、すこしだけ計算がややこしくなります。
ただ、それらも、さきほどの計算式にあてはめてしまえばいいだけなので、そんなにむずかしいこともありません。
ここでは、代表的なカクテルの例として、「マティーニ」の度数を計算してみることにしましょう。
マティーニ
マティーニは、いわずと知れたカクテルの王様。
通常はベースとなるジン50mlと、ドライ・ベルモット(フレーバードワイン)10mlでつくられますが、ジンの度数を40%、ベルモットの度数を18%とすると、マティーニの度数は以下のようになります。
使用するものがすべてアルコール飲料の場合も、計算式はこれまでと一緒で、このレシピでつくるとすると、マティーニのアルコール度数は「36.3%」ということになります。
王様といわれるだけあって、アルコール度数も強烈ですね!
ストロベリーマティーニ
また、お酒ベース・お酒その他・副材料となる場合の例として、マティーニにすこしアレンジを加えた、ストロベリーマティーニの場合もご紹介しましょう。
アルコール度数40%のジン30ml、アルコール度数18%のベルモット5ml、フレッシュイチゴジュース25mlでストロベリーマティーニをつくるとすると、総量は60mlなので、
このレシピでつくったストロベリーマティーニのアルコール度数は「21.5%」ということになります。
これで、ふつうのカクテルの簡単な計算から、ショートカクテルの複雑な計算まで完璧でしょう!
おうちでカクテルをつくりたいときは、バーのツールとお酒があれば、すぐにでもできるので、カクテルづくりに挑戦してみたい方は、ぜひトライしてみてください。ジンは、度数が高くてもスルスル入ってくる、上質な「タンカレー No.10」がおすすめですよ。
お酒の純アルコール量の計算式
カクテルなどのお酒のアルコール度数は、これまで見てきたとおりで調節することもできますが、度数が低くても量を飲めば酔うように、お酒には、それ自体にふくまれる純粋なアルコールの量があります。
この、お酒の種類を問わず、お酒が私たちの体や精神に影響をおよぼす基準とされているものを「純アルコール量」といい、純アルコール量とは、お酒にふくまれるアルコールの分量を、グラム単位でしめしたものを指します。
一般的にいわれる適度な飲酒量は、男性・女性、お酒に強い・弱いもあるので一概にはいえませんが、目安としては1日に純アルコール20gとされていて、純アルコールの分量をグラムで求める計算式は、以下のとおり。
アルコール飲料の量(ml)×アルコール濃度(%)×アルコール比重(0.8)=純アルコール量(g)
ちなみに、アルコール比重の「0.8」というのは、お酒にふくまれているアルコールそのものであり、酒精ともよばれる化学成分「エタノール(エチルアルコール)」の比重が「0.793」なので、そこからきています。
純アルコール量の計算式では、この比重の数字はつねに固定で計算するので、おぼえておいてください。
それでは、ここでもさきほどとおなじく、この計算式を使って、いろんなお酒の純アルコール量を割り出してみることにしましょう!
ビール、ワイン、日本酒などの醸造酒
まずはみんな大好きビールの純アルコール量から。
さきほどの計算式に、一般的な度数5%のビール、中瓶1本(500ml)をあてはめてみると、以下のようになります。
このように、ビールにふくまれる純アルコール量は、中瓶1本またはロング缶1本で20gということになるわけです。
ワイン
つづいてはワイン。ワインは、ものによってアルコール度数が変わりますが、おおまかにあいだを取って度数を13%とすると、
ボトル1本にふくまれる純アルコール量は78gということになり、グラス1杯(ボトルの6分の1、125ml)で13g、2杯で26gとなります。
日本酒
そして日本酒の場合、アルコール度数は一般的な15%で計算すると、
4合瓶1本(720ml)にふくまれる純アルコール量は86.4gということになり、1合で21.6gということになります。
ウイスキー、テキーラ、焼酎などの蒸留酒
ウイスキーやブランデー、テキーラやラムといった蒸留酒も、ものによって容量やアルコール度数が変わりますが、一般的な700ml、40%で計算すると、
ボトル1本にふくまれる純アルコール量は224gとなり、グラス1杯(シングル30ml)で約9.6g、グラス2杯(ダブル60ml)で19.2gとなります。
焼酎
焼酎もおなじように、アルコール度数はものによりますが、これも一般的な25%で計算すると、
4合瓶1本(720ml)にふくまれる純アルコール量は144gとなり、1合(180ml)で36g、グラス1杯45mlとすると、2杯の90mlで18gとなります。
ストロング系チューハイ
ここ数年で爆発的な人気が出たストロング系チューハイ。
これは純アルコール量どうこうよりも、お酒の残り方や気持ちよくない酔い方などから考えても、すくなくとも上質な酒ではないものが多いと思われ、私は危険なので手を出さないほうがいいと思っているのですが、いちおうこれも計算してみると、
このように、度数9%のロング缶1本で純アルコール量は36gと、ビールの中瓶約2本分、ウイスキーやテキーラなどの蒸留酒3~4杯分に匹敵することがわかります。
ちなみに、350ml缶の純アルコール量は25.2gです。
それぞれのお酒の適量目安
さて、ここまでで、だいたいのお酒にふくまれている純アルコール量は出そろいましたが、これらを「節度ある適度な飲酒」量として、厚生労働省がしめしている20gにあてはめてみると、以下のようになります。
お酒の種類 | 度数 | 分量 | 20g換算 |
ビール | 5% | 中瓶1本 | 500ml |
ワイン | 13% | ボトル4分の1ちょっと | 約200ml |
日本酒 | 15% | 約1合 | 180ml弱 |
ウイスキー | 40% | ダブル1杯 | 約60ml |
焼酎 | 25% | 約0.6合 | 100ml |
ストロング系チューハイ | 9% | 350ml缶8割 | 280ml |
ちょっとすくないと感じる方も多いかもしれませんが、自宅で飲む場合は、これくらいかもうすこしくらいにおさえ、外で飲むときには、「ふだん飲まないぶん今日はいいかな!」というのが、私はいちばんいいような気がします。
それと、ストロング系チューハイ。
このように一覧で見るとさらによくわかりますが、ほかのお酒は分量を調節できる、または最初からちょうどいいのにたいし、ストロング系チューハイは、ひと缶開ければ飲み切らないといけなくなるため、缶を開けた時点で20gをオーバーしてしまいます。そういうところもやや危険度が高い。
なお、厚生労働省によれば、純アルコール量の摂取が1日に60gを超えると多量飲酒者になるそうで、ストロング系チューハイのロングとショートを1本ずつ毎日飲めば、この基準はオーバーします。
おいしいお酒は少量でも満足できます。缶チューハイ(おもにストロング系)にはとくに気をつけたいところですね!
応用編:カクテルの純アルコール量の計算方法
ここまでごらんになった皆さんは、こう思われたかもしれません。
ストロング系チューハイよりも、ジントニックのほうがアルコール度数は高いんだね
わかります、私もそうくると思っていました。
しかし、この疑問の根本的な部分を解決する方法があるのです! そう、そんなときはこれまでの応用、カクテルのアルコール度数の計算と、純アルコール量の計算とを組み合わせればいいのです!
どういうことか、これもじっさいに計算してみましょう。
まずは、さきほど計算して求めたジントニックの度数(120ml、10%)を、純アルコール量の計算式にあてはめてみます。すると、
なんとジントニック1杯の純アルコール量は9.6gと、ストロング系チューハイ1本350mlの25.2gとくらべて、あきらかに量がすくないことがわかります。
それでも、度数が36%もあるマティーニだったら……
これも計算してみましょう。マティーニ(60ml、36.3%)の場合は……
このとおり、マティーニ1杯の純アルコール量は17.4gと、たしかに多くはありますが、それでもなおストロング系チューハイにはおよびません!
くりかえしになりますが、おいしいお酒は1杯2杯でもじゅうぶんな満足感を得ることができます。やはり、缶チューハイを飲むなら、おいしいウイスキーやカクテルなどを飲むべきだといえるでしょう!
今回のまとめ
・お酒(ml)×濃度(%)×0.8=純アルコール量
・お酒の適量は1日20g
今回の計算式をマスターすれば、おうちでお酒を飲むときだけでなく、バーなどでお酒を飲むときもだいたいのアルコール度数を計算できるようになります。
外で飲む場合は、そんなことを考えていると酔いもさめてしまうかもしれませんが、これを知ることで、バーテンダーが駆使する「お酒の強さを感じさせない」テクニックを体感することもできるというものでしょう!
ぜひ、お酒を楽しむときのツマミにしてみてください。
ちなみに、60~70kgの人のアルコール処理にかかる時間は、1時間で純アルコール約5gとされているので、ご自宅で、あるいは外でお酒を楽しむさいは、それも頭に入れておくと役に立つかもしれませんよ。
ワンショットのお酒の分量はこちら
→【ウイスキー】ワンショットには何ミリの量のお酒が入っているのか?を解説
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