ワンショットは、国やお店によってもじつは分量が異なったりもしますが、ある程度の規定や法則が存在します。
現在のバーといえば、ショット(1杯)でのはかり売りが基本ですが、その1杯(ワンショット)には、何ミリくらいの量のお酒が入っているのかは気になるところ。
バーは安く飲める場所ではないので、この分量を知らないと、「思っていたよりもすくなかった」とか、「ほかのお店はもっと多かった」とか、場合によっては、釈然としない気持ちになってしまうこともあるかもしれません。
そこで、バーテンダーとしての現場経験もある私が、バーで、またはご自宅でも本格的にお酒を楽しみたいという方のため、今回は、ウイスキーにおける「ワンショット(1ショット)」の量(ml or cc)について、くわしく解説することにしたいと思います。
またテキーラなどの度数の高いお酒は、ウイスキーとおなじ分量の場合が多いのですが、ほかのお酒ではショットの量が変わりやすいものもあるので、そういったものもあわせてご紹介しておくことにしましょう。
ワンショットとは?その意味と規定量
ショットという言葉には、「ウイスキーなどの1杯、蒸留酒などのアルコール度数が高い酒の1杯分の量、薄めないそのままのアルコール飲料またはその1杯」など、ようは強烈なお酒1杯分の意味があり、これは「弾丸、発射」などの意味を持つ「shot」が由来になっているともいわれます。
つまりお酒関係でいうところのワンショットとは、このショット1回分、ウイスキーなどのお酒1杯分のことを指します。
またワンショットは「1杯分のお酒」を意味しますが、その規定量は、じつは国によって異なっているのもポイント。
これが、(日本での)1杯分の量を決める目安にもなっているので、まずはバーやウイスキーの本場であるアメリカとイギリスの場合を見つつ、日本での規定量について見ていくことにしましょう。
アメリカのオンス(oz)とジガー(jigger)
アメリカではワンショットの単位は液量オンス(fluid ounce)というものが標準的な単位として使われていて、日本でのml(ミリリットル)のように「fl oz」「oz」という記号で省略されています。
その分量を「ml」に換算すると、1オンスは29.57ml(正確にいうと29.573 529 5625ml)と、約30mlということになります。
また、ジガー(jigger)とは、カクテルなどをつくるさいに使用する計量カップの単位のことをいい、その分量は1オンスの1.5倍で約45ml。
アメリカの場合は、これらの1オンスまたは1ジガーが、ワンショットの分量となっています。
イギリス(英国)の場合のワンショットと分量
イギリス(英国)の場合は、アメリカとは少々事情が異なり、もともと南のイングランドではワンショットは45ml、北のスコットランドでは60ml、となりのアイルランドでは70mlが一般的だといわれていたのですが、現在は25mlまたは35mlと法律で決められているそう。
ちなみに、イギリスも液量オンスの単位が使われていますが、イギリスの場合は1オンスが28.41ml(正確にいうと28.413 0625ml)と、アメリカでの1オンスよりもわずかにすくないです。
日本の場合のワンショットと分量
そして日本の場合はどうなのかというと、歴史を見ても、日本はアメリカとの関係が強いですから、アメリカでの1オンスの流れもあって、ワンショットは30mlが一般的な規定量となっています。
ただし、じつをいうとこれはお店による部分が大きく、お店によってはウイスキーなどのワンショットの規定量を40mlや45mlと設定しているところもあり、お酒によって規定の分量を変えたりすることもあるため、一概にワンショットの規定量はコレです! というのはむずかしいともいえます。
とはいえ、基本はワンショットは30mlというのがもっとも一般的なので、日本のバーにおけるワンショットの規定量は30ml、とおぼえておけばまちがいはないでしょう。
ウイスキーのシングルとダブルは何ミリ(cc)か
ワンショットとは、ウイスキーなどのお酒1杯分をあらわす言葉ですが、バーにかよっていると、「シングルとダブル」という言葉もよく耳にするはずなので、これはなんなのかもあわせてご紹介しましょう。
この話は簡単で、シングルとはワンショットとおなじ意味、ウイスキーなどのお酒1杯分のことを指し、ダブルというのは、シングルの2倍、つまりお酒2杯分のことを指します。
これらはおもに、ウイスキーなどを注文するさいに使われるもので、「シングル」といえば1杯分の分量(30ml)がグラスにそそがれて出てきますし、「ダブル」といえば2杯分の分量(60ml)がグラスにそそがれて出てくるわけです。
分量を指定しなければシングルがデフォルト。1杯分がよければ「シングルで」といわなくても大丈夫だということだ
ちなみに、ワンショットという言葉は、ウイスキーなどを注文するさいにはあまり使用せず、
このウイスキーはワンショットおいくらですか?
これは(ワン)ショットで800円ですよ
とか、そんなときに使用することが多いです。
お酒を注文するさいに「ショットで」というと、これはショットグラスなどにストレートで、という純粋な「shot」の意味合いをふくんでいたりもするため、お酒の分量を指定したいときは、ワンショット、ツーショットとはいわず、シングル、ダブルを使えばスマートかもしれません。
外国から旅行で来られているかたがたも、シングル、ダブルといっているので、おそらくこれは世界共通だと思いますよ。
なお、「ml」と「cc」は体積をあらわす単位がちがうだけで、分量はまったくおなじなので、「ワンショット=シングル=30ml or 30cc」ということができます。
ワンフィンガーとツーフィンガーとは
ウイスキーなどのお酒の分量をあらわす言葉には、ワンショットやシングル・ダブルなどがありますが、じつはまだあり、「ワンフィンガー、ツーフィンガー」といったものもあります。
これは使用する機会はほぼなく、正直いうと、べつにおぼえる必要もありません。ただ、せっかくの機会なので、こちらも解説しておくことにしましょう。
フィンガー(finger)とは「指」を意味する言葉で、どうしていきなり指が出てくるの? と思われる方も多いかもしれませんが、こちらをごらんいただければ、そのなぞは解決します。
グラスの形状や指の太さにもよるものの、このように、8オンス(約240ml)のタンブラーの下部に指をあて、指1本分のお酒をそそぐとちょうど30ml(シングル分)になり、
指2本分のお酒をそそぐとちょうど60ml(ダブル分)になるわけです。
フィンガーに関しては、バーで使う機会はほぼないと思われますが、たとえば自宅でお酒をつくりたいけれど「はかり」がないという場合、指でお酒の分量をはかるということができたりもします。ピンチのときに役立つはかり方というわけですね。
とはいえ、これはやはり、グラスの形状などによる部分が大きいので、正確にはかりたいという本格志向の方は、メジャーカップをひとつ置いておくと便利でしょう。
私は自宅用には、銀やステンレス専門メーカーがつくる「YUKIWA」というブランドのメジャーカップを置いています。メジャーカップは、上下で30mlと45mlを使い分けられるものがおすすめですよ。
ワンショットの分量が変わるお酒の種類
日本のバーでのワンショットは、30mlが一般的ということがわかりましたが、お酒によっては45mlや、場合によってはもっと多い60mlが基準となるものもあります。
これもお店による部分が大きく、一概にはいえないのですが、ある程度の傾向はあると私は思っているので、最後に、お酒の種類による、おおまかなワンショットの分量のちがいについてご紹介しましょう。
ウイスキー
これまで見てきたとおりで、ウイスキーの場合、ワンショットの分量は30mlが一般的。シングルは30ml、ダブルは60ml、トリプルは90mlということになります。
とはいえ、トリプルの90mlは、さすがに私も注文されたことはありません。
そのままで飲みたい場合は、ショットグラスの大きさや容量(背の低いものは45ml前後、背の高いものは75ml前後)による飲みやすさがあり、ロックで飲みたい場合も、大きめの氷で液面が上がってくるので、シングルかダブルがおすすめですよ。
トリプルはもはやジョークのレベルだ
ちなみに、シングル、シングルといえば画像のシングルトン12年(スコッチウイスキー)で、こちらの「グレンオード」はすでに終売となっていますが、現在は後継品の「ダフタウン」が流通しています。
ボトルが平べったい特徴的な形をしているので、ふつうのウイスキーよりも、もしかすると計量しやすい(そそぎやすい)かもしれません。
スピリッツ
ジン・ウォッカ・ラム・テキーラは4大スピリッツとよばれ、大きく分類すると、ブランデーやウイスキーなどの蒸留酒もこのスピリッツのカテゴリーに属しますが、これらのスピリッツも、だいたいワンショットは30mlと考えておいてまちがいはありません。
個人的には、アルコール度数が40度前後のものは30mlが基本となる傾向が強いように思います。度数的にも、それくらいがちょうどいいからです。
なお、スピリッツといえば、フランス産の世界No.1で、スーパープレミアムなグレイグース(ウォッカ)ははずせません。ほんのりと甘く、ボトルのガチョウもかわいらしいですね。
ベルモット
ベルモットとは、白ワインをベースに、薬草や香草などのハーブ・スパイスを加え、独特の風味に仕上げたフレーバード・ワインのこと。
種類は甘口のスイートベルモット、辛口のドライベルモットがありますが、ベルモットの場合は、ワンショットは45~60mlになることが多いように思います。
というのも、ベルモットはアルコール度数が18度前後のものが多く、スピリッツなどとくらべると度数が低くて飲みやすいため、そのぶん30mlだともの足りなく感じてしまうから。
代表的なブランドのベルモットは量が多い(1000ml)ので、たくさん入れたくなってくるという心理が働くような気もします。
フォーティファイド・ワイン
フォーティファイドワインとは、「酒精強化ワイン」や「アルコール強化ワイン」などとよばれるワインのことで、製造工程中に、ブランデーやアルコールを添加することで、アルコールを強化したり、保存性を高めたりしたワインのことをいいます。
フォーティファイドワインの代表格は、スペインの「シェリー」、そしてポルトガルの「ポートワイン」や「マデイラ」ですが、これらもワンショットは45~60mlが多いのではないかと思います。
その理由はベルモットとだいたい一緒で、やはりこれらはワインの仲間ですし、酒精強化といってもアルコールの度数は15~22度くらいであり、かつストレートが基本の飲み方となるため、30mlはやはり味気ないから。
ちなみに、画像に映っているのは約250年の歴史を誇るオズボーン社のシェリーで、左から順に、ソレラという熟成システムが開始された1827年を冠した極甘口のペドロヒメネス、『アルハンブラ物語』の作者アーヴィングがこよなく愛したとされる甘口のクリーム、ナポレオン戦争でスペイン軍が勝利をおさめた地である「バイレン」の名を冠した辛口のオロロソ。
ハーブ系リキュール
リキュールとは、ベースとなるスピリッツに植物などの香気成分を添加したもののことをいい、とくに草根木皮を原料とした香草(ハーブ)系リキュールのなかでも、ビター系リキュールとよばれる「カンパリ」や「スーズ」などの度数が低いものは、ワンショットが45~60mlになることが多い気がします。
これらも上記同様の理由に加え、基本的には割って飲むことが多く、30mlだとやはりすくないように感じるから。
ただし、ハーブ系リキュールには多くのものがあり、しっかりとした味と度数があるものは30mlが基本となることが多いので、一部のものだけすこし多くなる場合がある、といったところでしょうか。
スーズはトニック割りやグレープフルーツジュース割りがおすすめだ!
番外編:ウイスキーのハーフショットはありかなしか
ウイスキーでもその他のお酒でも、オーダーは1ショットからが基本となりますが、「ハーフショット」というワンショットの半分、つまり15mlのお酒をグラスにそそいでもらえる注文方法があります。
ハーフショットはおもに、1杯で2000円、3000円とする高額なお酒を多く取り扱っているお店などが、お客さんに手ごろな価格で、そしていろんなウイスキーを楽しんでもらいたいというあくまでも善意でおこなっているサービスのようなものであって、どこのお店でもしてくれるサービスではありません。
個人的には、ハーフショットをやっているバーは、どちらかというと少数派のような気もします。なぜなら、お店の経営的には、ハーフショットはややきびしいサービスだったりもするからです。
こちらの記事(バーで一杯だけはお店に対して失礼にあたるのか?を現場経験から徹底解説)でも解説しているとおり、バーはお客さんが何杯か飲んでくれることを想定してショットの金額を決めたりもしています。それに加えて、じつはウイスキーの仕入れが高額になればなるほど、お店としては販売価格を上げづらくなって苦しくなる(逆にいうとお客さんはお得になる)という事情もあるのです。
このへんの内部事情については、話しだすとかなり長くなってしまうので、今回は割愛しますが、もしハーフショットを利用する場合は、ハーフショット1杯だけとなると、お店の善意をむげにするような感じになってしまうこともあるため、何杯か注文するようにしたほうが無難でしょう。
また、当然のことのように「ハーフショットで」といってしまうと、お店によってはあまりよく思われない(失礼と認識されてしまう)こともあるので、ハーフショットにしてもらいたいときは、そもそもハーフショットがそのお店ではできるのかをきちんと聞いてみるのがベター。
事前に聞いてみるだけで、「この人はわかっている方だな」と、ハーフはやっていないお店でも、特別にハーフでお酒を出してくれることもあるかもしれないですよ。
今回のまとめ
・ツーショット=ダブル=ツーフィンガー
・ワンショットは30~60mlまで幅広い、そしてものにもよる
ワンショットはお酒にもよりますが、基本は30ml、たまに45ml、場合によってはそれ以上と考えておけばまちがいはありません。
とはいえ、これはお店による部分も大きいため、たとえばワンショットを多めに設定しているぶん料金設定もすこし高めとか、逆にワンショットをすくなめに設定しているぶん料金設定もすこし低めとか、そういった場合も当然あります。
そういったことからも、あくまでひとつの基準として、アルコール度数が高いものは30ml、アルコール度数が低いものは45ml以上になりやすい傾向がある、と考えておくのがいいような気もします。
この法則は、一般的なバーであれば、ある程度の共通する部分はきっとあるはず。ぜひ、バーに行かれるさいや、ご自宅でお酒を楽しまれるさいの、ご参考にしてみてください。
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