バーで一杯だけはお店に対して失礼に当たるのか?現場から徹底解説

皆さんはこんな言葉を聞いたことはないでしょうか?「バーに来て一杯だけで帰るのはお店に対して失礼だ!」

「バーで一杯だけはマナー違反」。実は私も飲食業に従事する諸先輩方からそういったことを教わったり、特に店の経営者からはかなり口酸っぱく言われてきたのですが、果たしてそれは本当にそうなのか。

バーには守らなければならないマナーがありますが、マナーは知ってて当たり前といった風潮が少なからずあることも確かです。しかしそんなことではバー初心者の方はいつまで経ってもバーの扉を開けないままになってしまいます。

そこで、今回はバーのマナーを解説していくのに先駆け、このバーで一杯だけはマナー違反なのかについて全力で解説したいと思います。今こそ一杯だけ問題に終止符を……

そもそもなぜ一杯だけが失礼なのか

まず、バーに来て一杯だけで帰ることが失礼とされる理由ですが、これは突き詰めるとバーの経営事情の話になってきます。なので、先に言っちゃうとお客さん側がそこまで気にするようなことでもないと思います。

しかし、今回は徹底解説すると謳っているのでこのまま話を進めていきますが、気になる「一杯だけ問題」の主な理由は何なのかというと、これは「経営」「客単価」「付き合い」の3つの理由で説明することができるでしょう。

1. 経営事情

バーは最低でも利益を上げなければ運営していくことができない飲食店なので、店を運営していくためには売上から家賃、光熱費、仕入れ、人件費などの経費を引いて利益を上げなければなりません。赤字が続けばお店は閉店に追い込まれてしまいますよね。

そこで、当然ですがバーはお店を運営していくために売上を予測してメニュー構成やショット(一杯)の値段を設定する訳ですが、特に街場のバーでは、一人のお客さんが飲む杯数を一杯と予測して値段設定をしているところはないと思います。

街場のバーでは大体チャージが500円、ショットは最低価格で700円前後が多く感じますが、これはお店に来てくれたお客さんが何杯か飲んでくれることを前提にした料金設定であって、一杯だけを前提とした金額ではないでしょう。それはチャージやショットなどの料金に先ほどのような経費も含まれているからです。

もしお客さんが飲む杯数を一杯だけと予測して料金設定をするならば、それぞれの値段を引き上げるか、回転数を重視するでもしない限りお店を運営していくのは難しくなってしまいます。

よって、一杯だけが失礼とされる第一の理由については、こういった飲食店の経営事情を知る同業者やそういった事情を知っている方が、一杯だけではお店の経営が成り立たないことを知っているからでしょう。

2. 客単価

そして、これはそこまで考える方もあまり多くはないと思うのですが、一杯だけで帰ってしまうとその日の客単価(お客さんが使用した金額の平均)が落ち込みます。

特に経営者からすると、単価が低いというのは頭を悩ませる要因の一つにもなり得ますし、さらにはこの客単価がバーテンダーの力量や、その日の営業内容を測る一つのバロメーターにもなるため、単純に数字だけを見れば単価が低いというのは良いことではありません。

よって第二の理由に、主に同じような境遇や事情を知る同業者、つまり飲食業界の方が単価問題に気を遣うからというものがあります。

3. 店同士の付き合い

また、バーにはバー同士の横の繋がりや、周辺の飲食店との繋がりは結構あったりもします。例えばよくあるのが、周辺の飲食店の方が仕事終わりに飲みに来てくれたり、その代わりにバーテンダーが営業前にご飯を食べに行ったり、休日にそのお店に飲みに行ったりといったようにです。

そこでお互いがそうなのですが、お店に行った時にはやはり気を遣います。

「いつも来てくれているから」「この間は結構お金を使ってもらったから」「こちらもたまにしか来れないから」といった風にですね。

そうするとお互い一杯だけで帰るという訳にはいかなくなってきます。お互いにお酒をご馳走し合ったりもしますし、たまにしか来れない分、来たからにはできるだけ多くお金を使おう、となったりもする訳です。

よって第三の理由としては、飲食店同士には付き合いがあり、これも結局のところ同業者同士が気を遣うからなのです。

つまり最初にも言いましたが、この「一杯だけ問題」はお客さんがそこまで気を遣うようなことでもないんですよね。なのでバーに来て一杯だけでも全然問題はありませんし、むしろ私からすれば大歓迎ですよ。

私が一杯だけの方を歓迎する理由

私は一杯だけ飲みたいという方を大事にしたいと思っています。それには、恥ずかしながら私が過去に失敗してしまった苦い経験が関係しているのです。

これは私がまだ駆け出しのバーテンダーだった頃の話。当時お店には「ジントニックを一杯だけ」という、若くもなく、かといって年を取っているという訳でもないご夫婦のお客さんが、頻繁ではありませんが定期的にお店に来てくれていました。

お二人の雰囲気から察するに旦那さんが「一杯だけお願い!」と、奥さんは「じゃあ一杯だけね」と付き合っているような感じで。

流石に私も駆け出しとはいえ、このご夫婦が何を目的として来られていたのかくらいは察しがつきますから、特に二杯目を勧めることもありません。

注文された一杯ずつのジントニックが出来上がり、その氷が小さくなり始めるまでの間、ご夫婦はゆったりとした時間の流れをバーで感じる。それが、特に旦那さんにとってはちょうどいい息抜きだったのでしょう。

しかし、そんな時間は長くは続きませんでした。

ある日、この「必ず一杯だけで帰る」お客さんの存在を知った経営者から、私はこのように言われたのです。

経営者
経営者

毎回一杯だけで帰られてるとさ、店潰れちゃうんだよね

要するに二杯目を売れと。

私は不本意ながらこのご夫婦に二杯目を勧めるようになりました。例えば「新しいジンが入ったので良かったら二杯目いかがですか?」といったふうに。

確かに追加で注文を頂くこともありましたが、一杯だけと決めている理由には人それぞれの事情もあると思いますし、場合によっては退店を急かされるように感じることもあります。

結局、そのようなやり取りが何度かあった後、そのご夫婦のお客さんは店には来られなくなってしまったのです。

それが店の営業方針だったと言ってしまえばそれまでですが、私がお二人の居場所を奪ってしまったことは事実で、当時の私に実力さえあれば他の方法でお二人の居場所を守ることもできたはずだったのです。

これが、私が今でも悔やむ過去の失敗と、そして「一杯だけ」のお客さんを歓迎する理由の一つです。

一杯だけで利用する際の注意点

このように、私は一杯だけでの利用は歓迎するスタンスですし、私たちのような飲食関係者とは違って、皆さんはそこまで気にする必要はありませんから、一杯だけでのバーの利用はOKです。

しかし、一杯だけで利用する際には注意するべきこともあるので、最後に主な注意点だけ併せて解説しておきます。

1. 長居しないこと

バーにおいては基本的に「一杯にかかる時間=滞在時間」と考えておくと間違いはありませんが、例えばショートカクテルであれば15~20分、ロングカクテルであれば25~30分までがベスト、といったように、一杯にかかる時間は何を飲むかによっても変わってきます。

ちなみにこれはカクテルの温度変化が関係していることなので、例えばウイスキーのストレートなんかを注文すれば経過時間による味の変化はあまりないので、ゆっくりと時間をかけて飲むこともできる訳ですが、何を飲むにしてもゆっくりがダラダラになってしまうと宜しくありません。

具体的には一杯だけの場合、何を飲むにしても滞在時間は40分前後がベスト、1時間が限界、それ以上はアウツと覚えておいていいと思います。

実際、ショートカクテルは量も少ないので必然的に飲み切るまでの時間も短くなりますが、飲み終わったらすぐに帰ってくださいとはバーテンダーは言いませんし、むしろ20分という短時間で帰られてしまうと何か気に入らないことがあったのかなと、バーテンダーも不安になると思います。

しかし飲み終わった後もダラダラと長時間に渡って居座り続けるのはあまり宜しくない、というかこれは完全なマナー違反となるので、初めのうちは少し時間にも気を遣ってみるといいと思います。慣れてくると時間は体感で分かるようになってくると思いますよ。

2. カフェ感覚で利用しない

実際こういったことは極めて少ないのですが、カフェ感覚で一杯だけ頼んだらあとは何をしていてもいいと思われている方がいたりもします。例えば以下のようなことが当てはまります。

  • パソコンを持ち込んで作業を始める
  • 漫画、雑誌、新聞などを持ち込んで読み始める
  • スマホやタブレットでゲームを始める

これに関しては、そもそもバーが何をするための場所なのかを考えればやってもいいこと、いけないことは自ずと答えは出てくると思います。カフェやファミレスなどではこういった作業が良しとされている所も多いですが、基本的にバーではこういったことは良しとはなりません。

もし何かやりたいことがあって、やってもいいのか分からないことがある場合は、バーテンダーに聞けば大体のことは教えてくれるので、とりあえずバーテンダーに聞いてみるといいと思いますよ。

3. 最後に一言添える

これは特に訪れたバーが今後も通いたいと思ったお店だった場合、会計時や帰り際に「一杯だけですみません」と一言添えておくと、その後の関係が円滑になったりもします。

先程も少し触れましたが、お客さんが一杯で、さらに無言で帰ってしまうとバーテンダーは何か気に入らないことがあって帰ってしまったのかなとも考えます。

皆さんが「ここは良いお店だったな、また来たいな」と心の中で思っていても場合によっては全く伝わらず、次回来店時にバーテンダーから「前回もしかしたら気に入らないことがあって一杯で帰ってしまった人だ」と認識されることだってあるでしょう。

そこで「一杯だけですみません」の言葉があると、その後に続く言葉は言わなくても思っていることは伝わったりもします。バーテンダーは察するのが仕事でもありますからね。

また、これはバランスの話なので皆さんが気にすることではないのですが、何杯も飲んでくれるお客さんがいるからこそ一杯だけのお客さんもお店に来れるという考え方も確かにあるため、一杯だけのお客さんを良く思わない店主もいたりはします。

ですが、こういう場合も帰り際に「一杯ですみません」と言っておけば店主の機嫌も突然良くなって何とかなったりもするんですよね。

それでは何がこのように人の気持ちを動かすのかというと、それは正に一言一言の言葉であったり、挨拶の言葉だったりするわけです。

結局何が言いたいのかというと、お互い挨拶は大事にしようってことです。

今回のまとめ

・一杯だけが失礼というのは主に飲食関係者同士の話
・一杯だけで利用する際もマナーを守ろう
・挨拶は大事

バーという場所は皆さんが思っている以上に人間臭い場所だったりもします。言うなればそれは「店対客」という場所ではなく、「人対人」という場所。

例えば、皆さんに一杯しか飲むお金がなかったとしても、その時真剣な悩み事を抱えていたのであれば、時間とか、金とか、そんなものは関係なく、バーテンダーは限度を超えて相談に乗ってくれたりもします。

しかし、それもお互いの信用があってこその話です。

親しき中にも礼儀あり、日々の挨拶。こういったことができている方、信用のおける方が困っている時は、バーテンダーも全力で助けようとしてくれるでしょう。

「こんばんは」から「おやすみなさい」まで、挨拶ができる人は感じが良いぞ!

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Comment

  1. ぴーやん

    一杯だけで帰られては店が潰れるは経営者の大きな間違い。絶えず満席なら一杯で一時間以上居るお客様にはススメてもいいけど、そうじゃないなら店側のマナー違反です。
    一杯でも飲んでくれる客を獲得する努力をしないと。一杯で一時間以上居る客は絶えず満席だと居心地は悪いでしょうから常連にはならないでしょ。
    バーを経営していれば普通にフラって入ってきて一杯だけ飲んですぐに帰るお客様は度々経験するはず。
    私はラッキーなお客様だと思っています。
    『ニコラシカ一杯だけ』と言って5、6分で帰られた時には色々考えさせられますよ。

  2. 投稿作成者

    コメントありがとうございます。
    該当の台詞は当時発せられた背景に様々な事情があったようで、実を言うと私もそれが100%本意なのかどうかは今となっては判断し兼ねるのですが、やはり色んな経営者の方がいらっしゃるのでそういった意見もあり、それがルールとなっているお店ではそれが正しいことになるのかもしれないとは考えさせられました。
    ただ、私はこの経験を反面教師と捉えているので、そうならないように努力したいと思っています。

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