三大神経伝達物質の分類とその一つ、「覚醒と闘争」のノルアドレナリン

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脳内での情報伝達に使われる物質には精神疾患と深い関係があるとされる3つのものがあり、これらは三大神経伝達物質と呼ばれています。

前回は情報伝達の流れと神経伝達物質の働きについて見ていきましたが、この伝達物質のなかにはうつ病をはじめとする精神疾患(こころの病)の原因を探るうえで欠かすことのできない、「三大神経伝達物質」と呼ばれるものがあります。

これは、こころと体に大きな影響を与える重要な役割を持ったもので、人が生きていくうえで必要な機能にも深く関係しているものです。

ということで、今回からは複数回に分けてこの3つの神経伝達物質について見ていくことにし、まずはそのなかの「ノルアドレナリン」というものを見ていきます。

前回はこちら↓
【簡単】神経伝達物質で情報を伝える「シナプス伝達」をわかりやすく解説

目次

三大神経伝達物質とは

神経伝達物質にもさまざまな種類があるのですが、大きく分類するとアミノ酸、ペプチド類、モノアミン類という3種類のものに分けることができます。

アミノ酸やペプチドは、栄養・美容ドリンクなどでよく見かけますが、今回見ていくのはこのなかであまり見かけることのない、いちばん最後の「モノアミン」です。

モノアミン神経伝達物質

モノアミンに分類される主な神経伝達物質は、ノルアドレナリン・アドレナリン・ドーパミン・セロトニン・ヒスタミンというものがあり、これらの神経伝達物質を総称したもののことをモノアミン神経伝達物質といいます。

「アドレナリンが出続けていてけがの痛みを感じなかった」とかいう話は一度は聞いたことがある方も多いと思います。神経伝達物質というと聞き慣れないと思うのですが、その1つ1つを見ていくと意外と身近なものだったりもするわけですね。

そして、今回の本題である「三大神経伝達物質」とは、なにを隠そうこのモノアミンに分類される神経伝達物質の3つ、ノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニンのことをいうのです。

これも簡単に見てみましょう。

神経伝達物質の分類

ここまでの話をわかりやすくまとめると、神経伝達物質には大きな3つのカテゴリーがあって、その1つであるモノアミンというカテゴリーのなかには5つの主要な神経伝達物質があり、そのなかの3つが三大神経伝達物質と呼ばれているということです。

とても簡単ですね!

それでは、次に三大神経伝達物質のそれぞれの働きについて見ていきたいと思うのですが、今回はいちばん最初にノルアドレナリンについて見ていくことにします。

ノルアドレナリンの作用と働きについて

1つ目の三大神経伝達物質であるノルアドレナリンは、ストレスを感じたときなどに分泌され、怒りや不安、恐怖などの感情を引き起こすことから「怒りホルモン」や「ストレスホルモン」とも呼ばれています(ホルモンとは神経伝達物質と同じような働きをする情報伝達物質のこと)。

アドレナリンに変わる前の物質でもあり、アドレナリンとともに心身に作用することが知られています(ノルアドレナリンは主に精神面、アドレナリンは主に肉体面に作用します)。

主な作用には以下のようなものがあります。

  • 心身の覚醒、心拍数や血圧の上昇、体の緊張、瞳孔の拡大
  • 注意、集中力の向上、長期の記憶力向上
  • 痛みの軽減、筋肉の収縮力を高め身体機能を高める

これらの作用に共通するのは、ズバリ心身の活発化。

ノルアドレナリンは心身を覚醒させる作用があり、精神・肉体を戦闘状態にしてくれる働きがあるのです。そのため、ノルアドレナリンは「闘争か逃走(fight or flight)ホルモン」とも呼ばれています。

そしてこの機能というのは、敵と対峙したときに闘うか逃げるかを実行するために、多くの動物に備わった原始的なものなのです。

それはいったいどういうことなのか? これもたとえ話で考えるとわかりやすいです。

目の前にクマが現れたとする

たとえば皆さんが釣りをしていたところ、目の前にとんでもなく大きい野生のクマが現れたとします。皆さんが持っている武器は手にした釣り竿一本しかありません。さて、これはどうしたものか。

まぁ常識的に考えて逃げるしかないのですが、この状況で闘うにせよ、逃げるにせよ、体や精神がだらけた状態では闘って勝つことも、その場から逃げ切ることもできないですよね。

そこで、ノルアドレナリンの出番というわけです。

危険が迫った状態で生き抜くために心身を覚醒させ、感覚を研ぎ澄まし、戦闘状態になった体で最善の選択をし、その状況を切り抜ける。これこそが元々のノルアドレナリンの働きなのです。

今にも襲い掛かってきそうなクマ。釣った魚をあげても喜んで帰ってくれることはないでしょう。現実はそんなに甘くはありません。

そして、現代社会ではそのクマがさまざまなものに姿を変えて襲い掛かってきます。たとえば仕事関係のお客さんであったり、上司や部下、同僚であったり、また、すれ違う他人であったりといったようにです。

それらと対峙するストレスにノルアドレナリンは反応し、覚醒作用によって仕事の能率を上げてくれたり、注意・集中力を上げてくれたりと、心身に影響を与えてくれるのです。

一見すると良い影響しかないように思えるノルアドレナリンですが、しかし、その分泌量に異常が起きてしまうと、逆に悪い影響がでてきてしまう場合もあります。

ノルアドレナリンが過剰に分泌される場合

ノルアドレナリンの分泌量が正常であれば問題ないのですが、なんらかの原因によって過剰に分泌されるようになってしまうと必要以上に攻撃性が増幅され、イライラしたり怒りやすくなるようになってしまいます。

また、恐怖や不安などの感情が必要以上に増幅されることで、「対人恐怖症」や「パニック障害」といった「不安障害」を引き起こすとも考えられ、「躁状態」を引き起こすのもノルアドレナリンの過剰が原因と見られています。

躁状態とはいわゆる「ハイ」な状態のことで、気分が大きく「今ならなんだってできる」と思い込んだり、活発に動き続けたり、散財したり、喋り続けたりと、注意や関心が次々と変わり、行動に落ち着きがなくなってしまうのです。

さらに、長期間にわたるストレスにさらされ、ノルアドレナリンの過剰な分泌が続くと、その過程で脳の記憶をつかさどる部位(海馬)に異常が生じ、認知症を発症する原因にもなると考えられています。この状態はPTSD(心的外傷後ストレス障害)にも見られる症状としても知られています。

ノルアドレナリンの分泌が不足する場合

続いて、今度は過剰分泌ではなく分泌が不足する場合、これは気力や意欲が低下し、無気力の状態になってしまいます。

減少した分泌量で正常な作用を行おうと、少しのストレスでも大きく反応するようになってしまい、些細なことでイライラしたり、恐怖や不安、強迫観念などの消極的な感情を生みやすくもなってしまうのです。

そして、これらの状態が長く続くことで「うつ病」を発症する原因になるとも考えられています。

正常に機能すれば私たちに恩恵を与えてくれるノルアドレナリンですが、一度そのバランスが崩れてしまうと、このようにさまざまな病気を発症する原因にもなってしまうということ。

私も経験した「うつ病」や「対人恐怖症」などの原因が少しずつ見えてきましたね。

今回のまとめ

・三大神経伝達物質とはノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンのこと
・ノルアドレナリンは心身を覚醒させ、精神・肉体を強化してくれる
・ノルアドレナリンの過不足は精神疾患の原因にもなる

今回は三大神経伝達物質の1つであるノルアドレナリンについて詳しく見ていきました。

これだけを見るとなんだが危険なものだな……と思われるかもしれませんが、大丈夫です、安心して下さい。残る2つの神経伝達物質のうちの1つに、ノルアドレナリンが過剰に分泌されることを抑制し、バランスを取ってくれる機能を持ったものがあるのです!

しかし、それはいちばん最後のお楽しみということで、次回は2つ目の三大神経伝達物質、「ドーパミン」について詳しく見ていきましょう。

次回ギャンブルなどの依存症に関わる脳内麻薬、「快感と報酬」のドーパミン

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