三大神経伝達物質(その2)「快感と報酬」のドーパミン

三大神経伝達物質の1つであるドーパミンは私たちに生きる喜びや、生きる意欲を与えてくれるのですが、バランスが乱れてしまうと「依存症」を引き起こす原因にもなってしまいます。

前回は三大神経伝達物質のうちの1つで、ストレスなどに反応して心身を覚醒させるノルアドレナリンの作用や働きについて見ていきましたが、今回は残りの2つの内の1つ、ドーパミンについて詳しく見ていきましょう。

ドーパミンの作用、働きについて

ドーパミンは快楽を司る役割を持った神経伝達物質で、その働きから「快感ホルモン」とも呼ばれています。ノルアドレナリン、アドレナリンに変化する前の物質(前駆体)でもあり、「快」の感情や意欲に関わっています。

主な作用に以下のようなものがあります。

  • 快感・快楽の感情をもたらす、意欲を向上させる、行動への動機付けをする
  • 向上心をもたらす、記憶・学習能力の向上、ストレスを軽減させる
  • 立ち上がる、手を動かすといった運動機能を調節する

これらの作用を見てみると、モチベーションを上げてくれるものが多いですよね。
ドーパミンが働く場所は「報酬系」と呼ばれています。この「報酬系」は欲求が満たされることで活性化し、私たちに「快」の感情を与えてくれるのですが、この報酬と快感の関係は生きるための原動力となり、意欲やモチベーションを上げてくれるのです。

例えばあるところに若き少年がいたとします。今回は彼の成長と共にこの「報酬系」と、ドーパミンの働きを見ていきましょう。

人生における報酬系の関わり

報酬と快感

小学生の彼はテストで90点以上を取りたがっていました。それはなぜかというと両親や先生に褒めてもらいたかったからです。彼にとっては何かを買ってもらえるなんてことはどうでもよくて、褒めてもらえることが何よりもの「報酬(ご褒美)」でした。
彼は見事テストで目標点を取る事が出来ます。両親や先生に沢山褒めてもらうことができました。それは彼にとってとても気持ちがいい「快感」で、次のテストではもっといい点を取ろうという「意欲」が溢れてきます。

この時彼の脳内ではドーパミンが分泌され「報酬系」が活性化。目標を達成する→報酬(ご褒美)がもらえる→快感という流れができています。

長期的な報酬と意欲

その後中学3年生になった彼にはどうしても行きたい高校ができました。
その志望校に合格して憧れの高校生活を送っている自分を想像すれば、日々の試験勉強は苦ではありませんでした。
彼は見事志望校に合格し、努力が報われたことへの喜びを噛み締めました。

このように長期的な報酬(この場合は試験に合格する)を予想することでもドーパミンは分泌され、(学習)意欲が向上し目先の欲求を抑えて目の前の困難に立ち向かうことができます。

動機と学習

高校を卒業した彼は大学生になり、一人暮らしを始めました。
掃除や洗濯、料理といった家事は全て自分でやらなければなりません。散らかった部屋にいると気分が優れないので、部屋を掃除してみると清々しい気分になりました。
また寝坊しても起こしてくれる人はいないので、朝起きたら二度寝しないために顔を洗って歯を磨くことが習慣になっていました。

これらの掃除や朝の習慣といった行動には必ずそれをしたいと思う「動機」つまり理由があります。汚い部屋にいると嫌だという動機(理由)で部屋の掃除を始め、綺麗になった部屋をみて気持ち良さ(快感)を感じます。それはドーパミンの働きによって「記憶」され、部屋を片付けると気持ちがよくなるものなんだと「学習」します。そうすることでまた部屋が汚くなった時には掃除をしようといった「動機」が生まれ、掃除をすることへの「意欲」が生まれるのです。

私たちの行動には意識する意識しないに関わらず、突き詰めると全てに「動機」があります。ドーパミンは全ての行動の背景にある「動機付け」を行ってくれるのです。

動機と意欲、報酬と快感

これら「報酬系」の働きは彼が社会人になっても同じです。
早く仕事を覚えたい、上司に追いつきたい、出世したい。これらの目標を成し遂げ、自分のやりたいことや、自分のなりたい姿を想像することで目先の快楽を我慢し、努力することができます。目標を達成できればさらなる次の目標に挑戦することができるのです。

そして引退後も。
彼は今まで見たことがなかった世界の景色を見に旅にでました。目の前に広がる光景にこんな世界があったのかと感動し、また新たな景色を見に行きたいと思います。また旅先で買った本を読んでみると全く知らなかった知識を得ることができ、さらにその分野の知識を得たいと思うのでした。

人生は動機と意欲、快感と学習の連続です。ドーパミンが正常に働いてくれれば私たちは常に意欲的に生きることができ、学び続けることができるのです。

つまるところ・・・

「ドーパミンは人生」

といったことろでしょうか・・・(笑)

ドーパミンの働きを見てみると私たちにとっていい影響しかないように思えるのですが、これもノルアドレナリンと同じく分泌量に異常が起きてしまうと逆に悪い影響が出てきてしまいます。

過剰に分泌される場合

ドーパミンが過剰に分泌されると「ニコチン依存症」「アルコール依存症」「ギャンブル依存症」など、様々な依存症を引き起こすとされています。
また幻覚や幻聴、妄想などを引き起こす「統合失調症」や、「過食症」もドーパミンの過剰分泌が原因と考えられています。

「なるほどね、ドーパミンと報酬系が依存症を引き起こすんだね、そうそう・・・
で、なんだっけ?」

という方のために復習も兼ねて依存症のメカニズムを見ていきましょう!

依存症のメカニズム

基本的にドーパミンの働きはこのような順序になります。

動機(行動)→ドーパミン分泌→報酬系が活性化→快感→動機(行動) 
 

これを分かりやすくするとこのようになります。

行動→報酬(ご褒美)→快感
 

この行動の部分をギャンブルに当てはめて考えてみましょう。
ギャンブルという行動によりドーパミンは分泌され、得られたスリルや興奮は報酬(ご褒美)となり、快楽を感じさせてくれます。しかしその快楽をまた味わいたいという動機からギャンブルが習慣化していくと、次第に快楽への耐性ができていき、今までと同じ快楽では満足できなくなっていきます。
そうなると一度に使う金額や時間がどんどん増えていってしまいますよね。
この時ドーパミンはギャンブルをやりたいという動機や行動で分泌されますが、快楽への耐性がついてしまっているせいでギャンブルをしに行っても欲求が満たされなくなってしまいます。そうなると欲求を満たそうとギャンブルへの衝動はさらに抑えがたいものになり、自分の意志では止められないものになってしまいます。
しかしドーパミンはさらなる快楽を求め、分泌量を増やすのです。

このように快感を求める動機(衝動)が暴走し、報酬(ご褒美)に満足できず、さらなる快楽を求めのめりこんでいく状態が依存症です。
アルコール依存も、過食症も同じようなことが脳内で起きているのです。

分泌が不足する場合

ドーパミンが不足すると、意欲や気力、行動力が低下し、物事への興味や関心がなくなってしまいます。記憶・学習能力も低下し、ストレスへの耐性も弱ってしまいます。
また運動機能の低下から「パーキンソン病」を発症する原因にもなるとされています。

このように生きる目的や気力を失い、無気力・無関心の状態になってしまうことで、「うつ病」の原因にもなると考えられます。

今回のまとめ

・ドーパミンは生きる目的や意欲を与えてくれ、喜びや気持ちよさといった快楽を感じさせる
・ドーパミンが過剰に分泌されると快楽への衝動が暴走し、「依存症」になる
・ドーパミンが不足すると生きる意欲が低下し、「うつ病」の原因にもなる
 

今回はドーパミンの働きについて見ていきました。
ギャンブルはもう辞めようと思っても衝動が抑えきれずに気がつけばまたギャンブルへ。そしてまた辞めようと思うも数日後には再び衝動に襲われる。そのお気持ちは痛いほどに分かります。ギャンブル依存症に悩まされている方、辞められないのは意思が弱いからではありません、これはこころの病気だからなんです。

そして嫌なことがあったから、つらい事から目を背けたいからといってお酒に逃げてはいけません。その飲み方はかなり危険です!

これらの依存症や、うつ病などの精神疾患(こころの病)は克服することができます。
次回はその鍵ともなる、残る1つの三大神経伝達物質セロトニンについて見ていきたいと思います。お楽しみに。

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