ギャンブルなどの依存症に関わる脳内麻薬、「快感と報酬」のドーパミン

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ドーパミンは私たちに生きる喜びや意欲を与えてくれますが、バランスが乱れてしまうと「依存症」を引き起こす原因にもなってしまいます。

前回は三大神経伝達物質の分類と、そのうちの1つである、ストレスなどに反応して心身を覚醒させる、ノルアドレナリンの作用や働きについて見ていきましたが、今回は残りの2つのうちの1つ「ドーパミン」について詳しく見ていきます。

ドーパミンは「脳内麻薬」とも呼ばれる脳内物質で、私の場合はギャンブルでしたが、なにかに依存してしまった経験がある、現在なにかに依存してしまっているという方こそ、知っておくべきものでもあります。

ただ、本来は私たちが意欲的に生きていくために必要なものなので、なにも危ないだけのものというわけではないですよ。

前回はこちら↓
三大神経伝達物質の分類とその一つ、「覚醒と闘争」のノルアドレナリン

目次

ドーパミンの作用、働きについて

三大神経伝達物質の1つに数えられる「ドーパミン」は、快楽をつかさどる役割を持った神経伝達物質で、その働きから「快感ホルモン」とも呼ばれています。ノルアドレナリンやアドレナリンに変化する前の物質(前駆体)でもあり、「快」の感情や意欲に大きく関わっています。

主な作用には以下のようなものがあります。

  • 快感・快楽の感情をもたらす、意欲を向上させる、行動への動機づけをする
  • 向上心をもたらす、記憶・学習能力の向上、ストレスを軽減させる
  • 立ち上がる、手を動かすといった運動機能を調節する

これらの作用に深い関係があるのは、私たちのモチベーション。

というのも、ドーパミンが働く場所は「報酬系」と呼ばれていて、この「報酬系」は欲求が満たされることで活性化し、私たちに「快」の感情を与えてくれるのですが、この報酬と快感の関係は私たちが生きるための原動力となり、意欲やモチベーションを上げてくれるからなのです。

……これもよくわからないですね! それでは、今回も簡単な話で見ていきましょう!

人生における報酬系の関わり

例えば、あるところに若い少年がいたとします。ごく普通の少年。名前はそうですね……ミナト君とでもしておきましょうか。今回は、彼の成長とともにこの「報酬系」とドーパミンの働きについて見ていきたいと思います。

報酬と快感

小学生のミナト君はとても勉強熱心で、テストではいつも高得点を取りたがっていました。それはなぜかというと、両親や先生に褒めてもらいたかったからです。

彼にとってはなにかを買ってもらえることよりも、人から褒めてもらえることがなによりもの「報酬(ご褒美)」でした。

そして、みごとテストで目標点を取ることができると、両親や先生にたくさん褒めてもらうことができました。それは彼にとってとても気持ちがいい「快感」で、次のテストではもっといい点を取ろうという「意欲」があふれてきたのです。

このとき、彼の脳内ではドーパミンが分泌され「報酬系」が活性化。「目標を達成する → 報酬(ご褒美)がもらえる → 快感を感じる」という流れができています。

長期的な報酬と意欲

その後、中学3年生になったミナト君にはどうしても行きたい高校ができました。

志望校に合格して憧れの高校生活を送っている自分を想像すれば、日々の試験勉強は苦ではありません。彼はみごと志望校に合格し、努力が報われたことへの喜びを噛み締めたのです。

このように、長期的な報酬(この場合は試験に合格する)を予想することでもドーパミンは分泌され、(学習)意欲が向上するなど、目先の欲求を抑えて目の前の困難に立ち向かうこともできます。

動機と学習

高校を卒業したミナト君は大学生になり、一人暮らしを始めました。

掃除や洗濯、料理といった家事はすべて自分でやらなければなりません。散らかった部屋にいると気分が優れないので部屋を掃除してみると、とてもすがすがしい気分です。

また、寝坊しても起こしてくれる人はいないので、朝起きたら二度寝しないため、すぐに顔を洗って歯を磨くことが習慣になっていました。

さて、これらの掃除や朝の習慣といった行動には必ずそれをしたいと思う「動機」、つまり理由が無意識も含め必ずあります。

汚い部屋にいると嫌だという動機(理由)で部屋の掃除を始め、きれいになった部屋を見て気持ちよさ(快感)を感じる。それは、ドーパミンの働きによって「記憶」され、部屋を片付けると気持ちがよくなるものなのだと「学習」します。

そうすると、また部屋が汚くなったときには掃除をしようといった「動機」が生まれ、掃除をすることへの「意欲」が生まれるのです。

このように、私たちの行動には意識するしないに関わらず、突き詰めるとすべてに「動機」があり、ドーパミンはすべての行動の背景にある「動機づけ」を行ってくれるのです。

動機と意欲、報酬と快感

そしてこれらの「報酬系」の働きは人が社会人になっても同じです。

早く仕事を覚えたい、上司に追いつきたい、出世したい……。これらの目標は、成し遂げたあとの自分の姿や、自分のやりたいこと、自分のなりたい姿を想像することで目先の快楽を我慢し、努力することができるのです。目標を達成できれば、さらなる次の目標に挑戦することだってできるでしょう。

もちろんそれは、引退後も同じです。

今まで見たことがなかった世界の景色を見に旅に出れば、目の前に広がる光景にこんな世界があったのかと感動し、また新たな景色を見に行きたいと思う。旅先で買った本を読んでみれば、まったく知らなかった知識を得ることができ、さらにその分野の知識を得たいと思うのです。

人生は「動機と意欲、快感と学習」の連続。ドーパミンが正常に働いてくれれば、私たちはつねに意欲的に生きることができ、学び続けることができるのです。

要するに、「ドーパミンは人生」と言うことができるのです……!

ただ、私たちにとっていい影響しかないように思えるドーパミンも、ノルアドレナリンと同じく、分泌量に異常が起きてしまうと逆に悪い影響が出てきてしまうので、注意しなければなりません。

ドーパミンが過剰に分泌される場合

分泌量が正常であれば、あらゆるモチベーションをアップさせてくれるドーパミンですが、過剰に分泌されるようになってしまうと、「ニコチン依存症」「アルコール依存症」「ギャンブル依存症」など、さまざまな依存症を引き起こす原因になると考えられています。

また、幻覚や幻聴、妄想などを引き起こす「統合失調症」や、「過食症」もドーパミンの過剰分泌が原因になるとも見られています。

皆さん
皆さん

なるほど、報酬系の働きが依存症をね……いったいどういうことだ!?

という方のためにも、一度復習も兼ねて依存症のメカニズムを確認してみます。

依存症のメカニズム

さて、先ほども見てきたように、基本的にはドーパミンの働きは以下のような順序になります。

動機(行動) → ドーパミン分泌 → 報酬系が活性化 → 快感 → 動機(行動)

これをわかりやすくすると以下のとおり。

行動 → 報酬(ご褒美) → 快感

それでは、この「行動」の部分をギャンブルに当てはめて考えてみます。

まず、ギャンブルという行動によりドーパミンは分泌され、得られたスリルや興奮は報酬(ご褒美)となり、快楽を感じさせてくれます。しかし、その快楽をまた味わいたいという動機からギャンブルが習慣化していくと、しだいに快楽への耐性ができていくため、今までと同じ快楽では満足できなくなっていくのです。

パチンコなどのギャンブルで一度に使う金額や時間がどんどん増えていってしまう理由は、じつはこのへんにあります。

そして、ドーパミンはギャンブルをしたいという動機や行動で分泌されますが、快楽への耐性がついてしまっているせいで、ギャンブルをしに行ってもしだいに欲求が満たされなくなってしまうのです。

そうなると、欲求を満たそうとギャンブルへの衝動はさらに抑えがたいものになり、自分の意志では止められないものとなってしまいます。しかし、ドーパミンはさらなる快楽を求め、分泌量を増やすのです。

このように、快感を求める動機(衝動)が暴走し、報酬(ご褒美)に満足できず、さらなる快楽を求めてのめり込んでいく状態が依存症です。アルコール依存も過食症も、同じようなことが脳内で起きているわけです。

ドーパミンの分泌が不足する場合

また、モチベーションをアップさせるドーパミンの分泌が不足すると、意欲や気力、行動力が低下し、物事への興味や関心がなくなってしまいます。記憶・学習能力も低下し、ストレスへの耐性も弱ってしまうのです。

さらに、運動機能の低下から「パーキンソン病」を発症する原因にもなるとも考えられ、生きる目的や気力を失い、無気力・無関心の状態になってしまうことで、「うつ病」の原因にもなると考えられています。

今回のまとめ

・ドーパミンは生きる目的や意欲を与えてくれ、喜びなどの快楽を感じさせる
・ドーパミンが過剰に分泌されると快楽への衝動が暴走し、「依存症」になる
・ドーパミンが不足すると生きる意欲が低下し、「うつ病」の原因にもなる

今回はドーパミンの働きについて見ていきました。

ギャンブルはもうやめようと思っても衝動が抑えきれず、気がつけばまたギャンブルへ。そして、またやめようと思うも数日後には再び衝動に襲われる。

私も以前はそうだったのでこの一連の流れはよくわかります。だからこそ言わせてもらいたい。ギャンブルがやめられないのは意志が弱いからではなく、これは精神的な病気だからだと。

また、嫌なことがあったから、つらいことから目を背けたいからといってお酒に逃げるのもよくありません。アルコール依存症の入り口となってしまいますよ。

さて、これらの依存症や、うつ病などの精神的な病は克服することができると私は思っているのですが、次回は、いよいよその鍵ともなる、残る最後の三大神経伝達物質「セロトニン」についてです。お見逃しなく。

次回→ 三大神経伝達物質の中で重要な役割を果たす「幸福と抑制」のセロトニン

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