漢字と平仮名の使い分け問題は「正しい表記と用語の辞典」で補足せよ!

『日本語の正しい表記と用語の辞典』に示された漢字と平仮名の使い分けも必見! これで足りない部分を補おう!

講談社校閲局編『日本語の正しい表記と用語の辞典』第三版のカバー

文章を書くに当たって、漢字と平仮名の使い分けには一定のルールがあり、新聞用字用語がまとめられた『記者ハンドブック』があればだいたいの問題は解決するのですが、やはり新聞のルールなのでまだ少しかたいと感じることも。

しかし、そんなときに役立つのが、記者ハンドブックでもわからない部分を補ってくれる『日本語の正しい表記と用語の辞典』です。

日本語表記のルールは当然のこと、用字用語集も充実の内容で、これさえあれば漢字を「開く」作業はもう大丈夫かも!? という一冊。今回はこの辞典の内容をご紹介していくので、一緒に見ていきましょう。

講談社校閲局編『日本語の正しい表記と用語の辞典』第三版

講談社校閲局編『日本語の正しい表記と用語の辞典』第三版

いくら内容がよくても、読者が読みにくい文章では意味がない。漢字が多くて見た目が黒くなりすぎないように、平仮名書きにできる言葉はなるべく開く。

それが原稿整理のポイントだと本書では述べられています。ちなみに、この「開く」というのは漢字の語を平仮名書きに直すことをいい、反対に平仮名の語を漢字書きに直すことは「閉じる」といいます。

開かれた文章は人に書物を開かせ、閉じられた文章は人に書物を閉じさせる。そんな意味があるようにも思えてきますね。

それではさっそく、本書の内容をかいつまんでご紹介していきます。

漢字書き・かな書きの要領

文字を漢字で書くか、平仮名で書くかの1つの基準は、常用漢字表・人名用漢字に示されたものを目安にするという方法がありますが、語の種類によっては「かな書きにする」と、平仮名書きのほうが好ましいものもあります。

以下、本書で示されている平仮名書きにするものを、語の種類別でいくつか列挙していきます。

助詞

(例)一人きり、兎や亀など、あなたほど、天国まで、行きたいもの

接続詞

(例)あるいは、かつ、ただし、なお、もしくは、もっとも

形式名詞

形式名詞とは主語にならない名詞のこと。

(例)聞いたこともない、世界を守るために、行くつもりの少年、そんなときに、いま来たところだという男は、こんなふうに言った、おまえがそうしているうちに、見てのとおり世界は終わる、おまえの「つもり」などそんなもの

補助用言

補助用言とは、動詞や形容詞本来の意味・用法が薄れ、付いた上の語を補助する働きをする言葉です。

(例)……いう……ある……ない……している……していく……しておく……してくる……すぎない……してみる……してください……していただく……してよい……してほしい

副詞

あえて、くしくも、たくさん、なかなか、ほとんど、などの副詞は平仮名とし、本来の意味が薄れている次のような副詞も、なるべくかな書きにするとしています。

(例)いっそう/一層、いったい/一体、きわめて/極めて、けっして/決して、すでに/既に、だいたい/大体、たいへん/大変、たとえば/例えば、いまに/今に、いたって/至って、おおいに/大いに、もっとも/最も、おもに/主に、かならず/必ず、わりと/割と

間違いやすい言葉・慣用句・表現

また、これは漢字と平仮名の使い分けではないのですが、「間違いやすい言葉・慣用句・表現」という項目では、「現時点で」ほぼ間違いあるいは好ましくない用法と考えられるもの、誤用がある程度通用しているものの本来の用法を示したほうがよいと思われるもの、などの用例がまとめられています。

読んでいておもしろい項目でもあるので、こちらもいくつか取り上げておきます。

キーワード適切でない用例解説
あくどい悪どいやりかた 「あくどい」に漢字表記はない。「あく」は「悪」ではなく「灰汁」から来ているといわれる
アボカドアボガド綴りは「avocado」
移転当店は移店しました「移店」という言葉はない
かけがえのないかけがいのない大切な人「かけがえ」は漢字で表記すると「掛け替え」で、「その代わりになるもの」の意
間髪(かんはつ)を容れず間髪(かんぱつ)を容れずこの慣用句の構成は「かん/はつを/いれず」。「かんぱつ」のように一語として読むのは誤り
旧約聖書旧訳聖書「旧約」は「イエス以前の神との古い契約」の意。「新約」は「イエスを通しての神との新しい契約」の意。
……こと……シャチこと海のギャング「こと」の前に別名などが、後に本名などがくる。例文は「海のギャングことシャチ」とすべきである
古来古来から愛されてきた花「古来から(より)」は慣用的に用いられているが、「古来」だけで「古くから今まで」の意であるため重言
最初いちばん最初に気づいたのは彼だ「いちばん+最〇」は慣用的に用いられているが、「最」は「もっとも・いちばん」の意であるので重言
贅肉余分な贅肉重言。「贅肉」は「余分な肉」の意
たとえ/例え例え私ひとりになっても「たとえ……でも」の「たとえ」は「例え」とは別語。漢字では「仮令・縦令・縦」などと書くが、かな書きが望ましい
煮え湯を飲まされるライバルに煮え湯を飲まされた「煮え湯を飲まされる」は、信頼していた人に裏切られる場合に用いる表現
にやけるにやけた女「にやける」は、俗に、にやにやしている意で用いられることもあるが、本来は、男性が変になよなよと色っぽい様子である意
二つ返事二つ返事はするな、としつけられた「二つ返事」は、俗に「しぶしぶ『はいはい』という返事」の意で用いられることもあるが、本来は「ためらわずに『はいはい』と承知する返事」の意
馬子にも衣装孫にも衣装「馬子」は、昔、人や荷物を載せた馬を引くことを職業とした人
的を射る/当を得る彼の意見は的を得ていた的確に要点をとらえる意の「的を射る」と、道理にかなっている意の「当を得る」との混用か。「当を射る」という誤用も見受けられる
見出す見い出す「みいだす」は「み+いだす」で、「いだす」は「出す」または「出だす」と書く
未定スケジュールはまだ未定です重言。「未定」は、まだ決まっていない意
役不足/力不足リーダーなんて、私には役不足です「役不足」は、役目が軽すぎる意。ここは「力不足」とすべきである
焼けぼっくいに火が付く再開した元彼と焼けぼっ栗に火がついて「ぼっくい」は「棒杭・木杭」などと書き、「焼けぼっくい」は「燃えさしの木や切り株」の意。一度燃えた木は再び火がつきやすいことから、多くは男女関係が元の関係に戻る意に用いられる
湧き起こる盛大な拍手が巻き起こった「巻き起こる」は、ある物事が急に盛んになる意で、「〇〇ブームが巻き起こった」のように用いる

(参考:日本語の正しい表記と用語の辞典 第三版)

用字用語集

それではお待ちかね。ここからは漢字と平仮名の使い分けを示した「用字用語集」について見ていきましょう。

本書の特徴は「だいたい/大体」のように、平仮名書きのほうが望ましい、または、漢字が多い文章では平仮名書きにするとよい、といった、語によっては優先順位がつけられているところにあります(かっこ内は用例)。

用字用語集の項目では、そういったものを中心にいくつかご紹介していきます。

語(単語)表記
あさはかあさはか/浅はか
あだうちあだ討ち/仇討ち
あたりあたり/辺り(……一面、―かまわず)
あらかじめあらかじめ(―準備しておく)
ありがたいありがたい/有り難い
いきおいづく勢いづく/勢い付く
~いたしますいたします(お願い―)
(~て)いただくいただく(書いて―)
いたっていたって/至って
いちおういちおう/一応
いちばんいちばん/一番(クラスで―足が速い)
いっこう(に)いっこう/一向(―に気にしない)
いっさいいっさい/一切
いっしょ(に)いっしょ/一緒
いっせい(に)いっせい/一斉
いっそういっそう/一層
いったいいったい/一体(―どうするつもりだ)
いったんいったん/一旦
いまだにいまだに/未だに
いまにいまに/今に
うさんくさいうさん臭い/胡散臭い
うっとうしいうっとうしい/鬱陶しい
うまいうまい(―酒、ピアノが―、お世辞が―)
えたいえたい/得体(―が知れない)
おそらくおそらく/恐らく
おもしろいおもしろい/面白い
おやじおやじ/親父、親爺
およびおよび/及び
~がいがい/甲斐(生き―)
~かげんかげん/加減(うつむき―、さじ―)
~かねないかねない(やり―)
がんばるがんばる/頑張る
きづく気づく/気付く
~ぎみぎみ(疲れ―だ)
くしくもくしくも/奇しくも
くだらないくだらない/下らない
けがけが/怪我
けっこうけっこう/結構(―役に立つ)
ごぞんじご存じ/ご存知
このたびこのたび/この度
このほどこのほど/この程
さっそくさっそく/早速
さまざまさまざま/様々
さまようさまよう/さ迷う
さらすさらす/晒す、曝す
さらにさらに/更に
さんざんさんざん/散々
しぐさしぐさ/仕草
じつにじつに/実に
しぶしぶしぶしぶ/渋々
~じゅうじゅう/中(家じゅう、国じゅう、一日中、世界中)
(~に)すぎないすぎない(言い訳に―)
すでにすでに/既に
すばらしいすばらしい/素晴らしい
すべてすべて/全て(―を知る)
ぜいたくぜいたく/贅沢
せりふせりふ/台詞、科白
そぐそぐ/殺ぐ、削ぐ
そのうえそのうえ(―雨も降ってきた)
たいしたたいした/大した
たいせつたいせつ/大切
たいそうたいそう/大層
だいたいだいたい/大体
たいていたいてい/大抵
だいぶだいぶ/大分
たいへんたいへん/大変(―寒い)
たとえばたとえば/例えば
~たびたび(春が来る―)
たまるたまる/溜まる
ちかづく近づく/近付く
~づくしづくし/尽くし
つどつど/都度
つとめてつとめて/努めて(―冷静にふるまう)
つねにつねに/常に
できるできる(運転―)
とうていとうてい/到底
~とおりとおり(言った―になる)
とたん(に)とたん/途端
なおなお(―、その件に関しては)
なおさらなおさら(―悪くなる)
なかなかなかなか(―おもしろい)
なじむなじむ/馴染む
なめるなめる/嘗める、舐める
のぞくのぞく/覗く
のろしのろし/狼煙(―を上げる)
のんきのんき(―な身分)
(~を)はじめはじめ/始め(社長を―とする列席者)
はたしてはたして/果たして(―立ち直れるか)
はなはだしいはなはだしい/甚だしい
はやるはやる/流行る
ひどいひどい(―目に遭う)
ひとたびひとたび(―決意した以上は)
ひとつひとつ(―よろしくお願いします)
ぶざまぶざま/無様
ふるってふるって/奮って
ほうほう(この―が大きい、あきらめない―がいい)
ほうけるほうける/惚ける(遊び―)
ほかほか/外、他
ほとばしるほとばしる/迸る
まがうまがう/紛う(―かたなき)
まことにまことに/誠に(―痛ましい)
まさしくまさしく/正しく(―彼のことだ)
~まさりまさり/勝り(男―)
まったくまったく/全く
まれまれ/希、稀
みいだす見いだす/見出す
みずからみずから/自ら
みつける見つける/見付ける
むきだしむき出し/剥き出し
むさぼるむさぼる/貪る
むしばむむしばむ/蝕む
むろんむろん/無論
メンツメンツ/面子
もくろみもくろみ/目論見
もだえるもだえる/悶える
もっぱらもっぱら/専ら
もらうもらう/貰う
やさしいやさしい/易しい
やめるやめる/止める(活動を―、旅行を―、酒を―)
ゆううつゆううつ/憂鬱
ゆえゆえ/故(―なき中傷、若さ―の過ち)
ゆくゆくゆくゆく/行く行く(―は跡を継がせるつもり)
よみがえるよみがえる/蘇る
りこうりこう/利口
わがままわがまま/我がまま
わずかわずか/僅か
わなわな/罠
わんぱくわんぱく/腕白

(参考:日本語の正しい表記と用語の辞典 第三版)

総評&今回のまとめ

・正しい表記と用語の辞典は平仮名率が高い
・用字用語集は常用漢字表にあるなしの記載はない
・マイルールにたどり着くべし

『日本語の正しい表記と用語の辞典』は、650ページほどあるうちの約220ページが「用字用語集」となっていて、ボリューム感は申し分なかったのですが、見てのとおり平仮名率がけっこう高く、常用漢字表にある漢字かどうかも記載はありません。

したがって、この辞典はサブ的なポジションで、メインとなる別の用字用語集の補足をしていく使い方がベストのように感じました。

ただ、常用漢字表・人名用漢字外の漢字は使ってはいけないのかというと、けっしてそんなことはなく、本書の用字用語集もあくまで平仮名書き「推奨」なので、最終的にはどれを平仮名でどれを漢字にするかは、マイルールにのっとることになると思います。

そう考えると、平仮名率が高い本書は(かな書きの選択肢を増やしてくれるので)マイルールにたどり着くためのすばらしい材料になることと思います。「正しい表記と用語の辞典」は、2冊目、3冊目の用字用語集としてオススメですよ。

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