【理想は1対1】自律神経の働きと「交感神経、副交感神経」のバランス

自律神経は休むことなく私たちの生命を維持してくれますが、バランスが乱れてしまうと心身に悪影響を及ぼしてしまいます。

私たちの体は自分の意識とは関係なく無意識のうちに呼吸をしたり、心臓を動かしたりといった生命活動の維持をしてくれているのですが、それは「自律神経」という神経が24時間休むことなく働いてくれているおかげです。

しかしこの自律神経、バランスが崩れてしまうと心身に悪影響を及ぼし、精神的な病の原因にもなってしまうのです。

そこで、今回からは2回に分けて、この「自律神経」について詳しく見ていきたいと思います。

前回はこちら
三大神経伝達物質の中で重要な役割を果たす「幸福と抑制」のセロトニン

自律神経とは

自律神経とはなんなのか? 簡単に言えば、呼吸や体温調節、消化や代謝、血液の循環など、私たちが生きていくための機能の維持や調節を、無意識のうちに行ってくれる神経のことをいいます。逆に言えば、意識してもコントロールできない機能を調節する働きを持った神経のこと、ということもできます。

それでは、そもそもの話、神経とはなんなの? と気になる皆さんのため、これも少し詳しく見ていきます。

神経系とは

神経とは神経細胞同士がつながり、情報の伝達をする役割を持ったもののことをいいます。そして、それらによって組織された器官は「神経系」と呼ばれています。

神経と神経系の違いも踏まえて簡単に言うと、様々な情報伝達を行うのが神経で、情報伝達を行う各種の神経を総称したものが神経系ということです。

つまり、自律神経も神経系を構成する1つの神経ということになるわけです! これもわかりやすく、図で見てみましょう。

神経系の分類

情報を伝達する神経というシステムの大本が神経系と呼ばれているのですが、神経系は最初に「中枢神経」「末梢神経」という2つに分けられます。

中枢神経は脳と脊髄のことをいい、中枢、つまり中心となる大切な役割を持った神経で、全神経に指令を出したりする、コントロールセンターのような役割を持っています。

末梢神経は脳と脊髄から枝分かれして全身に広がる神経のことで、中枢神経の指令を体全体に伝える、こちらも重要な役割を持った神経です。

私たちは普段からなにげなく体を動かしていますが、それができるのもこれらの中枢神経、末梢神経が働いてくれているからこそ。中枢神経である脳や脊髄の指令を、末梢神経が体全体に伝えてくれることで手を動かしたり、足を動かして歩いたりすることができるわけです。

そして、このような運動機能は末梢神経から枝分かれした片方、「体性神経」が関わっています。

体性神経、自律神経

脳、脊髄から枝分かれした末梢神経は、「体性神経」「自律神経」に分けられます。

体性神経は痛みや寒さなどの感覚を感じる知覚神経(感覚神経とも)と、手や足を動かすといった運動神経に分けられ、これらは自分の意志でコントロールすることができます。

つまり手足を動かしたり、痛い寒いといった神経の働きを自分でとらえることができるということです。

そして体性神経とは反対に、自分の意志でコントロールすることができないのが今回見ていく自律神経です。

図を見てもらえればなんとなく自律神経の位置づけがつかめると思いますが、ここで押さえておきたいのは、中枢神経である脳が、末梢神経を構成している自律神経にも指令を出しているということです。

それを踏まえたうえで、自律神経についてより詳しく見てみましょう。

交感神経と副交感神経

自律神経は交感神経副交感神経という2つの神経で構成されているのですが、それぞれが反対の働きをすることで、私たちの生命活動の維持や調節を行っています。

交感神経

交感神経は私たちが活動している覚醒時や運動中、緊張や不安、恐怖、怒りなどのストレスを感じたときなどに働きます。エネルギーを消費して身体機能を活性化させ、戦闘状態にすることから「闘争と逃走(fight and flight)の神経」とも呼ばれます。

さて、どこかで聞いたことのあるフレーズが出てきました。

そう、これは神経伝達物質であるノルアドレナリンのところで出てきた、敵と遭遇したときに戦うか逃げるかの選択をして生き残る「闘争・逃走反応」と一緒ですね!

両者にはなにやら怪しい関係がありそうです……

ノルアドレナリンが交感神経を興奮させる

三大神経伝達物質の1つであるノルアドレナリンと、自律神経(交感神経)の関係とはいったいなんなのか。実は、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンは交感神経に作用し、交感神経の働きを活発にさせるという働きがあるのです。

脳がストレスや不安を感じたとき、ノルアドレナリンが作用することで交感神経を興奮させ、心拍数を上げたり、筋肉を緊張させたりして身体機能を向上させる。

つまり、ノルアドレナリンが分泌されることで起きる肉体的な変化は、この交感神経が関係していたのです。

副交感神経

交感神経が体を活性化させるのとは反対に、副交感神経は食事中や睡眠中など、体がリラックスしている休息時に活発に働きます。

食事から得たエネルギーや栄養を吸収して脳や体を修復したり、疲れた体をゆっくり休めてメンテナンスを行ったりと、心身を休めてエネルギーを蓄える役割を持っています。

また、アセチルコリンという学習や記憶、睡眠などに関わる神経伝達物質が作用することで副交感神経は活発に働きます。

このように、交感神経には身体機能を活性化させて体を臨戦態勢にする働きがあり、副交感神経には戦い傷ついた体を修復し休息させる働きがあります。それぞれが状況に応じてバランスを取り合うことで、正常に働いてくれるのです。

交感・副交感神経の活動量とバランス

交感神経と副交感神経は、お互いがバランスを取り合って働くことから、シーソーのような関係とたとえられることが多いです。これはどちらか一方が上に傾けば、もう片方は下に傾くような働きをするから。

つまり、どちらか一方の働きが優位になるとき、もう片方の働きは抑制されるということですね。

交感神経が優位に働き、体を活性化させているときは副交感神経は休憩。反対に、副交感神経が優位に働き、体を休めている時は交感神経は休憩する。

このように、お互いがバランスを取りながら働いているわけです。

しかし、必ずしもシーソーに乗る者が同じ体重だとは限りません。どういうことか見てみましょう。

交感神経と副交感神経のバランス

これは、交感神経ウサギと副交感神経ウサギです。

見てのとおり、交感神経ウサギが巨大すぎて、この状況ではシーソーなんてできたものじゃないですよね!

このように、交感神経と副交感神経には活動量があり、この活動レベルに差があると、自律神経はバランスを取れなくなってしまうのです。

また、先のような交感神経と副交感神経の活動レベルによる自律神経のバランスは、おもに4つのパターンがあることでも知られています。これもそれぞれ図で確認しながら見ていきましょう。

交感神経と副交感神経のバランス4タイプ

Aのタイプは理想的なバランス

交感神経と副交感神経の活動レベルは、1対1が自律神経の理想的なバランスとされています。

Aのタイプは、交感神経と副交感神経がほどよく高いレベルでバランスよく整っているため、活動と休息のスイッチをうまく切り替えることができ、意欲的な生活を送ることができる活動量です。

トップアスリートは、この状態からさらに両者の活動レベルを引き上げることで、最高のパフォーマンスを発揮します。

Bのタイプは交感神経が過剰に優位

ストレス社会で生きる現代人に最も多いタイプが、交感神経のレベルが高く、副交感神経のレベルは低いといった状態。

Bのタイプは交感神経が優位すぎるため、必要以上にイライラしたり、不安や恐怖を感じたりと、心身は緊張することが多くなる一方で、副交感神経のレベルは低いために十分な休息をとることができません。

この状態が続いてしまうと、交感神経の過剰によって「パニック障害」などの「不安障害」を引き起こしたり、副交感神経の働きが弱いことにより、「不眠症」を引き起こしたりする原因となってしまいます。

また、男性は30代、女性は40代を過ぎると副交感神経の働きが低下してくるのですが、それも交感神経が優位すぎる状態を作り出す1つの要因となっています。

Cのタイプは副交感神経が過剰に優位

Cのタイプは交感神経のレベルは低く、副交感神経のレベルは高い状態。

この状態は一見すると特に問題ないようにも思われますが、副交感神経が優位になりすぎると心身の適度な緊張感を失い、過剰なリラックス状態となってしまいます。

そうなると、やる気や意欲を失い、倦怠感(だるさ)や憂うつ感を感じるようになり、「うつ病」を引き起こす原因にもなるとも考えられています。

食欲のコントロールがうまくいかずに「過食」を起こすこともあります。

Dのタイプは交感神経も副交感神経もレベルが低い

交感神経と副交感神経の活動量は1対1が理想ですが、それは一定の水準を超えていればの話です。

Dのタイプは、交感神経と副交感神経のバランスだけを見ると一見安定しているようにも見えますが、両者とも活動レベルが低すぎる状態。

交感神経のレベルが低いことでやる気や意欲といった活動する力は低下し、副交感神経のレベルも低いので十分な休息をとることができず、ぐったりとした状態が続いてしまいます。

この状態を放置しておくと、これも「うつ病」「不眠症」の原因となってしまうのです。

交感神経と副交感神経はどちらかが優位になるときは(切り替わるときは)、どちらかが少し優位になるくらいがちょうどいいといわれていますが、このように、そもそも両者の活動レベルに差がありすぎると、どちらかが極端に優位になってしまい、心身に悪影響を及ぼすようになってしまうのです。

そして、その状態こそが「自律神経失調症」と呼ばれる状態なのです。

今回のまとめ

・自律神経は交感神経と副交感神経で構成され、活動と休息をコントロールする
・交感神経にはノルアドレナリンが作用し、心身に影響を与える
・自律神経のバランスが乱れると「うつ病」などだけでなく「自律神経失調症」を引き起こす原因にもなる

今回は自律神経の基本的な分類や働きについて見ていきました。

私たちの生命活動を維持してくれる自律神経も、じつはうつ病などの精神的な病と関りがあったのです。そして、神経伝達物質のノルアドレナリンも関わっているということは……そう、いままで見てきたセロトニンも関わってきます。

次回は、それも踏まえたうえで、交感神経と副交感神経が影響を及ぼす身体の機能や、「自律神経失調症」についてより詳しく見ていきます。

次回 自律神経の異常によって引き起こされる「自律神経失調症」の症状と原因

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