自律神経の異常によって引き起こされる「自律神経失調症」の症状と原因

自律神経失調症は自律神経のバランスが乱れることで引き起こされ、私たちが日常生活を送る上で欠かせない機能に様々な異常をきたします。

前回は自律神経の基本的な働きや役割について見ていきましたが、今回は自律神経が影響を及ぼす私たちの体の機能や、自律神経のバランスが乱れることで生じる具体的な症状について見ていきます。

自律神経が影響を及ぼす体の機能

自律神経は交感神経と副交感神経の2つで構成されていて、緊張や不安、恐怖などのストレスを感じた時は交感神経が興奮することで身体機能が活性化され、体がリラックスしている時などの休息時は副交感神経が興奮し、体の修復や栄養の補給を行います。
それでは自律神経が興奮することで体の機能にどのような影響を及ぼすのか、心身への作用について具体的に見ていきましょう。

(→具体例に進む)
交感神経と副交感神経の心身への作用です。

交感神経の作用

交感神経が優位に働く場合は運動をしている時を想像してみると分かりやすいです。心拍数が上がったり、呼吸が早くなったり、汗をたくさんかいたりします。
全体的に「上がる」ような作用が多いですが、唾液と胃腸の働きは「下がる」ような動きをしていますよね。これは交感神経が本来敵と遭遇した時に私たちの体を「戦うか逃げる」状態にする役割を持ったものだからで、その「闘争・逃走反応」や、私たちの体を細菌などから守る生体防御反応が関係しています。

交感神経が優位の時は、唾液は量が少なく粘りの強いものが出るため口が乾きやすくなりますが、これは殺菌、抗菌作用を持った物質が含まれた唾液で、私たちの体を細菌などから守ってくれる生体防御の反応が起きているのです。
また、消化液の抑制など胃腸の働きが抑制されるのも、敵と対峙した時に栄養の補給や体の修復に使うエネルギーを「戦うか逃げる」ことに回すためのものなのです。

眼前に危険が迫った時に栄養の補給を始める人なんていないですよね?つまりそういうことです(笑)

副交感神経の作用

反対に副交感神経が優位の場合は睡眠中や食事中、お風呂に入ってリラックスしている時を想像してみてください。心拍数や呼吸はゆっくりになって、筋肉が緩み、疲れを癒す至福の時です。
全体的に「下がる」ような作用が多いですが、唾液と胃腸の働きは「上がる」ような動きをしています。

これは交感神経の時とは反対に、副交感神経が私たちの体の疲れを取り、修復やメンテナンスをする役割を持っているからです。
副交感神経が優位の時は、唾液は量が多くサラサラしたものがでます。これは食物を湿らせて粉砕しやすくしたり、スムーズに胃腸に運ぶためや、分解を促進するための反応です。
また、胃腸の働きが活発になるのも、体内に取り込んだ栄養を吸収し、エネルギーを蓄えるためのものなのです。

これらの作用は交感神経と副交感神経がバランスよく働くことで適切に作用しますが、バランスが乱れてしまうと私たちの体に悪影響を及ぼしてしまうのです。

自律神経のバランスの乱れによる症状

前回詳しく見ていきましたが、自律神経のバランスは大きく4つのタイプに分けられます。

タイプA→交感神経(高)副交感神経(高)
タイプB→交感神経(高)副交感神経(低)
タイプC→交感神経(低)副交感神経(高)
タイプD→交感神経(低)副交感神経(低)
 

この4つのタイプの内、
Bの「交感神経の働きは強く、副交感神経の働きは弱い」という状態と、
Cの「交感神経の働きは弱く、副交感神経の働きは強い」という状態が、心身に病的な症状が表れやすい状態です。

では、その病的な症状とは何なのでしょうか。
例えば人前で計画の発表や、研究の成果などのプレゼンテーションをすることになった場合を考えてみます。
基本的にそういうものって緊張するのが当たり前だと思うんです。逆に、適度に緊張するからこそ締まったものになり、いいパフォーマンスを発揮することができると思うのですが、それは自律神経のバランスが取れていればの話で、交感神経が優位すぎるといったBのタイプのように自律神経のバランスが乱れているとそうはいかなくなってしまいます。先程の図と照らし合わせながら見ていきましょう。(→図に戻る)

某M氏の発表会

文系学部に在学していた某M氏はその日、研究の発表を控えていました。不安という名の恐怖に襲われ今にも逃げ出してしまいたい気持ちでいっぱいです。
発表の順番は2番目。刻一刻と近づく自分の出番に既に心臓はバクバクと鼓動を速め手は汗ばんできます。そして迎えた自分の出番。発表を始めるも心拍は異常に増加し、呼吸が早くなるせいで言葉がスムーズにでてきません。額には脂汗がにじみだし、みるみる顔は赤くなっていきます。赤面している状態が見られている、変に思われるという視線への恐怖が赤面を加速させ、顔は異常に発熱、耳まで熱いのが自分でも分かるほどです。筋肉が緊張することで体はこわばり口はカラカラに乾いてきました。こうなるともはや発表どころではありません。
なんとか発表を終えるも今度は矢継ぎ早に質問が飛んできます。しかし、ここまでくるとパニック状態に陥っているため、普段なら答えられることでも、頭の中が真っ白になっているため答えることができません。本来ならばできるはずのことができないのです。

「ミナトくん、もうちょっと勉強してくるように」

教授の一声で悪夢の研究発表は終わりを告げるのでした・・・

私にとってはこれが日常でした。治し方もわからない、そもそも治るとも思っていませんでしたし、もはや諦めていたんです。
さて、ノスタルジックな感情に浸っていても仕方がないので話を戻しましょう!(笑)

この場合は対人恐怖症や赤面症といった精神疾患が元となっているのですが、実際に心拍を上げたり、発汗させたりと身体機能に変化を起こしているのは自律神経です。(赤文字部分がそうです)
自律神経のバランスが乱れてしまうと、このように身体機能へ異常が出てくることがあり、そのような状態のことを「自律神経失調症」と言うんでしたよね。
それでは自律神経失調症とは何か、詳しく見ていきましょう。

自律神経失調症とは

自律神経失調症とは、自律神経の異常によって起きる体の不調に自覚症状があるものの、内臓や器官などの身体検査を受けても体に異常が見つからない状態のことを言います。定義や概念については多くの考えがありますが、現状正式な病名ではありません。

自律神経失調症の症状

自律神経失調症の症状は人によって様々で、いくつか重なって症状が現れたり、症状が出たり消えたりと、非常に不安定な現れ方をする場合もあります。
具体的にどのような症状が起きるのか、体の各部位で起きる代表的な症状について見てみましょう。 

頭痛、頭重感
耳鳴り、耳の閉塞感
口の渇き、口中の痛み、味覚異常
疲れ目、なみだ目、目が開かない、目の渇き
のどの異物感、のどの圧迫感、のどのイガイガ感、のどがつまる
心臓・血管系 動悸、胸部圧迫感、めまい、立ちくらみ、のぼせ、冷え、血圧の変動
呼吸器 息苦しい、息がつまる、息ができない、酸欠感、息切れ
消化器 食道のつかえ、異物感、吐き気、腹部膨満感、下腹部の張り、腹鳴、胃の不快感、便秘、下痢、ガスがたまる
手のしびれ、手の痛み、手の冷え
足のしびれ、足の痛み、足の冷え、足がふらつく
皮膚 多汗、汗が出ない、冷や汗、皮膚の乾燥、皮膚のかゆみ
泌尿器 頻尿、尿が出にくい、残尿感
筋肉・関節 肩こり、筋肉の痛み、関節の痛み、関節のだるさ、力が入らない
全身症状 倦怠感、疲れやすい、めまい、微熱、フラフラする、ほてり、食欲がない、眠れない、すぐ目が覚める、起きるのがつらい
精神症状 不安になる、恐怖心に襲われる、イライラする、落ち込む、怒りっぽくなる、集中力がない、やる気が出ない、ささいな事が気になる、記憶力や注意力が低下する、すぐ悲しくなる
 

このように非常に多くの症状があるため、自律神経失調症ということで診断されるも、本来であれば別の病名がつくはずのところを見落とされてしまうということもあるといいます。
親戚の子がまさにそのケースでした。
また、ご自身の判断でこれは自律神経失調症かなで片付けてしまうと、重大な病気を見落とすことにもなりかねませんので、
診断結果に納得が行かなければ他の病院を受診したり、体が何かおかしいなと思ったら医師の診察を受けるなど、十分に留意して判断するようにしましょう。

自律神経失調症の原因

自律神経失調症は様々な要素が複雑に絡み合うことで発症するとされています。主な原因について見ていきましょう。

ストレス

自律神経失調症の最大の原因と言われるものがストレスです。
上司に理不尽な事で怒られたり、お客さんに文句を言われたり、納期や残業など仕事に追われたといった社会的なストレス。
親戚付き合いや、隣人、学校のグループや友人、他人と接することで生じる人間関係のストレス。
一歩外に出れば車、バイクの騒音や、排気ガスの臭い、照り付ける日光や土砂降りの雨、ちりやほこりを巻き上げる強風、人混み。
外に出ずとも上下左右の部屋から聞こえてくる物音などの、環境要因のストレス。

私たちは常にストレスに晒されています。
少しでも自分が「嫌だな」と感じることがあればそれは全てストレスなんです。
最初は少しのストレスでも我慢することができるでしょう。しかし様々な要因のストレスが溜まりに溜まったらどうなってしまうでしょうか。
ストレスを抑え込んでいたダムは決壊し、自律神経のバランスは崩壊してしまいます。
バランスをとる事ができなくなった自律神経は、自律神経失調症という様々な症状を引き起こし、さらには精神疾患を発症させる原因にもなるのです。

睡眠不足

とても嫌なことがあった時、もう何も考えたくないからと寝てしまったら、翌朝は少し気分が落ち着いていたなんて経験はありませんか?私はよくあります(笑)
実は睡眠は効果的なストレス解消法なんです。
睡眠中は副交感神経が優位に働き、疲れた体の回復作業をしてくれるのですが、それはストレスによって疲れた脳を休めて回復させる働きでもあります。
しかし十分な睡眠を取る事が出来なければ脳や体を回復させることはできません。つまり睡眠が不足すれば十分にストレスを解消することができず、ストレスが溜まっていくばかりの状態になってしまうのです。

生活リズムの乱れ

私たちの体には1日周期でリズムを刻む「体内時計」の機能が備わっています。日中は活動的に、夜間は休息するように体の状態を導くものですが、
徹夜や、昼夜逆転の生活など、本来の生活リズムに逆らった生活は自律神経のバランスを乱す原因になります。

神経伝達物質の異常

イライラや不安、恐怖などのストレスを感じた時などに分泌され、交感神経を刺激する神経伝達物質がノルアドレナリンです。ノルアドレナリンが過剰に分泌されると必要以上にストレスを感じるようになってしまい、交感神経に作用することで体の異常も出てきます。
しかしそれを抑制、制御するのがセロトニンです。不安や恐怖などのストレスを軽減し、ノルアドレナリンの過剰な働きを抑えることで精神・肉体を安定状態へ導きます。
また「体内時計」や、睡眠へ導く機能にもセロトニンは関係しています。

このように神経伝達物質は心身へ影響を与え、自律神経のバランスを保つ役割も持っています。神経伝達物質に過不足などの異常が出てしまうと、自律神経のバランスが乱れる原因にもなってしまい、身体症状や精神症状などの異常を引き起こしてしまうのです。

今回のまとめ

・自律神経失調症は心身に様々な異常を引き起こし、日常生活に影響を及ぼす
・神経伝達物質の異常は自律神経のバランスを乱す原因にもなるため、自律神経失調症を引き起こす要因となる
 

今回は自律神経失調症の症状や原因についてみていきました。
身体機能や、精神的な面にも影響を及ぼす自律神経にも神経伝達物質が関係していたのです。そうなると尚更「どうすれば神経伝達物質の異常を解消できるの!?」といった話になってきますよね。
神経伝達物質は勝手に湧いて出てくるものではありません。私たちの体の中で作られるものなんです。副交感神経に栄養の補給の役割があり、胃腸の働きを促進するというのがありましたが、まさにこの「腸」こそが神経伝達物質の素となる栄養を吸収する場所なのです。

この精神疾患治療の手引きもいよいよ佳境。
次回は精神疾患治療のカギを握る「腸」について見ていきましょう。

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