上の階からの足音、シャワーやトイレの排水音、話し声、テレビの音漏れ……。
お住まいのマンションで、「近隣住民が出す音によって騒音被害に遭っている」、ということはないでしょうか?
この騒音トラブルを解決するための本があります。『マンションの「音のトラブル」を解決する本』です。
- なぜ防音性の高いマンションでも騒音が発生するのか?
- 騒音被害者になったときはどうすればいいのか?
- 騒音に対する有効な対策にはどのようなものがあるか?
かくいう私も、上階の足音に2年ほど苦しめられてきた過去があるのですが、そんな経験からいわせてください。
泣き寝入りだけはしないでください。
わるいのは問題の住民であって、被害を受けているこちらが、なにもせずにただ我慢しつづける必要はありません。
この本は、騒音の「原因」や「対策」がわかるだけでなく、安全な場所へ「移動」するときにも役に立つなど、まさに騒音トラブル解決のバイブル書。
解決策をしらべるにあたってかなり勉強になったので、この記事では、同書の内容をかいつまんでご紹介していきます。
マンションの「音のトラブル」を解決する本
『マンションの「音のトラブル」を解決する本』は、専門的な学会の委員長などを歴任し、現在は「日本音響材料協会」の理事を務める音の専門家、井上勝夫氏によって書かれた本です。
建築物の音や振動に関する研究にたずさわって45年以上、音に関する専門家としては、20年以上にわたってアドバイザーを務めてきた井上氏。
ふだんから「音の実体験」を得るため、上下左右に部屋があるマンションに住み、つねに音を計測する騒音計を持ち歩いているのだとか。
働き方改革やリモートワークによって、人びとの生活は、自宅にいる時間が長くなる暮らしに変化してきています。
そんな時代だからこそ、「マンションに住む人が快適に暮らせる手助けになれれば」と、氏は本書を執筆されたそう。
当時私が直面していた騒音問題の解決や、その後引っ越すさいのマンション選びにも、かなり参考になる内容となっていました。
ここからは、本書の内容の一部をご紹介していきましょう。
音の問題はいつから出始めたのか
音に関する問題が出始めたのは、日本の高度経済成長期とリンクしています。1956年に日本住宅公団の集合住宅が建ち始め、1963年ごろからは民間でも鉄筋コンクリートの集合住宅が主流になりました。
『マンションの「音のトラブル」を解決する本』p.26
かつての日本では、雨風などをしのぐ「防御力」に重きが置かれていたそう。
このため、マンションが誕生しはじめた初期のころは、音の問題を指摘する「発想」がそもそもなかったそうです。
ところが、建物の性能(防御力や空気の清浄さ)が時代とともに向上していくと、どうでしょう。
残された問題は「音」ぐらいになってしまい、しだいに騒音問題への関心が強まっていったと。
ようは、「マンションへの快適性を求めていくなかで、音の問題が注目されるようになった」、というわけですね。
振動としてものを伝わる「固体音」がやっかい
一方、固体音とは、力や振動が床や壁、天井などに入り、振動として固体の中を伝わり、離れたある住戸の空間で聞こえる音のことをいいます。
『マンションの「音のトラブル」を解決する本』p.34
マンションの騒音には、大きく分けると以下の2種類があるといいます。
- 空気音(話し声など)
- 固体音(床にものを落とす音など)
テレビの音や話し声などは「空気音」で、足音などのドンドンひびく音は「固体音」。
同書によると、マンションでは、後者の「固体音」がやっかいな音となってくるようです。
固体音は、1か所で発生したものでも、躯体(くたい:マンションの骨組み)を伝わって遠くまでひびく音。
天井から聞こえる音の発生源がじつは3階下だった(上の階とはかぎらない)、というケースもあるほどに、音が「貫通」することもあるのだそうです。
また人間は、耳の性能上、低くて大きい音(たとえば足音など)をよく聞き取るといいます。
そういったこともあって、マンション内での足音(固体音)は、とくに問題になりやすいとのことでした。
ちなみに、私がくらっていたのも足音でした
ドンドン・ドスドス系の足音は、聞こえやすくてひびきやすい。
集合住宅であるマンションでは、住民の足音は、問題になるべくしてなっていたのです。
「床衝撃音」が悪魔的な騒音となる
床衝撃音は固体音に含まれます。〔……〕冒頭で紹介した、35年住んだマンションから引っ越した知人の例も、原因となった“悪魔”の正体は、この床衝撃音でした。
『マンションの「音のトラブル」を解決する本』p.68
ものを上から落とすなどによって床が振動し、それによって音が下の階に伝わる。
この音を「床衝撃音(これも固体音に含まれる)」と呼びますが、この床衝撃音は、以下の2つに分けることができるそうです。
- 軽量床衝撃音
- 重量床衝撃音
スプーンやフォークなどを落とす音は「軽量床衝撃音」で、歩いたり走ったりする足音は「重量床衝撃音」。
軽量床衝撃音に関しては、相手(上の階の住民)がラグやマットを床に敷けば、ある程度はふせぐことができるといいます。
ところが、重量床衝撃音の場合、これをふせぐのに有効な手段はあまりなく、マンションの床の厚さや骨組みなどに左右されてしまうとのことでした。
ひとたび悪魔が上階に降臨してしまえば、こちらに側には(物理的な)打つ手はほとんどない……。
つまり、足音のトラブルは、どうにもならないケースもすくなからずある、ということなのです。
対策:騒音被害者になったときはどうすればいいか?
マンションの騒音トラブルには「音のタイプ」がいくつかあり、騒音によっては有効打があまりないこともわかりました。
しかし本書では、それも踏まえたうえで、騒音被害者となってしまったときの対策が紹介されています。
たとえば、以下のような方法が書かれていました。
- 直接本人に苦情をいう
- その前に管理会社(または管理組合)に間に入ってもらう
- 管理会社に相談する時は証拠を残し(記録し)、口頭ではなく文書で提出する
- BGMで音に音をかぶせる「マスキング」という対策を使う
- 最終手段である訴訟を起こす(ただし勝訴できる確率は高くないため、おすすめはできないとのこと)
なかでも参考になったのは、騒音は人によって感じ方が異なるため、客観的にみてどれくらいの音なのか残しておく、というものでした。
音の大きさの測定は「騒音計」があれば簡単にできます。
これは役所の公害をあつかう部署で貸してもらえたり、市販もされていたりするので、用意するのはそこまでむずかしくはありません。
具体的な数値(記録)が残っていれば、万が一訴訟になったときも証拠になります。
管理会社や本人に対して苦情をいうときも、「これだけの数字が出ている」となれば、向こうも「それは気にしすぎ(言いがかり)ですよ」ではいかなくなるというわけです。
じっさいに私も、この騒音計を使う方法は実践しました。
直接の解決策になるわけではないですが、おすすめできる方法ですよ。
被害者が加害者になってしまわないよう注意する
また、本書では、被害者が加害者になってしまう危険性についても書かれていました。
復讐に燃える元ケーサツ官、みたいなやつか?
たとえば、これは本書の内容ではありませんが、よくある騒音トラブルの話として、以下のような現象が起こることもあると聞きます。
- ある部屋の住民が帰宅してから大きな音を出しはじめる
- それに反応したほかの部屋の住民も大きな音を出してやり返す
- またそれに反応したほかの部屋の住民も仕返しに大きな音を出す
これぞまさに騒音の連鎖爆弾。
だからこそ本書では、「被害者が加害者になりうることも忘れない」ことが重要であるとし、以下のように述べていました。
音はどんなに対策をたてても、完全にゼロにすることはできません。共同住宅に住んでいる以上、自分の家の音も聞こえるし、他の住戸の音も聞こえます。お互いに思いやりと気づかいを持って、住まい方に気をつけることが大切なのです。
『マンションの「音のトラブル」を解決する本』p.136
おなじマンションに住んでいる以上、顔を合わせることもあると思います。
そこで(その場で)、話し合いで解決させることができれば、それに越したことはありません。
自分も注意しながら、相手が静かにしてくれるように訴えていく。
マンションでの騒音トラブルは、まずは少しずつ対策を打ってみて、様子を見ていくのがいいということなのでしょう。
もちろん、相手が話のわかる人間であればですが……。
今回のまとめ
- マンションの騒音トラブルは足音などの「固体音」がとくに問題
- 固体音に含まれる「重量床衝撃音」をふせぐ方法はあまりない
- 被害者になったときは、証拠を記録して少しずつ攻めていくのがいい
加害者側は悠々自適に暮らしているのに対し、被害者側は一方的に攻撃を受けつづけ、ストレスをため込んでいく。
マンションでの騒音は、はっきりいって不条理きわまりないもので、我慢していると、健康状態に異常が出てくるようにもなっていきます。
騒音トラブルに巻き込まれているのなら、最低でも管理会社に電話で相談するなど、いますぐに対策を取ったほうがいいでしょう。
また、今回は割愛しましたが、『マンションの「音のトラブル」を解決する本』では、
- 逆に音がうるさいといわれた場合の対処法
- リフォームの際に以前よりも音が大きくならないようにする対策
- マンションを購入する際にかならずチェックすべき音の項目
など、マンションに住む人すべてが知っておくべきと思われる情報が、ふんだんに盛り込まれていました。
ただし、くりかえしになりますが、足音などの騒音に対する「決定打」は書かれていません。
これは途中でお話ししたとおり、音のタイプによってはどうにもならず、書きようがない(訴訟くらいしかない)からだと思います。
だからこそ、最終的に私は引っ越したのですが、そのさい(物件探し)にも役に立ったので、やはり持っておいて損はない一冊だといえます。
引っ越さずに騒音トラブルが解決すれば、それに越したことはありません。
個人的には引っ越したほうが早い気もしますが、騒音対策は、まずは騒音計での証拠の確保や、管理会社への相談などからはじめてみるといいですよ。
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