救済の声を聞いた私は再びブラックジャックのテーブルへと舞い戻る。そして、そこで閃いた戦略とは果たして……?シンガポール旅行記、ここに完結。
これまで勝ち続けてきた金を一瞬にして失いかけるという紙一重の窮地。それをすんでのところで回避した私は、朽ち果てかけていた体に再び力が染み渡り始めるのを感じる。
「あれは救済の声だ……。いける、まだいけるぞ……」
バカラのエリアを抜け、私が向かった先に、最終決戦の先に待つものとは一体……?シンガポールカジノ旅行記、裏シンガポール旅行はついに終幕へ。
前回はこちら↓
最凶のディーラー再び!暗雲漂うマリーナベイ、憔悴のブラックジャック
最初から読みたい方はこちら↓
ベーシックストラテジーでブラックジャック攻略か!?【ルールも解説】

ミナト
海外旅行が趣味の兼業ブロガー。以前はカジノにハマるもギャンブルにはもう懲りて……? 現在は観光メインで旅行を楽しみながら、現地での体験や旅行に役立つ情報も発信中。いずれは海外を放浪する旅にも出たいと思っています。>> プロフィール詳細はこちら
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裏シンガポール旅行(最終日・後編)
ブラックジャックで2,000SGDを、バカラで500SGDを失い、2,500SGD(約20万円)を一気に取り返そうとバカラのテーブルに向かった私は、PLAYER5連続という可能性を秘めたテーブルを発見。
しかし、それは旅人を沈める沼にぶら下げられた餌。溜めに溜め込んだ金を最後に全て吐き出させるための、可能性という名の撒き餌だったのです。
沼に片足を踏み入れていた。あとコンマ数秒判断が遅れれば、私は沼に沈み、溺れて終わっていただろう。しかし、私はその瀬戸際で、足を引き抜くことに成功したのだ!
命が深刻な危機に晒されたことで生存本能が目覚める。力尽きる寸前だった体に、気力が漲っていくのがわかる。
そして気づく。20万円という金は重いことを。
本来であれば1か月必死に働いて得られるお金。自分だけの力で一から稼ごうと思えば、場合によっては1年、2年とかかるお金。
それを、ほんの一瞬、たかが1ゲームで稼ごうなどというのは馬鹿げている。そう、自分は馬鹿げていた!本来であれば体力を削り、気力を賭してでも稼ごうと思わなければ稼げない金額だ!
2,500SGDという大金を取り返すのであれば、同額の金、それに加えて気力も賭さなければならない。そのことに私は、命を危険に晒すことでようやく気が付いたのです。であれば、戦いの場はもうあそこしかないだろう。
たとえそれが、今旅の墓場となったとしても……。
ブラックジャック、犠牲の最終戦略
私が決戦の舞台として選んだのは、今旅本来の目的でもあるブラックジャック。一撃の幻想は捨て、初心に返ることを選んだのです。
この決戦に他者の介入は無用。よって私は先客がいないテーブルを探し、ミニマムベットが50SGDのテーブルが空いていたため、このテーブルに命運を賭ける。
2,500SGDをミニマム50SGDで取り戻そうとすれば、単純な話、50回勝たなければなりません。それだけこの金額を取り返すということは険しい道のりなのです。よって私は、最初から3ハンドのマルチハンドで勝負に挑むことにします。
先程交換した2,500SGDのチップを分割してもらい、テーブルに並べる。今からこれを倍にする。行くぞ、ここからは全身全霊を賭ける……!
しかし、勝負は暫く動かない!
下にへこまないだけまだいいですが、こういった上にも下にも動かない横ばいの展開は、大抵何かをきっかけにどちらかに大きく動き出すもの。
果たして上か下か?何が引き金となるのか?私はそのきっかけを辛抱強く待ちます。
すると……


口火を切ったのは、やはり、ディーラー強アップカードに対してのピクチャーバースト。
ディーラーのアップカード(表向きのカード)が「7」以上の場合、プレイヤーは「17」以上になるまでヒット(カードを引く)するのが定石ですが、今旅を通して「15~16」でヒットした際のバースト率が体感的に高く、特に「10 or ピクチャー」を引いてくることがやたらと多い。
そして、何度が続いたバースト連がトリガーとなってしまったのか、次第に展開は下の流れ。チップを削られていくという悪い展開へと動き出してしまったのです。


またか……何なんだこれは……
私にとってチップはまさに命そのもの。ディーラーの強アップカードに対してはバースト覚悟になるのは仕方がないとはいえ、ここまでバーストが多いのでは、生還できる見込みのない崖に毎回自分から身を投げているような気分になる。
命が削られていく度、焦りや苦しさといった精神的な重圧が増えていく。
やはり、ここが墓場だったのか……?
負けを取り返すのは不可能なのか。ただ傷口を広げて終わりか。そう諦めかけたまさにその時、ある一つの可能性が急浮上!私の脳裏を一閃する……!


いや、待てよ。実はこれ、チャンスなんじゃないのか……?
真の必勝法「カウンティング」
ブラックジャックには「ベーシックストラテジー」という基本戦略がありますが、実はその上に「カウンティング」という真の必勝法があります。
カウンティングは「10、J、Q、K、A」の5種類のカードがカードシュー(デッキ)の中にどれだけ多く残っているかを毎ゲームカウントしていき、プレイヤーが有利な状況になった時点で勝負を仕掛けにいくというもの。
これは実際にカジノ側が荒稼ぎをされる被害に遭うなど効果は実証されていて、カジノ側はカウンティング対策をするなど、現在では基本的にこの手法を使用するのは難しいのが現状となっています。
そこで、このカウンティング、なぜプレイヤーが有利になるのかと言うと、例えば以下のような効果があるのです。
- BJが成立しやすくなる
- ダブルダウンが決まりやすくなる
- ディーラーのバースト率が上がる
BJが成立しやすくなる
まず、デッキの中に「10~A」が多く残っていれば、必然的に初期の2枚の合計が「21」になる、最強役の「ブラックジャック」が成立しやすくなります。
これはプレイヤー側もディーラー側も同じなのですが、大きく違うのはその配当。BJ成立時はプレイヤー側の場合は1.5倍の配当がつきますが、ディーラー側の成立では賭け金以上に多く取られるということはないのです。
よって、BJ成立に関しては明らかにプレイヤー側が有利となるのです。
ダブルダウンが決まりやすくなる
また、プレイヤー側にのみ認められた賭け金を倍にするダブルダウンは、主にカードの合計が「9~11」の時に行われるアクションですが、この時最も欲しいカードは「10 or A」。
そう、デッキに「10~A」が多く残っていれば、プレイヤー側のダブルダウンが効率的に決まりやすくなるのです。
ディーラーのバースト率が上がる
そして、ディーラーはカードの合計が「17」以上になるまでヒットし続けなければならないというルールがあるのですが、デッキに「10」が多いと「12」以降のヒットは全てバーストとなるため、必然的にバースト率も上昇します。
BJはいかに手を守りながらディーラーを倒せるかが肝。デッキに「10~A」が多く眠っていれば、その肝の部分でもゲームの展開を有利に運ぶことができるのです。
そして、事前に基本的な部分だけは把握していたこのカウンティングの理論が、私に新たな戦略を授けた。
閃く!BJ犠牲のストラテジー
今旅を通して多かったピクチャーでのバースト。明らかに存在した勝てる流れと負ける流れ。これらはデッキに残っていたカードが作り上げていた流れなのではないか。そう考えると全ての辻褄が合いました。
勝てる時は「10~A」が多く出現することで全てが底上げされ、負ける時は「10~A」が出現しなくなるので全てが不利になる。
そしてその線で考えると、今再び始まったバースト連。これはデッキに「10」以上が多く眠っている可能性、つまり、プレイヤー側が有利になる可能性を示唆しているのではないかと思われたのです。
であれば、私がやることはただ一つ。手を守る戦法。命を守る戦術に切り替えるだけ。
デッキに「10」以上が多いのであれば、「15~16」がバーストしやすいのも頷ける。それならば、わざわざ危険を冒してヒットをする必要もないのです。
ただ、そうなると一つだけ問題が出てくる。
バーストの危険性がある「12~16」でヒットする必要があるのは、ディーラーのアップカードが「7」以上の場合のみ。その状況で手を守り、もしディーラーに「10」が入ってしまえば、ディーラーの合計は「17」以上。
つまり、守った手はディーラーの火力に屈してしまうことになるのです。
しかし、私が閃いたのはその先。そのような状況になるのであれば、ディーラーに「10」を渡さなければいいのです。犠牲を払ってでも「10」をこちらに引かせればいいのだと。
単純に考えるとカードの数字は「2~A」までの13枚。そのうち「10~A」は5枚。そして、13分5が2連続する確率は14.7%。つまり、デッキの中に「10~A」が多ければ2連続する確率も上がっていきますが、少なくとも2連続しない確率の方が高いことは明白だと思われたのです。
よって、ディーラーの直前のエリアに配置する。犠牲の死を遂げる兵士を。
要するに、作戦の全貌はこうだ。


3ハンドの中、右はベット額を上げて守りを固め、左は常にベット額を下げてディーラーの強アップカードに備える。そして、時が来れば左はバースト覚悟のヒットで「10」を引かせ、ディーラーに「10」を引かせない、という作戦。
立ちはだかる敵が強ければ、一人の兵士を敢えて崖から突き落とす。しかし、その犠牲が道を作り、強力な武器を持った戦士を進軍させるのだ……!
編み出される、ブラックジャック犠牲のストラテジー。果たして、その先に待つものとは……?
肉を切らせて骨を断て!名誉の犠牲は道を作るか!?
これはあくまでも一つの可能性に過ぎません。しかし、1%でも可能性が見えるのであれば、毛ほどのチャンスでも感じることができたのであれば、それに命を賭けなければならない。なぜなら、戦いとはそういうものだからだ……。
私はまず、3ハンドの中・右は100SGD、左は50SGDで本作戦を開始。
すると、先程までは防戦一方。付け入る隙もなかった展開が、ここで再び停滞。そして、手を守り始めたことが功を奏したのか、徐々にディーラーのバーストが増え始め、ベット額を上げたこともあってチップは回復傾向。一先ずはこのテーブルで削られた分を取り返すことに成功します。
残るは2,500SGD。このまま行けるか……。


そして訪れる!本作戦最大の要、ディーラーの強アップカードが……!


名誉の戦死を遂げてくれ!大いなる勝利のために……!
中右のハンドはステイ、左のハンドは作戦通りのヒット。すると、左のハンドは狙い通りの「10」を引いて玉砕!そして、ディーラーは……


これも狙い通り!一度小さい数字を挟んでの「10」でバースト!
それからというもの、勝負の展開は明らかに変わり始め、勝負は上の流れ。プレイヤー優勢の流れに突入。勢いを感じ始めた私はここが正念場だと意気込みます……が、ここで、別の男性プレイヤーがテーブルに着席!作戦続行に危機が訪れる!
相乗れ!俺が一緒に勝たせてやる!
私はこの時、勝てる流れが徐々に激流へと変わりつつあるのを感じていました。
しかし、別のプレーヤーが参加することでハンドが1つ増えれば、その分配られるカードの順番も変わってしまう。それがこのいい流れを終わらせてしまうのではないか。そういった懸念も同時に感じていたのです。
流れなどという不確定なものは信頼するに値しないものかもしれない。が、現に上向いてきている以上、私にはそれを信頼する他ありません。
よって、この作戦はリスクを分散するためにも、勝ちに行くためにも、今の状態、3ハンドがベストだと思われたのですが、私はカードの流れを維持するため、苦渋の選択で手を3ハンドから2ハンドに減らします。すると……


いや、そうじゃないんだ。相乗らせてくれ!
ここで、まさかの相乗り希望!
ブラックジャックでの相乗りに関しては後々面倒なことになりやすいので、もう全て断ろうと先日決めたばかり。
BJの相乗りに関しては3日目を参照
→ ブラックジャックは他のお客さんのチップ上乗せ(相乗り)に注意!
しかし、カジノ側としても空いている席にはお客さんは座ってほしいだろうと思いますし、何よりも中止になりかけた作戦が継続できること、上向き始めた展開によって精神が昂り始めていたことなどから、私はもう乗れと。
俺が勝たせてやるから、大船に乗ったつもりで乗ってこいと!中国人のオッチャンの相乗りを許可する!
しかし、ここでも一つ問題が。
BJはプレイヤー側がアクションを選択できるため、相乗りする側(オッチャン)は相乗りされる側(私)に命を預けることになります。特に、オッチャンが乗ったのは私の右側のハンド。そこは守りを固めているハンドだったため、BSという基本戦略を無視することが多いハンドなのです。
相乗る側からすれば、基本戦略に沿ったアクションで負けることは仕方がないと諦めがつきますが、今回のように変則的な戦術を駆使している場合、セオリーを無視した挙句に負けるというのは納得がいかないかもしれません。
私も人の金を背負う以上は責任を感じる。しかし、一から状況を説明するような時間は残されていませんでした。そこで、私はこの戦略に至るまでの経緯、セオリーを無視するだけの道理、あんたの命は俺が預かるという、全ての意味を込めてこう言ったのです。


ステイOK!?


OKOK!全部任せるよ!
よし、それならば何も問題ない。このまま作戦は継続だ!
道を切り開いた、犠牲の兵士たち
人の良さそうなオッチャンの勝負をも背負ったことで、さらに負ける訳には行かなくなった私は作戦を続行。すると、恐ろしいくらいにこの作戦がゲームの展開に合致し始める。
ディーラーのアップカードが弱ければベーシックストラテジー通りのステイ。ディーラーのアップカードが強ければ中・右を守り、左は攻める変則作戦で応戦。
これが上手く行き始め、私は徐々に中・右ハンドのベット額を上げていく。そしてそれに伴って、チップは目標の2,500SGD目指して突き進んでいく!


しかし、ベット額を上げれば上げるほど、比較的危険度は低い「13~14」でもヒットするのが難しくなっていきます。なぜなら、バーストした時のダメージが大きいから。


う~ん……ステイOK……?


……OK!
オッチャンの言葉にも押され、私は「14」でもステイを選択。すると、


「10」が隣に回り、犠牲の兵士は武器を装備。


そして、ディーラーはまたしてもワンクッション挟んでの「10」でバースト……。
シンクロ…………!!
今、まさに、凄まじいまでのシンクロがこの場で起きている!これは400%を優に超えているのではないか……!?


その後、ダブルダウンでは肝となる「10」を引き寄せ、


スプリットでは怒涛のピクチャー2連続!


さらには、これはもはや修羅の所業!ブラックジャック2連撃……!!
そして…………


オッチャン、この辺で終いだよ


おや、もう止めちまうのかい?


あぁ、ミッションをコンプリートしたんだ
私の目の前には、最初に持っていた2,500SGDと、このブラックジャックでの勝ち分2,500SGD。合わせて5,000SGD(約40万円)のチップが置かれていました。
奪還成功……。
一度はまたしても全てを失いかけた。しかし、私は成功したのです。2,500SGDを取り返すことに……勝って旅を終えることに……!!
そして、旅はついに終幕へ。
チャンギ国際空港へ。そして帰国


翌朝7時、私はホテルからタクシーでチャンギ国際空港へ。
父が託してくれた緊急用資金がなければ3日目の大逆転劇は起こり得なかった。あのまま観光資金を全て失って終わっていた。よって、父には奮発して、空港内でブランド物のキーケースをお土産として購入(結局使わないとのことで未開封のまま私が持っている)。
何も思い残すことはない。間違いなく全てをやりきった。全身全霊を出し尽くした。後悔などしようがないほど私は攻め切ったのです!
さらばシンガポール、そして友よ。また会う時があれば、その日まで……。
私は心の中で、そう別れを告げた。
裏シンガポール旅行収支結果
3日目前半の逆転劇が全てを変え、最終日はプラスマイナスゼロを維持することに成功。その結果、トータルでの収支は大幅にプラスで終了。奇跡的な展開があまりにも多すぎた。というか、もはやただの奇跡だったとしか言いようがない。
そして帰国後……
日本に帰国した私は、まずはキャッシングで借りた40万円をすぐに返済。カジノで勝った金額は旅行中に使ったお金、税金などの支払わなければならないお金などを差し引くと、残ったのはちょうど40万円。これは全て貯蓄に回すことにし、貯金がゼロだった私は40万円の貯蓄を得ることに成功します。
そしてこの資金は、今後私の人生を大きく変える一つのきっかけとなっていきました。
また驚くべきことに、今回は以前行った韓国カジノの帰りのように、カジノの余韻がパチンコへの依存を復活させるということはなく(結局その後別の事情でパチンコ通いが一時的に復活してしまうのですが)、何かしらのギャンブルに触れてしまっても、必ずしも全ての依存症の回路が再び作動する訳ではないのでは?という、ギャンブル依存症の本質的な部分。その一端を見ることになります。
そして戦いは次なるステージへ。
そこで私は、真にギャンブル依存症を克服することができたのであれば別の形で上手く付き合っていくこともできるのではないかという、ほんの僅かな、極めて小さい可能性を、ギャンブルが持つ恐ろしさの中で垣間見ることとなったのです。
ミナトの戦いは続く。
(シンガポール旅行記 完)
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