うさぎさんにとっては恐怖でしかない爪切り。しかし、心を鬼にしてでも、やらなければならないのです。
うさぎさんの爪は私たちと同じように、一年中伸びつづけるもの。
本来であれば、自然界のうさぎさんは、毎日長い距離を走ったり、穴を掘ったりすることで自然と爪が研がれ、短い状態が保たれていますが、人間社会でいっしょに暮らすうさぎさんはそういうわけにはいかないので、やはり爪が伸びてきます。
そこで、飼い主さんがしてあげなければならないが、うさぎさんの爪切り……なのですが、抱っこを嫌がる、抱っこをできないうさぎさんはあばれてしまい、爪切りは一筋縄ではいきません。
しかし、あきらめるのはまだ早い。そのような状態でもうさぎさんをおとなしくさせ、しかも、飼い主さん一人でも爪を切ることができる方法があるのです! 今回はそんな、誰にでも簡単にできる、うさぎさんの爪切りのやり方をご紹介しましょう。
うさぎの爪切りの必要性
基本的にうさぎさんは、捕まえられるのが好きではない生きものなので、爪を切るのはけっこう、というかかなり大変だったりもします。
うさぎさんも捕まってしんどい思いをしますし、飼い主さんも嫌がるうさぎさんを捕まえるのは心が痛むと思うので、もし爪を切る必要性や理由がないのであれば、そのままにしておいてあげたいですよね。
しかし、残念ながら、爪切りは必要不可欠。
うさぎさんの爪を伸ばしっぱなしにしていると、うさぎさんが大けがなどをしてしまう原因となることもあるからです。
爪の伸びすぎによる健康被害は、おもに以下の4つ。
- 爪を引っかけてしまって大けが
- 毛づくろいの際に引っかいてけがをする
- 爪の中にある血管が伸びる
- ソアホック(かかとがはげる)の原因になる
それぞれくわしく見ていきましょう。
1. 爪を引っかけてしまって大けが
たとえば、ケージの底に敷いてあるすのこや金網、格子状になっているケージの側面など、こういった場所にうさぎさんが爪を引っかけてしまった場合、爪が折れてしまうことがあります。
そうなると、爪の中には血管がとおっているので、当然出血してしまうこともありますが、じつはそれだけですめばまだいいほうで、場合によっては、骨折までしてしまうこともあるのです。
うさぎさんは骨がうすくて軽く、骨折しやすい生きもの。爪を引っかけてしまったことが原因でパニックを起こし、バランスを崩してしまい、骨を折る大けがをしてしまうこともあるのです。
2. 毛づくろいの際に引っかいてけがをする
うさぎさんは、私たちが顔を洗うようなしぐさで顔の毛づくろいをしたり、後ろ足で耳をかいたりしますが、爪が伸びすぎていると、その際に目や耳を傷つけてしまうおそれがあります。
ちょっとした傷程度であれば問題はないだろうと思われるかもしれません。しかし、その外傷が原因となって炎症を起こしてしまったり、細菌感染症を引き起こしてしまったりすることもあるのです。
3. 爪の中にある血管が伸びる
うさぎさんの爪の中には神経や血管がとおっていますが、爪が伸びていくのを放っておくと、それらもいっしょに伸びていってしまうことがあり、血管が伸びすぎて爪を切れなくなってしまう(切れるところが少なくなってしまう)という事態となってしまうことがあります。
そうなってしまうと今度は、爪と血管を短くするには、出血覚悟で血管ごと爪を切らなければならなくなってしまうことにもなります。こうなってしまった場合は、迷わず動物病院に行ったほうがいいでしょう。
4. ソアホック(かかとがはげる)の原因になる
ソアホックとは、おもにうさぎさんのかかとの毛がはげてしまい、その箇所が炎症を起こしてしまったり、ひどくなると潰瘍ができてしまったりもする皮膚の病気です。
なぜ爪の伸びすぎがソアホックの原因になるのかというと、これは私たちの足を、爪を立てた状態で床に置いてみるとわかりやすいと思います。そのままの状態で爪が伸びてくるとすると、指先が上にあがり、かかとにかかる負担が増えますよね。
それと同じことで、うさぎさんも爪が伸びすぎていると、足のかかとに体重(負担)がかかり、それがソアホックの原因となってしまうのです。
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→ うさぎのソアホック対策で効果があった6つの方法&完全に治るまでの経過
このように、うさぎさんがおうちで安全に、そして健康に暮らしていくためには、爪切りは必須となります。嫌がるうさぎさんを捕まえるのはかわいそうですが、もはややるしかないのです!

そうと決まったらさっそく準備に取りかかってくれ
うさぎの爪自体の切り方
まずはうさぎさんの爪自体の切り方から見ていきましょう。
うさぎさんの爪は、前足(手)は5本、後ろ足は4本で計18本の爪があります。とくに前足は、私たちの親指にあたる爪が内側にある(手で数字の4をしたような状態になっている)ため、見落とさないように注意が必要です。
そしてこちらは、ミニレッキスという種類のウサギである、イブスター店長の後ろ足の爪。
このように、うさぎさんの爪は、白い部分とピンク色の部分で分かれていることが見てとれますが、このピンク色の部分こそが、先ほどお話しした血管がとおっている場所です。
爪を拡大してみるとよりわかりやすいと思います。白とピンクの境界線がはっきりしていますよね。
では、この爪をどこまで切るかという話なのですが、
このように、血管はゆるやかな三角形のようになっているので、血管の先端から2~3ミリほど、もしくはそれ以上離れたところで爪をカットします。
このとき、ギリギリを狙いすぎて血管までいっしょに切ってしまうと、爪の先から出血してしまったり、血がにじんできてしまうので注意してください。
また、直線にカットしただけだと爪の端が少しとがってしまうため、うさぎさんがけがをしないように、そして歩きやすいように、できれば画像のように2~3回に分けてカットしてあげるとベストです。
ただし、これは単純に考えて、うさぎさんの爪切りでの負担が2~3倍になってしまうことにもなるので、2回でも十分ですし、1回でもそこまで問題はないと思います。できればでいいと思いますよ。

爪が黒くて血管がよく見えない場合は、ペンライトなどで照らすとよく見えるぞ
爪切りのベストな方法は2人がかりで
爪自体の切り方がわかったところで、ここからは実際に、うさぎさんの爪を切るやり方について見ていきましょう。ベストなのは、2人がかりでおこなう方法です。
基本的にうさぎさんは、捕まえるとあばれて逃げてしまうと思うので、1人で爪を切るのはとてもむずかしいのですが、1人がうさぎさんを捕まえて固定し、もう1人が爪を切るというように役割分担をすると、いちばんうまくいくと思います。
具体的には、以下のような手順でおこないます。
この中にはうさぎのぬいぐるみが入っているのですが、このように、うさぎさんをタオルでくるんで1人が逃げていかないように固定し、前足だけをタオルから出して、もう1人がうさぎさんの爪を切ります。
後ろ足も同様におこないます。
タオルでくるむ理由は、視界をシャットアウトされるとうさぎさんがおとなしくなるのに加え、物理的に動けなくすることで、逃げてしまわないようにするためです。
うさぎさんが入ったことのない部屋で爪切りをおこなえば、縄張りの外ではうさぎさんはおとなしくなるので、もっとうまくいくと思いますよ。
かかりつけの動物病院で爪切りをたのむときも、このスタイルでイブスター店長は爪を切ってもらっているので、この方法はまちがいないといえるでしょう。
……が、ここで問題となるのが、以下のような状況です。

部屋じゅうはウサギの縄張りと化し、飼い主は1人しかいない。この状況で爪が切れるか?
そう、この場合、うさぎさんの爪切りは至難のわざと化します。
タオルでくるんでいても、一瞬のすきをついて逃げていきますし、そもそも片方の手でうさぎさんの足を持ち、もう片方の手で爪切りを持っているので、1人ではうさぎさんの体を満足に固定することができないのです。
抱きかかえて固定する方法もいろいろとありますが、まぁ嫌がるうさぎさんだとなかなかうまくはいきません。
しかし、爪切りをあきらめるのはまだ早い。
むしろここからが今回の本題。誰でも簡単に、そして1人でもうさぎさんの爪を切る方法が残されているのです!
うさぎの爪を切るために準備するもの
部屋じゅうがうさぎさんの縄張りでも、爪を切る協力者がいなくても、うさぎさんの爪を切ることは可能です。
そんな、あばれるうさぎさんをおとなしくさせ、簡単に爪を切るために準備するものがこちら!
それぞれの用途を解説していきます。
爪切り
まずはこれがないとなにも始まりません。ふつうの爪切りやハサミなどではあぶないので、きちんとした動物用の爪切りを用意しましょう。
私は、ミニアニマンの「ウサギのカーブ型つめきり」を使用しています。うさぎさんの爪を切るにはピッタリのサイズで使いやすいですよ。
止血剤
爪切り中に、うさぎさんの血管まで切ってしまった場合はもちろん出血してしまうため、血を止めるための止血剤はあったほうがいいと思います。
動物病院で爪を切ってもらっていたときや、私も何度か深く切りすぎてしまい、爪から出血させてしまったことがあるのですが、止血剤があればほんとうにすぐに血は止まりますし、その日のうちに(というかすぐに)爪もよくなります。
これは一家に一個置いておくに越したことはありません。止血剤は文永堂の「クイックストップ」を使用しています。イブスター店長のかかりつけの動物病院でも、同じものを使用していますよ。
タオル
タオルは先ほどと同様に、うさぎさんの体を固定するためと、視界をシャットアウトするため、そしてうさぎさんが爪切り中におしっこをしてしまうこともあるので、そういったことのために使用します。
ふつうのバスタオルでまったく問題ないので、使わなくなったものなどを1枚、うさぎさん用に準備しておくといいですよ。
洗濯ネット
うさぎさんの爪切りで最大のカギを握る用品がこれ、洗濯ネットです。
なんだかかわいそうにも思えますが、うさぎさんを洗濯ネットの中に入れることでうさぎさんが脱出不可能になり、それによって逃げることをあきらめるだけでなく、毛でおおわれた爪1本1本をネットの網目から出せることもあって、爪切りが非常にはかどります。
網目は少し粗目のものを、100均などで買って準備しておくといいでしょう。さわった感じがかたければ、何度か洗濯の際に入れておくなどして、やわらかくしておくといいと思いますよ。
それでは、準備がととのったところで、いよいよ実践開始!
これで暴れない!うさぎの爪切りのやり方
まずは、うさぎさんを洗濯ネットの中に入れ、ファスナーを完全に閉めます。
このとき、ファスナーを開けたままにしていると、爪切り中にうさぎさんが脱出してしまうことがあるので、うさぎさんが脱兎になってしまう前に、しっかりとチャックをしておきましょう。
それができたら、洗濯ネットの上からさらにタオルでうさぎさんをくるみ、うしろからやさしく、うさぎさんが動かないように押さえます。
ここまでくれば準備はOK!
最初は少しあばれるかもしれませんが、脱出できないことをさとると、うさぎさんもあきらめておとなしくなると思うので、うさぎさんが落ち着くのを待ってから爪切りに移行しましょう。
具体的な手順としては、床の上からでもいいのですが、膝の上に乗っけたほうがやりやすいと思うので、タオルでくるんだままうさぎさんを膝の上に乗せ、爪が細くて切りやすい前足から爪切りを開始します。
前足だけタオルから出すと、このように洗濯ネットからうさぎさんの爪だけが出てくるので、端から1本ずつ爪を切っていきます。
またこのように、洗濯ネットの網目から2本の爪が出ることもありますが、このまま切るとあぶないので、こうなった場合は、1つの網目から1本の爪が出るようにネットを動かしてあげます。
私たちの親指にあたる爪を切るときは、下からのぞき込むような体勢になりますが、これもがんばって切っていきましょう!
ちなみに、このとき(親指にあたる爪を切るとき)のコツとしては、ネットを浮かせて上に引っ張るような感じにすると、切りやすくなると思いますよ。
両方の前足の爪を切り終えたら、次は後ろ足に移行します。
うさぎさんは座ると、後ろ足は体の内側に格納されたような状態となるため、後ろ足の爪を切る場合も、膝の上に乗っけたほうがやりやすいと思います。タオルから足だけをはみ出させるようにして、両方の後ろ足の爪を切っていきましょう。
後ろ足の場合は4本だけで、すべてまっすぐ生えているので(親指にあたる部分がないので)、前足よりも簡単かもしれません。ただ、前足よりも爪・血管ともに厚くなっているように思うので、血管を傷つけないように注意が必要です。
そして、合計18本の爪を切り終えたら、うさぎさんを洗濯ネットの呪縛から解放し、がんばったことをほめてあげ、おやつなどを献上してあげてください。

爪切りの最中も声をかけてもらえると安心するぞ
さて、こちらは、爪切り終了後のイブスター店長の前足です。毛でかくれていますが、かなり短くなりました。
こちらは後ろ足。負担軽減のために形をととのえられなかったところもありましたが、それくらいは大丈夫だと思います。
これは、捕獲されたことでご立腹のイブスター店長。
その眼差しから見るに、おやつの献上が足りないとでもいいたそうな、イブスター店長でありました……。
爪切りの頻度や目安と注意点
最後に、うさぎさんの爪切りの頻度や、爪切りをおこなう際の注意点などについても確認しておきたいと思います。
爪切りの頻度は、だいたい1~2か月に1回がいいとされていますが、イブスター店長の場合、動物病院でギリギリまで切ってもらっていたときは、3か月弱くらいは大丈夫でした。
ただ、これはほんとうにギリギリまで切ってもらった場合の話なので、少し余裕をもたせて切ってあげる場合は、うさぎさんによる差もあるとは思いますが、目安としてはやはり2か月前後に1回くらいがちょうどいいような気がします。
爪切りの際の注意点については、これはおもに以下の3つです。
- うさぎさんを強く押さえすぎないこと
- 爪切りは床の上でおこなうようにすること
- 最初は1~2本程度から始めること
うさぎさんは骨が軽くてうすいので、強く押さえつけたことで骨が折れてしまったというのはけっこうよくある話です。それはあまりにもかわいそうなので、押さえるときは力加減に注意してあげましょう。
また、おとなしいうさぎさんであれば椅子の上などでも大丈夫だと思いますが、台の上などの高いところで爪切りをしていると、うさぎさんが突然動きだして落っこちてしまい、骨折してしまうということもありえます。爪切りは落っこちる心配がない床の上のほうが安全ですよ。(かかりつけの動物病院も床の上でのスタイルです)
そして、初めのうちは最初から全部の爪を切ろうとはせずに、1~2本程度から始めるのがいいと思います。
慣れないうちから長時間の爪切りでうさぎさんにストレスがかかってしまうと、息が荒くなってきたり、息が上がったままになってしまったり、さらにはよだれをたらし始めたりと、危険な状態となってしまうこともあります。
こちらの爪を切るスピードが上がっていけば、ほとんど負担をかけずにすむようにもなっていくので、少しずつ慣らしていくのがいいと思いますよ。
動物病院などで爪切りを頼む際の料金
どうしても爪切りがむずかしくてできない場合や、ひとまず爪切りに慣れてもらいたい場合は、動物病院やペットショップで爪切りをしてもらうという方法もあります。
私の感覚では、外で爪切りをたのむ際の金額は、動物病院が900円前後、ペットショップなどが500円前後といったところですが、たのむのであれば、動物病院へ行ったほうがいいと思います。
病院にもよるとは思いますが、爪切りだけの料金で簡単な健康診断をしてくれたり、体重をはかってくれたり、なにかおかしいなと思ったことを爪切りの際に聞いてみることで病気が見つかったりと(診察となると別料金)、値段はそう変わらないのにメリットが多いのです。
そのうえ、爪切りだけでもここの先生は信用できるなとか、なにかあったときはここの病院に行こうとか、かかりつけの病院が見つかることもあると思うので、外で爪切りをたのむ場合は動物病院がおすすめですよ。
今回のまとめ
・洗濯ネットの中に入れるとうさぎはおとなしくなる
・むずかしければまずは動物病院へ行こう
私も以前までは爪切りは動物病院にたのんでいたのですが、やはり移動が大変ですし、爪切り代よりも移動のタクシー代のほうが高いのもいかがなものかと思い、現在はほとんど自分で爪切りをおこなっています。
初めのうちは切る場所の狙いを定めるのがむずかしく、時間がかかってしまうことで、うさぎさんも途中からあばれてしまうこともあるとは思うのですが、慣れてくるとすべての爪を切り終えるのに10分とかからなくなったりもするので、うさぎさんがあばれ始める前に、爪切りを終わらせることができるようになると思います。
狙いを定める場所は、爪切りを繰り返しおこなっているなかでつかめると思うので、ぜひトライしてみてください。うさぎさんの活動が活発になる夜よりも、基本的には寝ている時間である日中(とくに昼すぎ)におこなうと、さらにうまくいくと思いますよ。
皆さんの健闘を祈ります。
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