そろそろ解き明かすことにしましょう。うさぎにまつわる噂の真相と、そういわれるようになった由来を……!
うさぎさんはいっしょに遊んだり、飼い主さんになでられたりするのが大好きになる感情豊かな生きものですが、やはり、どうしても仕事などでかまってあげられないときは出てくるもので、そんなときに気になるのが以下のうわさ。
「うさぎは寂しいと(飼い主さんがかまってくれないと)しんじゃう」
これは、うさぎさんを飼っている方でも、そうでない方でも、もしかするといちどは聞いたことがあるフレーズかもしれません。うさぎさんを飼われている方のなかには「寂しいと死んじゃうんですか?」という質問を「またか!」と思うくらいされている、という方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、現在うさぎさんを飼われているけれど、そんなことは初耳だという方や、これからうさぎさんを飼ってみたいと考えている方にむけて、今回は、うさぎさんにまつわる数々のうわさと気になるその真相、そしてその由来などについてを、じっさいにウサギを飼っている私がお話ししていきたいと思います。
はたして、このうわさはデマなのか、それとも……!?
うさぎがかまってほしいときのサイン
うさぎさんはイヌやネコのように鳴いたりすることは基本的にはないので(鼻を鳴らすことはある)、なにを考えているのかよくわからないと思われてしまいがちですが、じつはとても感情豊かな生きもの。
とくに今回の話でいえば、うさぎさんはかまってほしいときは、鼻で飼い主さんをツンツンつついたり、スタンピング(俗にいう「足ダンまたは床ダン」)といって、怒っているときなどにする、床を足で叩く行為で飼い主さんの気を引こうとしたりします。
うさぎさんによっては、ケージをかじることで(噛むことで)、外に出してほしいと強くアピールすることもあるでしょう。
さて、こういったサインをうさぎさんが出しているときは、飼い主さんが遊んであげるのがいちばんいいのですが、そうはいっても、仕事などで毎日家を空けなければならなかったりもするわけですから、私たちはつねに「かまってちゃんだなあ」とうさぎさんにかまってあげられるわけではありません。
そこで例のうわさです。
仕事などで長時間にわたって家を空けることが多いとき、旅行や出張でうさぎさんをペットホテル等にあずけなければならないときなど、飼い主さんにかまってもらえない時間が長いと、うさぎさんは寂しくて死んでしまう、なんてことは、はたしてあるうるのでしょうか?
うさぎの代表的な感情表現はこちら
→【感情表現】うさぎのブーブー、キューなどの鳴き声や仕草が意味する気持ち
うさぎは寂しいと死ぬの真相と噂の由来
それでは、「うさぎは寂しいとしんじゃう」の真相と、そういわれるようになった由来について、ここからは見ていきましょう。
これの真相は、ナゾの自然死をとげたウサギが大量発生していた時期があった……とかではなく、1993年に大ヒットを記録した、フジテレビのトレンディドラマ『ひとつ屋根の下』にかくされています。
なかでも注目すべきは、12話の最終回(以下劇中名)。
鑑別所上がりの弟和也(キャスト:いしだ壱成)は、もともとつるんでいた不良グループの陰謀によってまじめに働いていた仕事をクビになってしまい、行くあてもなくふたたび不良グループのもとへ。
しかし、弟の事情を知った姉小雪(キャスト:酒井法子)は、和也を不良グループから取り返すため、包丁を片手に、不良たちのたまり場となっていたガレージへと単身乗り込みました。
「和也を返して!」
包丁を握りしめ、不良グループと対峙する姉小雪。できない、いまさら抜けられないと差し出された姉の手を振り払う和也。
それに対して、小雪はこう言い放ったのです……!
うさぎって寂しいとしんじゃうんだから!
…………!??
不良グループのリーダーに果敢に立ち向かっていく姉を見た和也は目を覚まし、姉をさきに逃がしてガレージのシャッターを閉める。そして彼は、不良グループのリーダーと対峙したのです……。
(ただ言いたかっただけのようにも思えるが……)
つまり、いずれにせよ、「うさぎは寂しいと死ぬ」といううわさの真相は、じつはドラマの演出、台詞のひとつであって、それがフジテレビ歴代最高視聴率を記録したドラマの、それもクライマックスに近いシーンで発せられた台詞であったことからも、多くの視聴者の記憶に残り、そして語り継がれ、現在もそのインパクトが生きつづけている、といったところでしょうか。
よって、寂しいと死ぬというのは、なんの根拠もない嘘……ということになるのですが、ただ、あながち嘘とはいいきれない部分もあるのです。
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寂しさが間接的にうさぎの命を脅かすことも
たとえばこれは、私が飼っているミニレッキスという種類のイブスター店長の場合。
彼はふだん私が自宅にいる時間も帰宅していないと、餌をあまり食べていなかったりすることがあります。小屋から出したままうっかり私が眠ってしまうなど、近くにいるくせに自分を放置して遊んでくれないとなると、スタンピング(足ダン)で不満をあらわにしたりすることもあります。
このような飼い主さんがいないといった「不安」、遊んでもらえないといった「不満」、そのほかにもさまざまな事情からかまってもらえない場合は、「悲しみ」をうさぎさんはいだくと思うのですが、それらはとどのつまり、「寂しい」という感情に結びつくと思うのです。
そして、その寂しさが大きなストレスとなってしまい、うさぎさんが食欲不振などの体調不良におちいってしまった場合、餌を食べないまま長時間にわたって放っておかれでもすれば、
- 胃腸の活動の停止
- 腸内環境の乱れ
- お腹の中での有害なガスの発生
など、そのままうさぎさんは命を落としてしまう危険性も出てきます。なぜなら、草食動物であるうさぎさんは、絶食にとても弱い生きものだから(うさぎは絶食が24時間つづくと非常に危険な状態になるといわれています)。
したがって、うさぎさんは寂しいから死んでしまうということはないと思うのですが、寂しさというストレスが命をおびやかす原因となることはあるため、間接的には、寂しさと死がかかわっているともいえるのです!
人間がストレスで体をこわすのと一緒だ
また、うさぎさんの歴史は長く、飼いうさぎが日本に来たのは戦国時代だといわれていますが、今と昔では飼育環境や認識にも大きな差があったのはたしかなこと。
とくに人が満足に食べる食糧もないような時代であれば、たとえば戦かなにかでうさぎさんを飼っていた農民などの人が、じゅうぶんな餌もなしに数日間家を留守にすることもあったかもしれません。
餌がなくなったうさぎさんは、絶食状態がつづいたことで、飼い主が戦から帰ってくると命を落としてしまっていた、なんてこともあったかもしれないのです。
そして、彼らは、こんなことを思い、こんなことを書き残したかもしれません。
腹が減ったよのう、寂しかったよのう……。ならば記そう。「飼イウサギ、寂シサデ、死ス」と……
それはだれにもわかりませんし、そんな文献があるなんて話は聞いたことがありませんが、しかし、可能性はゼロではないともいえるのです。
というわけで、ドラマ以前からそういった話が出ていた可能性もなきにしもあらずですが、たしかめられる現状で考えると、ドラマの影響で広まったうわさというのがもっとも有力であり、デマといえばデマですが、あながち嘘でもないといったところでしょう!
うさぎに水を与えてはいけない(水を飲まない)説
せっかくなので、うさぎさんにまつわるうわさでよく聞く代表的なものを、ついでにいくつか解き明かしておくことにしましょう。
皆さんは、こんな話を聞いたことはないでしょうか?
「うさぎは水を飲まない」「うさぎに水を(与えては)飲ませてはいけない」「うさぎは水を飲むと死んでしまう……」
また死ぬのか……
現在では考えられないことで、どうすればそんな考えにたどりつけるのか見当もつかないとは思うのですが、じっさいにこう信じられていた時代がありました。
さて、このナゾを解き明かすカギとなるものはあるのか? というとあります。それが、戦前の昭和9年、1934年に発刊された『こんな有利な兎の飼ひ方と売り方』という、うさぎの飼育書。
この飼育書のなかには、なんと「水を与えれば死んでしまうなどというのは非常識もはなはだしい」と書かれているそうで、このことから考えるに、すくなくとも1937年以前の時代から、うさぎに水を与えると死んでしまうというのは「常識」として考えられていたことがうかがえるのです。
それでは、なぜそんなわけのわからない話がまかりとおっていたのでしょうか? その答えは、当時のうさぎさんに与える食事の内容と飼育環境にありました。
現在では乾燥牧草や固形ペレットなど、うさぎさんの健康に配慮された便利な餌はたくさんありますが、ひと昔前にはそんな便利なものがあったはずもなく、うさぎさんの食事は野草や余った野菜など、水分の多いものが主食として与えられていた(野菜などから必要な水分をとることができていた)そうです。
飼育環境は、外に木製の飼育小屋、床に干し草、水は皿に入れて置いておく、というのが一般的。
ところが、水分量の多い主食に加え、さらに水を飲むことが原因だったのか、あるいは皿をひっくり返してこぼれた水が、夏場の高温多湿のなかで雑菌の繁殖をまねいたのか、はたまた冬場の冷え込みに加え、こぼれた水がうさぎさんの体温を奪ったのか。
その飼育環境では、うさぎさんは下痢をしてしまったり、皮膚病になってしまったりと、弱っていくことも多く、そのまま死んでしまうということもめずらしくはなかったようなのです。
そして、そのような理由から当時の飼育者のあいだでは、うさぎに水を与えると死んでしまうという話が広がっていき、ついには常識として定着してしまった……。それが、この説の真相といったところでしょうか(じっさいにその説が有力視されている)。
つまり、うさぎは水を飲まない説に関しては、飼育環境のちがいでそのほうがよかったという時代があり、そのほうが長生きできる確率が高かった(水を与えると死亡率が上がった)からだと思われます。
しかしながら、現代のうさぎさんの餌は乾燥したものがおもなので、水をあげないと、飲み込んだ毛玉などがお腹の中で詰まったりする「胃腸うっ滞(毛球症)」という病気になる原因にもなってしまいます。
そう、現代では水を与えないとうさぎさんは死んでしまうのです! よって、しっかりと水はあげるようにしましょう。
ミニウサギは結構デカいという噂(何が「ミニ」なのか?)
見かける機会はいちばん多いかもしれないミニウサギ。
このミニウサギは、さまざまな品種がまざったうさぎさんの総称のことを指し(いわゆるミックスまたは雑種)、体格、毛の長さ、色などに大きな個体差がある、個性派ウサギのことをいいます。
ところがこのミニウサギ、小型種が増えた現在では、もはや「ミニ」とはいえない大きさになることもあり、体重は1.5~3.0kgと、けっこう大きくなることも多いのです。
ちなみに、短毛種のミニレッキスは、もっと大きいレッキスといううさぎさんに対しての「ミニ」なのですが、それではミニウサギの「ミニ」は、いったいなにに対しての「ミニ」なのか? というのが最後のナゾ。
では、このナゾを解き明かすのはなにかというと……なんと、小学校にいたウサギ!
あの真っ白なやつか?
そう、小学校にいた白い毛に赤い目のウサギ。
彼らは日本白色種(ジャパニーズホワイト)という品種のうさぎさんで、起源については諸説あるのですが、アメリカのニュージーランドホワイトという品種を改良、もしくは交配させて生まれた品種で、体重は3~6kgほどにもなる大型の品種。
また、秋田県で改良された秋田改良種という、体重は10kgほどにもなるさらに大きな大型種、通称「ジャンボうさぎ」もこの日本白色種の仲間で、こちらは毎年秋になると開催される「全国ジャンボうさぎフェスティバル」という、品評会もおこなわれるイベントへの参加でも知られています。
さて、話をもどしてミニウサギ。
皆さんもすでにお気づきのことと思いますが、ミニウサギの「ミニ」とは、そう、この日本白色種に対しての「ミニ」ではないかといわれているのです!
日本でもっとも多く飼育されている日本白色種(ジャパニーズホワイト)よりも小さいということでミニウサギ。もともと大きなうさぎさんに対しての「ミニ」なのであれば、けっこう大きくなるのも納得できるというもの。
つまり、ミニウサギは大きくなる! なぜなら、ジャパニーズホワイトが、それ以上に大きいからです!
今回のまとめ
・水を飲ませると死ぬは飼育環境が現在と違ったから
・ミニウサギはけっこう大きくなることも多い
うさぎは寂しいと死んでしまう、うさぎに水を飲ませてはいけない、ミニウサギはなぜ大きいのか(何に対してのミニなのか)。
うさぎさんにまつわるうわさの真相、そしてその由来のいくつかは、今回で究明することができたと思います。
ただ、じつをいうと、こういったうわさはまだまだこんなものだけではなく、ほかにもあります。たとえば、うさぎといえばニンジンが大好き、みたいなイメージがありますが、いうほどニンジンが好きなわけではない、などなど……。
そういった、今回お話しできたもの以外のうわさについては、機会があれば、第2弾の真相究明でお話しできればと思います。ご期待ください。
うさぎの絶食と餌を食べない時の対策
→うさぎがご飯を食べない「食欲不振」になった時のための6つの確認&改善方法
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